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寡黙堂ひとりごと

詩吟と漢詩・漢文が趣味です。火曜日と木曜日が詩吟の日です花も酒も好きな無口な男です。

十八史略拾い読み 頸血を以て大王に濺ぐを得ん

2009-02-14 10:53:07 | Weblog
 秦王、趙王に約して澠池(べんち)に会す。相如従う。酒を飲むに及び、秦王、趙王に瑟(しつ)を鼓せんことを請う。趙王之を鼓す。相如復(また)秦王に缶(ふ)を撃って秦声を為さんことを請う。秦王肯(がえ)んぜず。相如曰く、五歩の内、臣、頸血(けいけつ)を以て大王に濺(そそ)ぐを得ん、と。左右之を刃(じん)せんと欲す。相如之を叱(しっ)す。皆靡く。秦王為に一たび缶を撃つ。秦終に趙に加うる有ること能わず。趙も亦盛んに之が備えを為す。秦敢て動かず。

瑟 琴の大きいもの  缶 酒を入れる土器  靡く 後ずさる

秦王は趙王に澠池での会見を所望した。酒宴たけなわのころ秦王は趙王に瑟を弾くことを請い、趙王はしかたなく、瑟を弾いた。今度は、相如が進み出て、秦王に缶を撃って秦の音楽を聴かせて欲しいと申し出た。秦王が断ると、相如が、臣と大王の距離は五歩の内であります、臣の頸を切って大王に血を注ぎかけることも出来るのですよ、と脅した。秦王の左右の者は相如を殺そうと色めき立ったが、相如が一喝したので皆退いた。秦王はしぶしぶ缶を撃った。趙王は面目を保ち、秦は終に趙に対して何の要求も出来ずに会見を終えた。その後も趙は軍備を整えたので秦は戦を仕掛けられなかった。

十八史略拾い読み 和氏の璧

2009-02-12 16:16:05 | Weblog
 前回の解説です。もちろん完璧とはいえません。  
肅侯の子武靈王は、えびすの服装で騎射をよくする者を集め、胡の土地を攻略し中山を滅ぼした。さらに南の秦を攻めようとしたが果せず、子の惠文王に位を伝えた。以前惠文王は和氏の璧を手に入れており、秦の昭王は十五のまちと交換したいと申し入れてきた。ただ交換に応じてもおそらく十五の村邑は渡してくれないだろう。交換に応じなければ、秦は侵略してくるにちがいない。この時、藺相如が進み出て使いを申し出ていうよう、城が手に入らなければ璧を完うして帰りましょう、と。すでに秦王に会見し璧を見せたが果して城を差し出す気配が無い。藺相如は瑕があるので示します、と偽って璧を取り返し、私の頭共々この璧を粉々にして見せましょうか、と迫った。璧を携えて戻った相如は従者に璧を持たせて密かに趙に帰した。その上で、秦の昭王の処分を待ったところ、昭王は賢者である、帰してやれと送り帰させた。

璧を完うして 完璧はここから
胡服して騎射を招き このころから戦車戦から騎馬戦に移行していったものか?胡服は乗馬に適している。
この話は史記の廉頗藺相如伝に詳しい。

十八史略拾い読み 和氏の璧

2009-02-11 11:32:10 | Weblog
 和氏(かし)の璧(へき)
肅侯の子武靈王、胡服して騎射を招き、胡地を略し、中山を滅ぼし、南のかた秦を襲わんと欲して、果さず。子惠文王に伝う。惠文嘗て楚の和氏(かし)の璧(へき)を得たり。秦の昭王、十五城を以て之に易(か)えんと請う。与えざらんと欲すれば欺かれんことを恐る。藺相如(りんしょうじょ)璧を奉じて往かんと願う。城入らずんば、則ち臣請う璧を完うして帰らん、と。既に至る。秦王、城を償うに意無し。相如乃ち紿(あざむ)いて璧を取り、怒髪、冠を指し、柱下に卻立(きゃくりつ)して曰く、臣が頭は璧と倶に砕けん、と。従者をして壁を懐(いだ)いて、間行して先づ帰らしめ、身は命を秦に待つ。秦の昭王、賢として之を帰す。

