思考の部屋

日々、思考の世界を追求して思うところを綴る小部屋

ヒトは想像の翼を広げる

2016年05月06日 | 科学

 2002年の4月から5月のNHK人間講座という番組で霊長類研究家の松沢哲郎さんの「進化の隣人チンパンジー」が放送されました。

 人間の進化にも興味があることから、NHKを学びの場とし関係する番組で学んだことをブログに書いてきました。

NHKスペシャル ヒューマン なぜ人間になれたのか 1-(2)

NHKスペシャル ヒューマン なぜ人間になれたのか 2-(1)序章

 連休最終日の昨日、松沢さんの「チンパンジー アイたちが教えてくれた ヒトは想像の翼を広げる」が放送されました。

 松沢さんは長く務めた京都大学霊長類研究所を退官されたということで、これまでの研究の歩み、その成果が放送されていました。


(松沢哲郎先生NHK「チンパンジー アイたちが教えてくれた ヒトは想像の翼を広げる」から) 

 700万年前共通の先祖からわかれたヒトとチンパンジー、チンパンジーは森に棲むゴリラと比べると、遺伝子的には人間に近く、ヒトになれなかったチンパンジーは、その生態、行動を研究することで人が、人になったわけが解ってくるということです。


(NHK「チンパンジー アイたちが教えてくれた ヒトは想像の翼を広げる」から) 

 今年(2016年)1月に白揚社からトーマス・ズデンドルフ著『現実に生きるサル 空想を語るヒト』が出版され、霊長類との比較による「ヒトなるもの」を知ることが出来ます。

 記憶力はチンパンジーの方が優れている。

その後の研究から明らかになってくることは何か。

 「想像の翼をもつヒト」「空想を語るヒト」

 古代の哲学者が「想像する人間」を語りましたが、まさにそこに行きつきます。心理学者が「人間は物語る存在である」とも語りますが、創造・空想・物語るの根源を考察すれば相手に対する思いやりも浮かんでくると思いますが「共同体」「共感脳」など共生の和の概念が想像されるかと思います。

 逆に語れば、野生化する人間がいるなれば、ヒトは逆向きの進化へと進んでいることにもなります。

 仮想現実の世界が現実が携帯でも手軽に経験することが出来る時代。チンパンジーとの比較から語られる「想」の世界は、仮想現実の「想」とは異なるものです。

 現実世界に起こるリアルな事態、その中で共生することに必要な「想」なのです。

 人間の心の本質

 なぜヒトはヒトに進化したのか、進化し続けているのか。そういう関係本もありますが、実際にチンパンジーの研究を見ると、本当に観えてきます。

 


NHKスペシャル「生命大躍進」第2集「こうして“母の愛”が生まれた」を見て

2015年06月09日 | 科学

 NHKスペシャル「生命大躍進」という番組が放送されています。既に第二集まで放送され、つい最近第1集「そして“目”が生まれた」に続いて第2集「こうして“母の愛”が生まれた」が放送されていました。

 DNA研究はここまで来ているのか。

 5・6万年前にほんのわずかな現生人類の祖先がアフリカ大陸を離れ全世界に広がった事実は、考古学的な研究とともにDNA研究がその解明を可能にしています。

 それよりもはるか昔、3億年前からはじまる進化過程における大躍進、第二集では「なぜ人間は、かくも強い親子愛で結ばれるようになったのか?」というテーマを中心に語られていました。

 卵生から胎盤を持つ生き物として、そこにはウイルス感染によるDNAへの侵入、そこに現れてくるのは他人的な存在である我が子を身ごもる不思議な胎盤の機能があるようです。

 身ごもるとは異物を体内に取り込んでいるようなもの、そこのも「愛」の芽生えがあり、それ以前の卵生から胎生への進化過程における母乳の元型的な物質の存在(母乳の誕生)にも「愛」の芽生えがあるのですから進化とは本当に不思議な現象です。

