昨年の5月中ごろに日本語学者の金田一秀穂先生の講演を聴く機会に恵まれました。その時のことは、
心地よい日本語と信濃の国[2013年05月19日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/96b8cdf3378da7e51a89b48583345fd0
に書きましたが、昨夜金田一先生が出演されていたEテレの“課外授業ようこそ先輩・選「日本語学者金田一秀穂」”を観ました。金田一先生の国語授業いい番組でした。
その中から一つ書きたいと思います。
「自分たちの気持ちを表わす新しい日本語を作ってみる。」
気持ちを表わす言葉には、喜怒哀楽、悔しい、残念、心配などのいろんな日本語がありますが、子どもたちに新しい気持ちを表わす言葉を作ってもらうというテーマに注目したいと思います。他にも、
筆箱のように実際には筆が入っていないような言葉を別な言葉に作り替える。
実際に家庭で使われている、自分家でしか通じない言葉を調べる。
などのテーマがありましたが、くり返しになりますが、「自分の気持ちを新しい言葉にする」には感動しました。
既成の言葉では表現しきれていない言葉を内にそれぞれに持っているはず。自分の心にピッタリ合う言葉づくりに挑戦。
つくるにはまず、
シチュエーションを思い出す。
どのような出来事があったか、いろいろな言葉をまず書き出す。
ある少女は「他人に無視された時の言いようのない気持ち」を言葉にしようと、その時のことを思い出しながら言葉づくりに挑戦します。
「気持ちが悪くもやもやして」いるような・・・。
「お腹のあたりが気持ちが悪い」
そこで金田一先生が、相談にのり、昔から使われる、
腹が立つ
胸から火が出るようだ。
と言う表現を語りながらその少女の発想を後押し。
無視された時の体の感覚。
「心の中を正直に見つめ直し、自分の気持ちにある自分だけの言葉を生みだしていきます。」
とのナレーションの言葉。「見つめ直す」たしかにそうだなぁと思います。
結果はどうだったか。
この子の作りだした言葉は、
(Eテレ・課外授業・ようこそ先輩・選「日本語学者金田一秀穂」から)
「心の熱冷」
でした。この子は、
「無視された時に、心はイヤで熱くなるけど、同時にさびしくなるので心が冷めると感じたので合せて・・・」
と説明します。
「説明されるととてもよくわかる」
と金田一先生は解説されていました。
この言葉を作る過程も番組では上記のように紹介されていたので、私は説明する前にこの子がどんな言葉を作りだしたか、その背景を知っていたので「心の熱冷」という言葉が書かれた台紙を見た時に「すごいと」感動したました。
さいかい、金田一先生の「説明されるととてもよくわかる」には、やはり日本語学者としての専門家の凄さを感じました。
「心の熱冷」=「無視された時にイヤな気持ち」
説明されないと、確かにこの言葉からは、右辺の意味は解せません。
「心の熱冷」という言葉に無視された時の「いや~な気持ちが」伝わるということはどういうことなのか。
確かに私は台紙の文字に説明前にその気持ちが伝わってきました。
そこには、作りの過程を知っているからです。喜怒哀楽等の気持ちを表わす既成の言葉は、その過程を知らないのに意味理解ができます。
その言葉は、そういう時に使うものとその言語圏に住む人々は体得していきます。
「熱冷」「冷熱」
心の状態を温感で説明する。何とも言えないやるせなさ、やるせない気持ち、どうしようもない嫌な気持ちを女の子は表現しました。
「人の心を知るということ」
は、逆に「自分の心を知る」ということでもあることに気づきます。