寡黙堂ひとりごと

詩吟と漢詩・漢文が趣味です。火曜日と木曜日が詩吟の日です花も酒も好きな無口な男です。

十八史略 安んぞ積陰の譴を得ん

2014-12-23 10:47:57 | 十八史略
交趾丁卒。大校黎桓、囚其宗族而專其國。上初命討之。無功。已而桓奉貢。竟以桓爲交趾郡王。
時霖潦過度。上曰、朕於刑獄盡心。安得積陰之譴。冦準越班對言、某州局吏侵官錢若干。於法爲小過。陛下殺之。王淮參政王沔之弟。盜錢數百萬。於法爲大憝。陛下以沔故、務相容蔽。如此而曰刑獄盡心。如之何無積陰之譴。上即日誅淮罷沔。俄而雨止。

交趾(こうち)の丁(ていれん)卒す。大校黎桓(れいかん)、其の宗族を囚(とら)えて其の国を専(もっぱ)らにす。上、初め命じて之を討たしむ。功無し。已(すで)にして桓、奉貢(ほうこう)す。竟(つい)に桓を以って交趾郡王と為す。
時に霖潦(りんろう)、度に過ぐ。上曰く「朕、刑獄に於いて心を盡す。安(いずく)んぞ積陰(せきいん)の譴(けん)を得たる」と。冦準(こうじゅん)班を越えて対(こた)えて言わく「某州の局吏、官銭を侵すこと若干。法に於いて小過と為す。陛下之を殺す。王淮(おうわい)は参政王沔(おうべん)の弟なり。銭数百万を盗む。法に於いて大憝(だいたい)と為す。陛下、沔が故を以って務めて相容蔽(ようへい)す。此(かく)の如くにして刑獄に心を盡すと曰う。之を如何(いかん)ぞ積陰の譴無からん」と。上、即日に淮を誅し沔を罷む。俄かにして雨止む。


交趾 現在のベトナム  奉貢 貢物を献上する。 霖潦 霖はなが雨、潦は大雨。 積陰 陰気が積る。 譴 咎め。 班 席次。 大憝 大悪人。 容蔽 見逃す。

交趾の丁が死んだ。大校の黎桓が丁の一族を捕えて、政権を私したので初め帝は怒って命じてこれを討たせが、失敗した。そのうち黎桓から貢ぎ物を献上して来たので、黎桓をそのまま交趾郡王とした。
その頃、異常な長雨が激しく続いた。帝は「朕は平素刑罰や獄訟に心をくだいてきたのにどうしてこのように陰の気がこもって天から咎めを受けているのだろうか」と嘆かれた。すると冦準という者が席次を越えて進み出て「さきごろ某州の小役人が公金を少しごまかした事件がございました。法に照らせば微罪でございますが、帝はこの者を死罪に処しました。ところがあの王淮は参政の王沔の弟でございます。その王淮が銭数百万を盗みました。法に照らせば大罪でございます。ところが陛下は王沔の弟ということでお咎めがございませんでした。陛下が刑獄に心を尽すと仰せられても、陰の気が積み重なって天のお咎
めを受けずにおられましょうか」と申し上げた。帝はその日に王淮を誅し王沔を罷免した。するとすぐに雨が止んだ。


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