「欲深い野球の神さま」
準決勝の延長・引き分け・再試合を報じる昨日の琉球新報の見出しの一つ。
記事は≪・・・両投手の負けられぬという投手の業をにじませる力投。・・・とても、もうひとふん張りを期待するなどとは言えない。・・・≫と続く。
壮絶な投手戦を「田中 気迫の165球」、「斎藤 冷静に178球」という別の見出しで両エースの意地の激突をつたえた。
そして昨日の投手斎藤対打者田中の対決という劇的な幕切れ。
欲深い野球の神様はさらに欲深くドラマチックなフィナーレまでも準備したのだ。
とりあえず早稲田実業の優勝を祝し駒大苫小牧の健闘を称えたい。
あらゆるメディアが斎藤、田中両投手を中心に両校の歴史的熱戦を伝えている。
その感動を伝える事は当日記の力及ばない事なのでプロの記事に委ねるが、・・・ でも、何か書いておきたい、そんな気にさせる試合だった。
今大会斎藤投手をはじめて見たのは大阪桐蔭との試合。
桐蔭中田を三振で討ち取った瞬間、クールと言われた斎藤の表情がほころんだ。
そしてその冷静な表情の裏に秘めた炎のような闘志を垣間見た気がした。
今朝のワイドショーも当然のように斎藤投手の話題で持ちッきり。
だが田中投手の気迫に満ちた投球、いや打撃も見事だった。
スポーツ新聞の一面を紹介する中、数ある名ショットの中でオジサンを思わず涙ぐませる写真があった。
「笑顔、笑顔」が売り物の最近のスポーツ界。
そんな中で、試合中はほとんど笑顔を見せなかった斎藤、田中両投手の「笑顔のツーショット写真」(ニッカンスポーツ)には泣けた。
ブルーのリボンの準優勝メダルを首にかけて、珍しく顔を崩して笑う田中投手。
その左側で赤のリボンの優勝メダルを首にした斎藤投手がこれも珍しく笑顔で田中の方を向いて何か語りかけている(ようにみえる)。
お互いの力量を認め合いながら死闘を尽した三連戦。(延長戦を含む)
二人の爽やかな笑顔にオジサンは不覚にも涙を堪えるのに苦労した。
今大会のベストショットに「斎藤、田中両投手の笑顔のツーショット」を推したい。
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早実エース斎藤 クールガイの裏に隠された2つのリベンジ
球史に残る死闘再び-。
第88回全国高校野球選手権大会は21日、夏3連覇がかかる駒大苫小牧(南北海道)と夏初制覇を狙う早実(西東京)が、昭和44年の松山商(愛媛)-三沢(青森)以来、37年ぶり2度目の決勝戦引き分け再試合で激突。今大会最大の注目株となったのが、早実の右腕エース、斎藤佑樹だ。端正なマスクでファンを魅了し、連投を重ねてきた鉄腕。斎藤の「気迫」を支えるのが2つのリベンジだった。 大会規定により延長15回、1-1で引き分けた20日の決勝戦。延長15回表2死走者なし、マウンド上の斎藤が、駒大苫小牧の4番で主将の本間篤に投じた直球は147キロ。球場全体がどよめいた。最後は133キロのフォークで三振に仕留めた。 この勝負、斎藤にとっては、昨秋の明治神宮野球大会準決勝のリベンジでもあった。同試合で初回に2点を先制した早実は、斎藤が5回まで無失点に抑えたが6回に同点とされ、続く7回、本間に二塁打を浴び逆転を許すなど、3-5で敗れた。 斎藤は試合後、本間と携帯のメールアドレスを交換し、互いに夏の甲子園での再会を誓い、地区予選中から甲子園出場決定までエールを送り続けてきた。甲子園組み合わせ決定後は、「決勝戦での対戦を心待ちにしていた」という。 しかも、延長15回の最後のバッターが本間。燃えない理由はない。クールな斎藤をして、打ち取ったあと「ヨッシャ」と叫んだのは、そのときのリベンジともいうべき会心の三振に打ち取ったからでもある。 そして、斎藤にはもうひとつ、過去の自分へのリベンジがあった。今春センバツ2回戦の関西戦、延長15回の末に引き分け再試合。翌日勝利をものにして次の日、3連投となった準々決勝の横浜戦は3回6失点と打ち込まれて敗戦。そのときの自分に勝つためには、「優勝まで全試合、ひとりで投げ抜く」(斎藤)しかなかった。 まさか、決勝戦再試合で4連投は想像しなかっただろう。試合後、「まいったなあ」と思わず口にしてみせた。 マウンド上ではポーカーフェースを通し、相手に表情を読ませない。ポケットにきれいに折りたたんだ青いハンドタオルで汗をふきとる。タオルは母、しづ子さん(46)に買ってもらったもので、本人は「ゲン担ぎ」という。インターネット上では「ハンカチ王子」と名付けられた。マスコミにもその姿が注目されたせいか、決勝戦ではわずか数回使っただけだった。 そのスタイルと甘いマスクから「クールな剛腕」とも呼ばれる。「意識して始めた。男なんで気持ちでは絶対に負けたくない」。白川捕手にいわせれば、「戦略」だという。 20日の決勝戦を観戦した父、寿孝さん(57)は、「昔はあんなクールではなかった。早実に入ってから、それも2年秋にエースになってから顔つきが変わった」と明かす。クラスメートが「授業中もまったく表情を表に出さず、疲れた顔も居眠りするところも見たことがない」と話すほど、斎藤は「気持ち」を内に秘める。 それもこれも、昭和32年春のセンバツでエースとして優勝した偉大なOB、ソフトバンクの王貞治監督と優勝して肩を並べるため、同55年準優勝したエース荒木大輔投手(現西武投手コーチ)を超えるため。高校野球の歴史を斎藤が塗り替える。 <ZAKZAK>