 汗が卵を雑菌から守る機能に変化しそれが栄養分をもつ物質に変化、「子を守ろうという機能」即ち殺菌物質リゾチームがDNA内に作られたという事実・・・。

「なぜ人間は、かくも強い親子愛で結ばれるようになったのか? 実は太古に起きたDNAの大事件で、母の愛が芽生えたことが明らかに」

と番組紹介が語るように、知るということによって何か壮大な感覚をもちます。

 個人的には「異物でもある子を身ごもる」という言葉に、前回に引用した、

「世界はたくさん、人類はみな他人」

を思い出します。

 親子といえども体内においては胎児は異物的な存在、しかし生命の継承はこれがなければ今日のわが身体はないのですから、その意味するところはいかに深いものか。

 「“母の愛情”の意外な起源」

 その根源性においては母親の愛ばかりではなく「愛」そのものが感性の育成に重要な役割も担っていることをも示しているのではないかと思うのです。

 日曜日に放送された番組を早朝から見ての感想です。


精神・身体に作用するホルモン

2014年06月18日 | 科学

 EテレでのサイエンスZEROで2回にわたり精神・身体に作用するホルモンについて最新の研究結果が放送されていました。

 2回目は「オキシトシン」で、我が子を愛おしく感じる母親の出産後の姿から番組は始まりましたが、人類進化の過程をこれまでブログに書いてきましたが、その中にもオキシトシンをはじめとするホルモンについて、人間の「選択肢・行動の向こう側にあるもの」などと題してブログに書いてきました。

 今回の番組ではより詳細に人間関係に大きく作用する「オキシトシン」、番組案内をそのまま引用しますが、

[親が我が子をいとおしく感じたり、夫婦や恋人が相手と離れがたいと感じたり・・・そんな人と人の愛情が、実は脳内で分泌されるホルモン「オキシトシン」によって操られていた!?このホルモンを鼻から吸入すると、男女のケンカも仲直り。さらに、なんとパートナーの浮気防止にも効果あり??最新科学でオキシトシンが人間の愛情や信頼を操るメカニズムを徹底究明。ちょっとした日々の行動でオキシトシンを増やす意外な方法も紹介する。]

 オキシトシンの働きも先週の性ホルモンと同じように子孫を残すためっていうのがやっぱり出発点。

そして、

 この愛情の強さを左右する不思議なホルモンであるオキシトシンは、最近の調査である意外な事実が明らかになって来ていることがあることが語られていました。

 スウェーデンの研究結果、スウェーデンでは国民30万人分の遺伝子情報が保管されていて、2年前この遺伝子バンクを使って遺伝子の解析が行なわれその結果オキシトシンに関わる遺伝子が10種類ほどあることが明らかになりました。

 実はこれらの遺伝子が、これまでの研究である特定のタイプだとオキシトシンやそれを受け取る受容体が減る事が分かっていて、 調査の結果こうしたオキシトシンの働きが弱い遺伝子タイプを1つ以上持つ人が実に全体の4割を占めているそうです。

 研究者のワラム博士は、生まれつきこの遺伝子タイプを持つ既婚者に対し夫婦生活に関するアンケート調査を行ったところ、夫婦生活の満足度や夫婦の協調性などの項目でこの遺伝子タイプを持つ人の方がいずれもポイントが低い事が分り、 更に過去1年間で離婚の危機があった人もこの遺伝子タイプを持つ人の方が5%多かった、とのことでした。

 前回の「性ホルモン」では、テストステロンというと筋肉を増強したりする働きがあるホルモンに影響を与える5α還元酵素の話がありましたが、このテストステロンは胎児から生後6ヶ月の間にかけて、大脳の性差に影響を及ぼすと言われており、人類が進化とともに獲得してきたホルモン生成の姿は、脳や精神面への影響を如実に示しています。

 社会を作りだしていく人間、そこには社会を織りなす作用としてホルモンの存在があり、他の動物とは異なる情緒が大きく行動に影響する人間の根源ともなっているといえると思います。

「使い方次第では怖いですよね。
 何かヨーロッパでは悪用されたら困るっていう事でオキシトシン・スプレーの販売に対して反対運動も起きてるみたいですね。」

こんな話も番組内にありました。

 闘争心、愛情などを自由に操ることが出来るという懸念がそのような話になるのだと思いますが、人類の進化とは何ぞや、社会構造とは何ぞや、ホルモン作用とは興味深い話です。


