軍用地とは「沖縄などにある在日米軍の基地に使用されている土地」のことをいいます。一般的な不動産と同じように投資ができ、賃料(軍用地料)収入を得たり、売却して値上がり益を得たりすることも可能です。今回は銀行融資を活用し、複数の軍用地を購入して利益をあげた、那覇市在住の資産家の事例を紹介します。※本連載は、元防衛省職員で軍用地コンサルタントの仲里桂一氏の著書『専門家が優しく教える![軍用地投資]の教科書』(扶桑社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「銀行の融資」で軍用地を購入して利益をあげた事例
筆者の友人でもあり、軍用地投資家でもある那覇市在住の金城氏に軍用地投資について聞いた話を紹介します。彼は軍用地投資を始めたことがきっかけで、今やアパート、マンスリーマンション、旅館業を生業とした年収数千万円の資産家、富裕層です。
金城氏が軍用地投資を始めたのは2012年。当時、彼は親から引き継いだ土地でアパート経営を行っていました。そんなとき、不動産業者から軍用地は儲かるという情報を聞きつけ、自分でも始めてみようと考えたことがきっかけだったそうです。
「3筆まとめて地料約460万円の嘉手納飛行場の軍用地を、銀行から全額諸費用込みで1億6千万円ほど借り入れて購入しました。なぜなら、その不動産業者から2013年には、軍用地料が例年以上の約3.5%ほど上がるという情報を聞いたからです」(金城氏)
米軍への基地提供は、民法第604条で契約期間を最長20年と定められています。地主と国の賃貸借契約は、本土復帰時の1972年5月15日に最初の契約が取り交わされています。その後、2度目の原契約締結が1992年、さらに2012年に3度目の原契約締結が行われました。
地主の大部分が加入している土地連にとって、2012年5月は、20年に一度しかない契約更新期にあたり、軍用地料見直しのチャンスでした。そのチャンスを逃すまいと、土地連は国に対し、軍用地料の値上げを求める要請書を提出しました。
基地がなければ地元経済の発展などで本来得られたはずの正当な額として、前年度の約2倍にあたる年額1782億円を要求するという主張です。その結果、国から2013年の軍用地料の総額は対前年度比3.5%増の提示を引き出せたのです。
「2012年夏頃に6084万円で購入した嘉手納飛行場の1年間の地料は、169万円でした。これが1年半後に売却を検討したところ、地料は169万5000円に値上がりしていました。そのため7119万円で売却することができました。つまり1035万円の売却益が出たのです」(同氏)
なぜ値上がりしたのかといえば、軍用地料が上昇したことで軍用地の価値が上がり、倍率も上がったためです。購入時36倍の倍率が、売却時には42倍になっていたそうです。ちなみに現在の相場では60倍にもなっています。
「軍用地は現金で購入しても小さな利益にしかなりません。ですが、シミュレーションをしてみると、融資で億単位の軍用地を購入すると大きな利益を生み出すことが分かりました。売却した場合の含み益です。
金融機関に相談したところ、担保価値が非常に高く、新築アパート投資に対する融資よりも軍用地に対してのローンのほうが積極的でした。
こうして最初の軍用地の売却益を元手にして、嘉手納飛行場と嘉手納弾薬庫地区に絞って購入を加速させました。売りが出たら買うことを繰り返し、約7年かけてコツコツ増やして、購入総額は4億8千万円、地料は計1200万円。担保価値は6億円以上になりました。
今では、その担保価値を利用した当座貸越型軍用地主ローンの借り入れ枠を使ってマンスリーマンションや旅館業にも進出しています」(同氏)
沖縄の2018年の観光客数は984万2400人で、過去最高。2017年にはすでにハワイを上回っており、県内や一部の離島など観光客に人気のある市町村の土地はバブル期にあって、争奪戦です。
彼は、土地を他人より先に押さえるため、借り入れ枠から土地代の現金を引き出して速攻で購入。その後に旅館業の事業計画を銀行に提出し、建築物と土地を含めた金額の融資を受け、融資後、土地代の融資分を軍用地ローンの借り入れ枠に戻すのだそう。その繰り返しで、マンスリーマンションや旅館業へと経営を拡大しているのです。
「軍用地投資は安全な投資ですね。毎年地料が上がり、金融機関にも信用度が高く、考え方によっては担保としても活用できる。単なる不動産投資に限らず、旅館業のようなほかの投資にも活用できることが最大のメリットではないかと思います」(同氏)
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