プロ野球の野村監督が亡くなった。
南海ホークス時代に戦後初の三冠王を達成し
ヤクルト、阪神、東北楽天の監督もつとめるなど
まさに名選手、大監督だった。
そういうマスコミ風な美辞麗句はさておいて・・・
彼の「ボヤキ節」が大好きだった。
チームの成績が良しにつけ悪しきにつけ
選手のプレーや判断をブツクサとぼやき続けるのだが
それが実に的確でユーモアに富んでいて
試合を見るより試合後のボヤキを聞くのが楽しみだった。
選手のプレーを俎上に挙げながらも
その語り口には選手への深い愛情が感じられて
単なる毒舌ではなかった。
現役時代は王や長嶋などスタープレーヤーを
輝くばかりの「ひまわり」にたとえ
自らのような地味な選手を「月見草」と表現するなど
花形選手への強烈な対抗心があって
だからこそ地道な努力の大切さを選手に説く
熱血漢でもある監督だった。
数日前の深夜テレビで
たまたま野村監督のドキュメンタリーを見た。
奥様の沙知代さんが亡くなったのが
確か三年ほど前だったろうか。
奔放な言動で何かと世間の物議を醸す人ではあったが
そんな彼女への深い愛情があふれていて
ああ、この人は本当に奥さんを愛していたんだなあ・・・
などと柄にもなく感じ入ってしまった。
つくづく寂しいねえ・・・
まさか俺より先に死ぬとは思わなかったねえ・・・
何をする気力も湧いてこないなあ・・・
得意のホヤキ節はいつの間にか「嘆き節」に変わって
愛する奥様の長い不在を感じさせた。
その不在を待ちきれずに
奥様の下へさっさと行ってしまわれたのか。
享年八十四歳、懐かしい人との再会を祈るばかりである。