自立型ロボット開発における課題

2013年11月10日 | 科学

[思考] ブログ村キーワード

 今回も重い話になりますが、「ロボット兵器が戦争を変える」という話を最近話題にしました。未来を予想する中で、一握りの人々による国家支配とロボット対ロボットによる対立国との無血戦争が想像され、またそうならないために、まずは争いの起きない世界構築を夢み、今のうちにロボット開発における倫理上の国際条約の制定などを早急に行なわなければならないという話です。

 2年ほど前は、「人間存在とは何か? アンドロイドに宿った心」などと呼ばれていた人間型ロボットは今はヒューマノイドと呼ばれ、過去ブログに知能ロボット工学者石黒浩教授の研究を紹介したことがあります。

人間以外のものたちの振舞い・英知をつけることの重要性[2011年06月06日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/ec5708ea2c24b13dcfd8b1c9dbbc381d

 7日のNHKのウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」という8分ほどの番組が放送されていました。


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)

 今月の東京都江東区で開催された国際ロボット展。世界12か国から334の企業・団体が参加し最新のロボット技術が集まった展示会になったようです。

 その中でも注目を浴びているのが、自ら判断し行動を決める自律型ロボットでホンダのアシモ君のような小型ロボットが二足歩行で前方の障害物を回避して進む様子がなどが放送されていました。


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)

 ある技術者は「(自律型ロボットは)見て感じて考えて働けるロボットは、これから伸びていくと期待している」と語っていました。

 高齢化社会で介護が必要な介護が必要な人も増え人間の力にも限界があり、また災害現場などで容易に人間が近づけない所での救護活動に自律型で困難な障壁に立ち向かって行くロボット技術開発はとても重要で、今回の3.11東日本大震災に伴う原発事故では遠隔操作で働くロボットも重要なことが判明し、もしも自律型で最善行動がとれるロボットがあるならば、被害拡大も抑えることもできるかもしれません。

 その一方で自律型ロボットの負の部分になりますが、アメリカのロボット技術のあり方を研究しているニュースクール大学准教授のジュノ・ピーターさんは、自律型のロボット開発において「近い将来戦場でロボットが自ら判断し人の命を奪う事態も生まれかねない。」「生死にかかわる決定権をロボットに与えることは人類にとって脅威だ。」と語ります。
 
<ロボットはパートナーかそれとも殺りく者となるのか。>

 番組ではイスラエル軍の実用化されている軍用ロボットが紹介されました。


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)

国境線の警備に既に実用化されている。360度計測最新レーダーを備え敵と目される人間い近づき、警告を発しときには射殺もできる段階にまで来ているようです。


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)

その他に、

四足歩行のネコ型ロボット、このロボットは姿勢を崩しても自ら姿勢を立て直す機能を備え、時速26キロ、13/100mで走りカーブも軽やかに走り抜けます。


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)

四足歩行型のウマ型ロボット、どんな悪路でも兵士の後をついて行く、兵士の荷物を運搬したり近づく敵を攻撃することも可能のようです。


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)

先のジュノ・ピーターさんは、「殺人ロボットは核兵器や化学兵器とは異なり巨大な施設がなくとも製造できるだから急速に拡散が進み、テロ組織などにも広がる恐れがある。」と語り国際的な法規制を訴えています。


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)

 実際に開発され配備される前の今こそ禁止するチャンス。ロボット開発の先進国の日本の協力は欠かせないと考え政府関係者ともコンタクトしているようです。

 7日開かれた世界ロボット会議でも「兵器への転用の危険性」が訴えられたそうです。


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)

 先ほどもイスラエルの無人の国境警備ロボットがありまた、以前紹介したようにアメリカはアフガニスタンで無人の爆撃機を使用しています。


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)

 近い将来は軍事型のヒューマノイドの開発もされるのではないかそのような懸念が今まさに現れています。いわゆる自律型のロボットが起こす脅威です。


(NHKウォッチ9で「殺人ロボットの恐怖兵器転用までの秒読み? 法的規制追いつくかず」から)

 今現在何ら既成の無いロボット産業。介護ロボットから殺戮ロボットまで科学技術はどこまでも限りなく止めどなく、便利さと効率化をもとめて進んでいます。

 人間は、戦争に行かなくてよい。

 考えてみれば不思議な世界の話です。対立さえなけれノープロブレム。

 上記のNHKウォッチ9の二日後の地元紙に「ロボット人間と人間ロボット」という地元国立大学の名誉教授の寄稿が掲載されていました。直接この殺人ロボットの話は出てきませんが、人間との共存型のロボットの話を書かれていました。

