天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

ピンキーリング

2012-05-29 06:40:27 | 小説
彼女はきょとんとする。
「女の服が好きって、どこが。」
そこまで言わすか。翔太は思う。でも、もう洗いざらい言ってしまおう。
「色とか形とかきれいやん。そんなん見るの好きやし。」
彼女は熱心に翔太の話しを聞いている。その表情に嘲りの色はない。翔太は言葉を続ける。
「本当のことを言うと、女の服を着たいと思ってるねん。変やろ。俺が変態やって、おまえに言いふらされても仕方ないよな。」
言えば言うほど楽になる。心も体もどんどん軽くなる。人にどう思われてもいいという気分になる。彼女は真面目な顔で翔太を見つめていた。
「あたし、なんにも言わへん。それに、田中のこと変やと思ってへんし。ていうか、なにを言いふらすん。」
「え、男が女の服着たいて思うのって、めっちゃ変やと思うねんけど。気色悪くないん。」
「どうなんかなあ。わからへん。変ってるとか、気持ち悪いとか思う人はいるやろうなあ。それはわかんねんけど、あたしはそう思わへんしなあ。きれいなもんが好きなんやなあとは思うけど。別に悪いことしてるわけでもないし、ええんちゃう。あたしは気にしないなあ。」
彼女ののんきな意見に翔太は今までひとりで抱えていた重荷を下ろした気分になる。ほっとした顔で彼女を見る。そんな翔太に冷水を浴びせるように、厳しい声で彼女は言う。
「でも、気になることがあんねん。なんであたしが言いふらすと、最初から決めつけたの。」