五話

新吉は甚蔵と兄弟の杯をかわし居候になる。甚蔵がお久殺しの草刈鎌を拾って新吉に詰め寄りとうとう白状する。ここから甚蔵の悪知恵・悪だくみ・悪党・ならず者の描写が見事な展開をしていく。三蔵（お久の伯父で谷中七面前の下総屋惣兵衛の質屋で番頭までやって、三蔵の父親三右衛門は深見新左衛門から金をもらって宗悦の死骸を捨て羽生村で大百姓になっていたから三蔵は羽生村に帰って質屋で成功）は姪のお久を法蔵寺に葬る。新吉は図らずもお久を手にかけて、これも豊志賀の祟りと墓所に参りお久の墓を捜していると三蔵の妹お累と出会うお互い一目惚れ。一方甚蔵は質屋三蔵を訪ね丸三（三蔵の物）の刻印の草刈鎌を出して２０両貸せと迫り（見事な悪知恵駆け引き）三蔵に呑み込ませる。ある日お累は囲炉裏の自在のやかんの湯で顔を火傷、この顔では新吉に逢うこともできないと落胆気病みになります。心配する三蔵は女中のせなからお累のことを聞きだし新吉が居候の甚蔵の家に口利き作右衛門（媒妁人役）をやり（甚蔵はここでも新吉に無い借金をつくり見事に金を引っ張る）婚礼。そして床入りのお累の顔をみた新吉「この間まで美しい娘が、急に私と縁組をする時になり、こんな顔形になるというのも、やっぱり豊志賀が祟り性を引いて、あくまで俺を怨むことか、アア飛んだ処へ縁付いて来た。」悪縁とはいいながら、たった一晩でお累が身重になります。新吉が改心して平穏に暮らしているある日早飛脚で下谷大門町の伯父勘蔵が死にそうだからと新吉は死水を取りに出立します。今際の際に勘蔵は新吉の生い立ちを話して聞かせ（新吉２歳の時深見家は改易、勘蔵に育てられたので本当の伯父と思っている）迷子札を渡し息を引き取る。野辺送りをしてどしゃ降りのなか駕籠を雇い帰路につきますトロトロ眠気ざしまして駕籠屋は道に迷い小塚原。其処で新吉は兄新五郎に出会う。兄は谷中七面前の下総屋惣兵衛の質屋でお久を殺し縄にかかったこと三蔵が訴追したことを話し仇の処に帰るなと迫り、言うことを聞かぬ新吉の喉笛をブスリ、夢から覚めた新吉、駕籠から出てみると二つ足の捨札に獄門の次第「無宿新五郎」。翌日羽生村に帰るとお累が男の子を産み落とすと顔が新五郎に生写し。その後新吉は気がふさぐ日々ある日法蔵寺の和尚から無縁の墓掃除は功徳があるからと墓掃除の日々。其処で出会ったお賤（羽生村の名主惣右衛門の妾）。