 産業革命における機械化は、その後の社会における機械化とともに、ある意味労働者の削減を意味し、将来人間は労働をすることなく・・・・なるかもしれません。

 その中で人間は何をなすべきか。

 苦行から解放された人間、何をして時間を過ごせばよいのか。個々の人間が自分の能力を生かした自己実現、自分の生きがい充足の活動に変わるでしょう。

 本当にそうなるかはわかりませんが、確かに肉体労働の働き場を失った人間はいる場所がありません。

 自律型ロボットの増加とともに自律無き人間が増える。

 2001年の手塚治虫先生の作品のマンガ映画『メトロポリス』があります。ロボットが人間社会に入り込み、共存するポリス。ポリスの支配者は亡き娘に酷似する、より人間性を備えたロボットを国際指名手配されている科学者に製造を依頼、後に娘にこの国を委ねる予定だったが・・・という映画で、同時期の同じような映画の中では世界的に絶賛された作品のようです。
 
 ブライアン・クリスチャンの『機会より人間らしくなれるか?』(草思社)が昨年の6月に出ています。「AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる」という副題がついていますが、コンピューターの人間思考プログラムによる仮想人間をチャットボットと呼ぶようですが、それと人間とが会話を相手がコンピューターか本物の人間かを争う競技の実際から導き出される、「人間らしい」を意味追究しているのですがなかなか面白い話です。

 人間の実際の会話を「純粋な意味論」で分析しプログラム構成して行く方法と「純粋な経験論」でいわゆる会話の統計学的な集積による分析からプログラムを構築して行く方法などがあり、「思考というもの」に興味のある私には欠かせない興味深い話です。

 経験からもの言う人間

 あぁ言ったらこう言う人間

 ヒューマノイドの開発も身体的な人間と酷似が可能になり、さらに「人間らしき思考」が構築されるようになると、間違いなく自律型のロボットはできて行くわけで、実際にはまだ競技的な段階ですが会話型のヒューマノイドはあります。

 その内に競技場を走り性能競争が開催され、最終的に勝ロボットはお立ち台に立ち「疲れた」とかいうかもしれません。

 最後に新聞記事の話にもどりますが、信大の名誉教授中野和朗先生なのですが記事の最後にとても心に訴える話をされていました。

<・・・こう考えるとロボットとの共生社会万々歳!ということにもなりますが、あくまでもこんな夢は人間を成敗し人間い取って代わろうとする「人間ロボット」などという、物騒なロボットが現れないことを前提とした話です。いまでさえ、人間自体がロボット化した「ロボット人間」がのさばり、人間の持続的生存を脅かしはじめているのが大変心配です。>(松本市民タイムズから)

 自然科学者が何を作っているのか、作られる素材の声を聞いているのか、私は制御できそうでできない代物と叫んではいないか。自然環境から知る限りでは叫びに似た声が聴けるように思えます。

 技術者自体がロボット化し、すべきことに目が行き届かない。車を正常に運転できない状態に身をおいている人には罰規定がさらに強められたようです。正常に機械を制御できないつまり運転できないということで、どこが違うのか疑問に思ってしまいます。

 大きな機会と小さな機械、分散した責任と一人の責任の違いはあるが事態は相似形の様相をしています。

 精神的に在る者もマンネリ化は危険。さらなる新鮮な注意力が常にその都度要求されます。右よ~し、左よ~し、前よ~しの指差し呼称旧国鉄マンはよくやっていました。今も継承されているようですが、ただ今の真中に指さし呼称、安全第一です。

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人類遙かなる旅路・科学の目が語るもの

2013年07月28日 | 科学

[思考] ブログ村キーワード

 今年の2月3日のサイエンスZEROという番組で「湖に眠る奇跡の堆積物」という番組が放送されていました。福井県の水月湖の湖底の堆積層は、歴史のモノサシとして世界的に注目されるているという話で、7月25日のニュースウオッチ9でこの水月湖の堆積層について「歴史を変える新尺度~7万年分の軌跡の地層~」と世界的に認めたことが紹介されていました。

