思惟石

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【読書メモ】2011年2月 ④

2019-06-08 20:08:10 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年2月 ④>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『千両花嫁 とびきり屋見立て帖』山本兼一
『火天の城』『利休にたずねよ』の作者。の割には、ほのぼのした人情話。
幕末の志士が出てくるが、どうも『竜馬がゆく』がチラつく。
武士って基本、町人を人と思ってないのがよくわかる。

(幕末の京都にある道具屋が舞台の連作短編集。
 「とびきり屋見立て帖」シリーズとして3冊刊行されているようです。
 茶道具の大店の娘ゆずと元奉公人の真之介が駆け落ち同然で祝言をあげ、
 見立て(目利き)の力で大小様々な問題を解決していく、というお話し。
 第一作の『千両花嫁』では実家に結婚を認めてもらうまでが描かれます。

 幕末&京都ってことで、芹沢鴨、近藤勇など新撰組から阪本竜馬、勝海舟まで
 有名人がたくさん出てきます。ゴージャス。
 ですが、私が司馬史観にひっぱられているからですかね…
 史実系の人々の人物造形に違和感を抱くというか、うーん、まあ、
 こういう描き方で良いのかなあ、こういうことするかなあ、とか、
 余計なことを考えてしまってあまりちゃんと読めなかったです。

 身も蓋もない感想ですが、夫婦の問題とかどうでも良くない?
 と思ってしまったというか。
 有名人出さない方が良かったんではなかろうか)
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大岡昇平『事件』名作法廷ミステリ!

2019-06-06 11:52:30 | 日記
第31回日本推理作家協会賞を受賞した作品です。

主題となる事件は、第一印象としてはシンプル。
東京郊外の田舎町で、飲み屋経営の23歳女性が刺殺される。
犯人は被害者の妹と付きあっていた19歳の少年。

意外な真犯人とか、ドッキリトリックとか、叙述とかの気配は
一切無さそうだけどどうかな…なんて思いながら読んでるうちに
こりゃ凄いぞってなります。

おもしろいです。

50ページ目辺りで始まる裁判の描写がほとんどと言って良い一冊です。
裁判官、弁護士、検事の立場や、裁判の仕組みなどを描きつつ
冒頭陳述から結審へと進みます。

大どんでん返しはないのに、
裁判の駆け引きや、証拠調べや証言から見えてくる新たな事実に
ぐいぐい引き込まれるんですよね。ふしぎ。
すばらしい一気読み小説です。


初出は、朝日新聞で1961年(昭和36年)に連載された新聞小説。
当時のタイトルは『若草物語』だったそうで、
連載当初は姉妹と少年の人間関係とかを書こうとしていたとか。
改訂済みの文庫で読んだ身としては「ん?」って感じのタイトルです。

1977年に加筆修正と改題されてようやく刊行、
1978年の日本推理作家協会賞を受賞。

著者はミステリのつもりで書いたわけではないので、
受賞は意外だったそうです。

でも、読んでみるとわかるけど、人の心証とか、記憶(と証言)が、
少しずつ変わっていく様子や、ちょっとした新事実から見える新解釈とか、
やっぱりミステリだなあと思います。

東京近郊の、なんの特長もなかった農村に工場が建ち始め、
近くには米軍基地があって、戦後と近代化の過渡期の、
でもやっぱり田舎である架空の町の描写も、良い感じです。

裁判制度とかももちろん、時代とともに変わっているので
そのまま現代に適用できなそうな情報もありますが
昭和36年の風俗や人間模様の空気感とともに読むと
いい意味で時代を感じられます。

おもしろいですよ!
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