和氏の璧(連城の璧)卞和(べんか)が楚の文王に献じた環状の宝玉、十五城と交換しようとしたので連城の璧ともいう。

十八史略拾い読み 田(でん)二頃(けい)有らしめば

2009-02-10 15:08:33 | Weblog
 蘇秦は、鬼谷先生を師とす。初め出游し、困して帰る。妻は機より下らず、嫂(そう)は為に炊(かし)がず。是に至って従約の長と為り、六国に并せて相たり。行(ゆ)いて洛陽を過ぐ。車騎輜重(しちょう)、王者(おうしゃ)に擬(ぎ)す。昆弟妻嫂、目を側(そばだ)てて敢て視ず。俯伏して侍して食を取る。蘇秦笑って曰く、何ぞ前には倨(おご)って後には恭(うやうや)しきや、と。嫂曰く、季子の位高く金多きを見ればなり、と。秦、喟然(きぜん)として嘆じて曰く、此れ一人の身なり。富貴なれば則ち親戚も之を畏懼(いく)し、貧賎なれば則ち之を軽易す。況や衆人をや。我をして洛陽負郭の田(でん)二頃(けい)有らしめば、豈能く六国の相印を佩(お)びんや、と。是(ここ)に於いて千金を散じ、以て宗族朋友に賜う。既に従約を定めて趙に帰る。肅侯、封じて安君と為す。その後、秦、犀首をして趙を欺かしめ、従約を敗らんと欲す。齊・魏、趙を伐つ。蘇秦恐れて趙をさり、而して従約解けぬ。

鬼谷先生 戦国時代の縦横家、 機 織機  嫂 あによめ  昆弟 昆は兄に同じ、  喟然 ためいきをつく  負郭 郭はくるわ、負は背にする。城下のよく肥えた畑  頃 百畝  犀首 もと魏の官名 公孫衍(こうそんえん)のこと。

十八史略拾い読み 蘇秦

2009-02-06 18:12:23 | Weblog
 寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為る無かれ
襄子、伯魯の孫浣(かん)を立つ。是を獻子と為す。獻子、烈侯籍を生む。周の威烈王の命を以て侯と為る。武公・敬侯・成侯を歴(へ)て肅侯(しゅく)に至る。秦人、諸侯を恐喝して地を割かんことを求む。洛陽の人、蘇秦というもの有り。秦の惠王に遊説して用いられず。乃ち往(ゆ)いて燕の文侯に説き、趙と従親せしむ。燕之に資し、以て趙に至らしむ。肅侯に説いて曰く、諸侯の卒、秦に十倍せり。力を并(あわ)せて西に向わば、秦必ず破れん。大王の為に計るに、六国(りっこく)従親(しょうしん)して以て秦を擯(しりぞ)くるに若(し)くは莫(な)し、と。肅侯乃ち之に資(し)し、以て諸侯に約せしむ。蘇秦、鄙諺(ひげん)以て諸侯に説いていわく、寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為る無かれ、と。是(ここ)に於いて六国従合す。
従親 縦に親しくすること、燕・趙・楚・韓・魏・斉の六国が連合すること。
資 同意する。 鄙諺 ひなびたことわざ。 従合 合従すること。寧ろ鶏口と・・・鶏の口は小さくとも貴く、牛の尻は大きいが賤しい。だから小国といえども君主となる方が、大国の臣下になるよりもよろしい。

襄子は、兄の孫を後継ぎにした。その獻子の子が籍で侯となる。三代を経て肅侯に至る。その頃、秦が領土を拡げるため諸侯を脅した。洛陽の蘇秦は、秦の惠王に用いられず、燕に行って文侯に、趙と結びなさい、と説いた。燕は同意したので趙の肅侯に説いて、諸侯の兵を集めれば、秦の十倍になる、力を併せれば秦は必ず敗れます。六国が合従して秦を退ければ、これ以上の策は無いでしょう、と説いた。肅侯も賛成したので、諸侯に約束させた。そのとき「寧ろ鶏口と為るとも牛後と為る無かれ」と俗な諺を用いた。ここに六国は合従した。