上賜李繼捧姓名趙保忠、授節度使、命管夏・銀・綏・宥・靜五州、使圖繼遷。繼遷降。賜姓名趙保吉。保吉復寇邊。命李繼隆討之。保忠言、已與保吉解仇。乞罷兵。上怒、命繼隆先移兵討之。繼隆入夏州、檻送保忠於闕下。保吉尋亦請降。而復叛。命繼隆討之。
蜀自既平之後、府庫之物、悉載歸内府。土狭民稠。有司不無賦外之科。王小波起爲盜。小波死。李順繼之。攻陥成都、僭號蜀王。上命王繼恩討擒之。蜀平。
上、李継捧に姓名を趙保忠と賜い、節度使を授け、命じて夏・銀・綏(すい)・宥(ゆう)・静の五州を管せしめ、継遷(けいせん)を図らしむ。継僊降る。姓名を趙保吉(ちょうほきつ)と賜う。保吉復た辺に寇(あだ)す。李継隆に命じて之を討たしむ。保忠言わく「已(すで)に保吉と仇を解く。乞う兵を罷めん」と。上怒り、継隆に命じて先ず兵を移して之を討たしむ。継隆夏州に入り、保忠を闕下(けっか)に檻送す。保吉尋(つ)いで亦降を請う。而して復た叛す。継隆に命じて之を討たしむ。
蜀既に平らぎしより後、府庫の物、悉く載せて内府に帰る。土狭く民稠(しげ)し。有司(ゆうし)賦外の科無きにあらず。王小波起って盗を為す。小波死す。李順、之に継ぐ。成都を攻陥(こうかん)し、蜀王と僭号(せんごう)す。上、王継恩に命じて討たしめて之を擒(とりこ)にす。蜀平らぐ。
夏・銀・綏・宥・静 ともに今の陜西省にある地。 闕下 宮殿の門を闕という。 内府 帝室の庫。 稠 人が多いこと。 賦外の科 正規の租税以外の割り当て。
帝は、西夏の主となった李継捧に趙保忠と姓名を賜い、節度使を授けて夏・銀・綏・宥・静の五州を管轄させて、弟の継僊を討伐させようとした。継僊が降伏したので帝は姓名を趙保吉と賜ったが、保吉は又叛いて国境を侵した。帝は李継隆に命じてこれを討伐させた。すると兄の保忠が「既に保吉と和解しましたから討伐をお止めください」と願い出た。帝は怒って李継隆に命じて、兵を移して先ず保忠を討たせた。継隆は夏州に攻め入り、保忠を捕え檻に入れて宮城に送った。すると保吉も続いて降伏を申し出たが、またもや叛いた。帝は再び継隆に命じて討伐させた。
太祖の時代に蜀が降伏してから後、蜀の財宝はすべて帝室の庫に送られた。蜀の地は狭小でその割に人口は多く、役人による規定の租税以外の割り当てもあり、人民の暮らしは苦しかった。そんな折に王小波という者が現れて掠奪を行った。小波が死ぬと李順という者が後を継いで、蜀都の成都を陥れて蜀王と名乗った。帝は王継恩に命じて討伐させ、これを生け捕りにした。こうして蜀の地は完全に平定した。
蜀自既平之後、府庫之物、悉載歸内府。土狭民稠。有司不無賦外之科。王小波起爲盜。小波死。李順繼之。攻陥成都、僭號蜀王。上命王繼恩討擒之。蜀平。
上、李継捧に姓名を趙保忠と賜い、節度使を授け、命じて夏・銀・綏(すい)・宥(ゆう)・静の五州を管せしめ、継遷(けいせん)を図らしむ。継僊降る。姓名を趙保吉(ちょうほきつ)と賜う。保吉復た辺に寇(あだ)す。李継隆に命じて之を討たしむ。保忠言わく「已(すで)に保吉と仇を解く。乞う兵を罷めん」と。上怒り、継隆に命じて先ず兵を移して之を討たしむ。継隆夏州に入り、保忠を闕下(けっか)に檻送す。保吉尋(つ)いで亦降を請う。而して復た叛す。継隆に命じて之を討たしむ。
蜀既に平らぎしより後、府庫の物、悉く載せて内府に帰る。土狭く民稠(しげ)し。有司(ゆうし)賦外の科無きにあらず。王小波起って盗を為す。小波死す。李順、之に継ぐ。成都を攻陥(こうかん)し、蜀王と僭号(せんごう)す。上、王継恩に命じて討たしめて之を擒(とりこ)にす。蜀平らぐ。
夏・銀・綏・宥・静 ともに今の陜西省にある地。 闕下 宮殿の門を闕という。 内府 帝室の庫。 稠 人が多いこと。 賦外の科 正規の租税以外の割り当て。
帝は、西夏の主となった李継捧に趙保忠と姓名を賜い、節度使を授けて夏・銀・綏・宥・静の五州を管轄させて、弟の継僊を討伐させようとした。継僊が降伏したので帝は姓名を趙保吉と賜ったが、保吉は又叛いて国境を侵した。帝は李継隆に命じてこれを討伐させた。すると兄の保忠が「既に保吉と和解しましたから討伐をお止めください」と願い出た。帝は怒って李継隆に命じて、兵を移して先ず保忠を討たせた。継隆は夏州に攻め入り、保忠を捕え檻に入れて宮城に送った。すると保吉も続いて降伏を申し出たが、またもや叛いた。帝は再び継隆に命じて討伐させた。
太祖の時代に蜀が降伏してから後、蜀の財宝はすべて帝室の庫に送られた。蜀の地は狭小でその割に人口は多く、役人による規定の租税以外の割り当てもあり、人民の暮らしは苦しかった。そんな折に王小波という者が現れて掠奪を行った。小波が死ぬと李順という者が後を継いで、蜀都の成都を陥れて蜀王と名乗った。帝は王継恩に命じて討伐させ、これを生け捕りにした。こうして蜀の地は完全に平定した。