
威光暗示(prestige suggestion )
社会的に高い地位や職業に与えられている価値付けを威光という。
威光のある個人や集団が意見や判断を示すと、受け取る側は無批判にそれを受け入れるという現象が生ずる。
これを威光暗示というが、有名人や専門家がしばしば商品の宣伝に使われるのは、この威光暗示の効果を狙ったものである。(『心理学辞典』より)
「暗示」というと、その言葉の響きからなんとなく「暗に誘導する」ような、なんとなく背筋に寒いものが走るような、そういう印象を持ってしまう方も多いでしょう。
このような「暗示」への印象、見解を持っているとすれば、ではナゼそのような印象や見解を持っているのか…それを明確に説明できる人というのは、たぶんいませんよね?
誤解、偏見、歪曲した見方…これらは、確かに「暗示」による効果の一つかもしれません。
実際、ボクたちの日常は「暗示」にまみれている…ともいえます。
TV、CM、雑誌、電車の吊り広告などは上の威光暗示のわかりやすい例ですが、それによって得られる経済的な効果は莫大なものがあるからこそ、こうした手法を使うのです。
たとえば、化粧品などの新商品のCMで、美しい容貌の、その商品のイメージに合ったキャラクターを起用しておおいに幻想を喚起させるのは、そのまま「暗示」になっています。
つまり、「暗示」というのは、個人の内面にもともとある欲求や信念に火を点ける役目をするものを意味します。
「〇〇は〇〇だ」と言ったり、時折「これで怖れるものは無くなる」のような直接的なメッセージには、暗示的な効果はありません。
そうでなく、〝なんとなく〟心の内側にひっかかるような、奥底から湧いてくるようなものでなければ、暗示にはならないのです。
威光暗示の威力は、やはりまだまだTVがもっとも発揮される媒体ではないでしょうか?
ニュースで「今年は花粉が過去最高」と言えば、毎年であっても花粉グッズが飛ぶように売れていますし、「インフルは流行る」といえば、こぞって予防接種に行くなど、その影響力は計り知れないものがあります。
「『花粉、インフル…これ直接言ってるから暗示じゃないのでは…」と思うかもしれませんが、ニュースやワイドショーでは「お気をつけください」とはいいますが、グッズを揃えろとは言いませんね。
不安や恐怖に火を点けさえすれば、あとは勝手に自分たちで行動することはわかっていての報道ですから…まあ、見事な威光暗示かなと。
ある特定の病名を流行らせる際も、こういう手法はよく使われます。
花粉系統もそうかと思いますが、最近では「逆流性…」といわれたという方がたまにおられます。
でもそれって、ちょっと前でいう「胸焼け」ですよね…と言うと、不機嫌になられてしまったりします。
自分のよくわからない体調不良で不安なところに、「病名」が付く。
これというのは、医師という権威に、自分の持ち物に特別なラベルを与えてもらった…というような心理効果をもたらすことも、ままあります。
白衣への威光暗示は、ある世代から上の方々には特に強いように感じます。
こうした威光暗示効果が発揮されている場合、セッションさせていただいて、たとえばはっきりと体調や精神状態が好転しても、暗示効果によって、自分で「具合の悪い自分」に引き戻すことも心は無自覚に行います。
こうした場合は、その無自覚な信念を自覚できるようになることが、最初のステップになります。
そのステップが成されたのであれば、病名に関わらずスムーズな好転が引き起こされる可能性は飛躍的に高くなる…のですけれど。