秦王、趙王に約して澠池(べんち)に会す。相如従う。酒を飲むに及び、秦王、趙王に瑟(しつ)を鼓せんことを請う。趙王之を鼓す。相如復(また)秦王に缶(ふ)を撃って秦声を為さんことを請う。秦王肯(がえ)んぜず。相如曰く、五歩の内、臣、頸血(けいけつ)を以て大王に濺(そそ)ぐを得ん、と。左右之を刃(じん)せんと欲す。相如之を叱(しっ)す。皆靡く。秦王為に一たび缶を撃つ。秦終に趙に加うる有ること能わず。趙も亦盛んに之が備えを為す。秦敢て動かず。
瑟 琴の大きいもの 缶 酒を入れる土器 靡く 後ずさる
秦王は趙王に澠池での会見を所望した。酒宴たけなわのころ秦王は趙王に瑟を弾くことを請い、趙王はしかたなく、瑟を弾いた。今度は、相如が進み出て、秦王に缶を撃って秦の音楽を聴かせて欲しいと申し出た。秦王が断ると、相如が、臣と大王の距離は五歩の内であります、臣の頸を切って大王に血を注ぎかけることも出来るのですよ、と脅した。秦王の左右の者は相如を殺そうと色めき立ったが、相如が一喝したので皆退いた。秦王はしぶしぶ缶を撃った。趙王は面目を保ち、秦は終に趙に対して何の要求も出来ずに会見を終えた。その後も趙は軍備を整えたので秦は戦を仕掛けられなかった。
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秦王は趙王に澠池での会見を所望した。酒宴たけなわのころ秦王は趙王に瑟を弾くことを請い、趙王はしかたなく、瑟を弾いた。今度は、相如が進み出て、秦王に缶を撃って秦の音楽を聴かせて欲しいと申し出た。秦王が断ると、相如が、臣と大王の距離は五歩の内であります、臣の頸を切って大王に血を注ぎかけることも出来るのですよ、と脅した。秦王の左右の者は相如を殺そうと色めき立ったが、相如が一喝したので皆退いた。秦王はしぶしぶ缶を撃った。趙王は面目を保ち、秦は終に趙に対して何の要求も出来ずに会見を終えた。その後も趙は軍備を整えたので秦は戦を仕掛けられなかった。

