地震によって、多くの命が奪われました。このことは大変悲しいことであり、また残念なことでもあります。昨晩も大きな余震があるなど、被災地の方々には大変厳しい状況が続いています。
こうした状況のなか、被災地から離れた場所で経済活動を営む日本人には、一日も早い復興のため、産業界を再び隆盛させる使命が課せられているのではないかと考えます。
ただし、現実的な問題として、その産業界も非常に大きな打撃を受けています。今後の停電の見通しや原発の状況などから察するに、事態を好転させるには、大変な時間と労力を要することが予見されます。多くの工場が動かなくなったりで、製造業の機能が海外に移ってしまうような事態も想定しなければなりません。こうしたことにより、世界における日本のプレゼンスが低下することは、十分考えられることです。
しかし、それをあまり悲観することもないと思います。
私は、日本が世界のリーダーたるべきということを繰り返し述べてきました(「世界のリーダーたるべき日本」等参照)。このことは、日本の産業界が世界をリードするということも含まれますが、こうした事態になっても何ら変わりません。
焼け野原のなか敗戦を迎えた日本が、経済大国と呼ばれるようになった背景には、さまざまな要因が考えられます。そこには内的要因、外的要因を含めて、挙げていったらきりがないと思いますが、私なりには、日本人のソフトパワーを挙げないわけにはいきません。「経済大国日本」を作り上げたという目に見える結果の裏側には、日本人の勤勉さや発想力、文化など、目に見えない多くのソフト的な要因が働いたのだろうと思うのです。
そして、そのソフトパワーは、今の日本人のなかにも生き続けています(「日本人の大切な「ゼロ」」等参照)。
震災直後、落ち着いて秩序を守りながら行動する日本人の姿は、海外メディアでも大きく取り上げられました。こうしたことも、日本人が持つソフトパワーのひとつの表れと言えるでしょう。このソフトパワーが日本人に宿る限り、何度でもやり直しがきくと考えます。いやむしろ、そのソフトパワーによって、これまで以上に大きく飛躍することができるのではないかと考えています。
ソフトパワーこそが、日本を日本たらしめている力の源泉なのです。
今回の震災は、大変不幸な結果をもたらしました。これによって、非常に多くのものを失いましたし、これから先も失い続けるものがあるでしょう。しかし、未来を生きる私たちは、それらをすべて前向きに捉えていかなければなりません。そういう意味で、この震災をバネにして、日本人はそのソフトパワーによって産業を大きく成長させなければいけませんし、また日本人にはそれができると思っています。
日本という国の真価、ソフトパワーの威力が発揮されるのは、まだまだこれからだと思います。
《おまけ》
ソフトパワーは、それを伝播させることで非常に大きな力を発揮します。インターネットやコンピューターが発達した現代社会は、ソフトパワーが威力を発揮するうえで、とても都合よくできていると言えるでしょう。そういう意味でも、インターネットやコンピューター産業をさらに隆盛させるということは、日本を再興させるためにも大変重要なのではないかと考えます。