<美馬郡・つるぎ町>
剣山への最短ルートである
つるぎ町・貞光という地区に着いたのは、
まだあたりが暗闇に包まれる夜明け前でした。
昨日の夕方、四国に入ってから、
ほぼ半日しか経っていないというのに、
まったく土地勘のない状態で、
これから暗い山道へと突入せねばなりません。
目的地まではおよそ1時間半、
すべて舗装された一本道とは言え、
何といってもすべてが「初」の体験です。
昼間の明るい時間帯でも、
知らない道を走るのには、
それなりのストレスがかかるもの。
しかも今は周囲に何があるかすら見えない早朝で、
標高1400m地点へと続く山道が「相手」です。
我ながら「何と無謀なことを……」と後悔しつつも、
ここまで来たら前に進むしか選択肢はなく……。
後ろ髪を引かれる思いで町の明かりに別れを告げ、
イザ見知らぬ「深山」へと足を踏み入れたのでした。