 福井県の水月湖は地図帳で見るといくつかある湖のひとつですが、その地理的場所的な関係から湖の固い地盤の湖底の上に堆積した縞模様の地層が年縞(ねんこう)といって7年分の情報が詰まったものなのだそうです。

 45mの年縞。それはプランクトンの死骸の堆積物が白い層を形成し、秋の周辺の山々から風に吹かれて湖面に落ち、その落葉は固定へと沈み黒色の層を形成していきます。その白黒の層は1mmにも満たないものですが1年分を示し、45mの堆積層で数えると7万年分の世界に類のないもので奇跡の地層なのだそうです。

 年縞の地層に含まれる植物の葉のこの葉に含まれる炭素を計測し、発掘され土器に含まれる炭素量とを比較すると年単位で正確な年代が分るということで、日本の縄文時代の最古の土器とされてきた16900年前の土器をこの方法で調べると16652年前であったということです。

 「歴史を変える新尺度」というのはこういうことで、その確定力には驚きです。

 この7万年のモノサシに昨夜(27日)放送されたこれもまたNHKの「地球ドラマチック~人類 遥かなる旅路Ⅲ」このシリーズの最終回になるのですが、7万年前にアフリカ大陸を旅だった数百人の現生人類(ホモサピエンス)はついに南北のアメリカ大陸に到着します。

 水月湖の年縞はこの番組では年代特定のモノサシとしては紹介されてはいませんでしたが、7万年のいう言葉は正にこの年縞の7万年に相当するのですから、面白いですね。

 「地球ドラマチック~人類 遥かなる旅路」では遺伝子による化学的な分析も紹介され、世界に満ちあふれる人類は「イブの7人の娘たち」によるものであって人類皆兄妹で『人種は存在しない』(ベルトラン・ジョルダン著・中論公論新社)は正にそのことを指摘しています。

 面白いのはシリーズⅡで「アジアへの到達」が取り上げられ「中国人」の話がありました。

 北京原人(シナントロプス・ペキネンシス)は、ホモ・エレクトスで180万年前にアフリカ大陸を離れた原人で100万年前に中国に到着しました。

 中国人は「地球最古の民族である」というのが、今の中国人の科学的共産主義、中国民族の復興教育の成果で、中国人の認識なのだそうです。

 番組では、中国人のミトコンドリアDNAの遺伝子解析が紹介され「イブの7人の娘たち」であることが明らかにされていました。すなわち固有の遺伝的特徴が認められず、すべてはアフリカを起源とする現生人類の血を引く者たちというわけです。

 日本にも「大和民族」なる民族が固定された存在としてあるよに思う人がいるわけで、中国人の北京原人祖先説を一方的に一笑に付すわけにはいきませんが、対立の火種は知らないというよりも、知る機会が与えられないこと、知ろうとしないところにあるように思います。

 以前にブログに書いたことですが、上海の漢族、中国南部の少数民族、中国東北部の少数民族、台湾の漢族、北京の漢族、韓国人、琉球人、アイヌ人のミトコンドリアDNAの世界は、すなわち日本本土に住む人々のミトコンドリアDNAの世界に重なるわけで、「人類みなきょうだい」なのです。

 4万年~3万年には日本列島が陸つながりのこともあり旧石器人が来ていたようです。そして1万6600年前には縄文時代がはじまっているというわけです。 

 人類はどうして東に進んだのか。

 『人類20万年 遥かなる旅路』(アリス・ロバーツ著・文藝春秋)が上記の地球ドラマチックのテキストになります。遥かなる人類の旅路は、命を継続するための食料も求める旅路でもあったわけで、道具の発明、自然の恵みに対する感謝の姿勢などが語られています。

 日本列島に住む一人として、東に進んだ「どうして」に深遠なる理由を求めたい。

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人間とは何だ・遺伝子スイッチ

2013年02月12日 | 科学

 昨夜TBSで「生命38億年スペシャル 最新遺伝子ミステリー“人間とは何だ…!?”」という番組が放送されました。昨年だと思いますがNHKスペシャルで放送した「ヒューマン-なぜヒトは人間になれたか」という番組を思い出してしまいました。

 最新の遺伝子にかかわる多くの発見が紹介された今回の番組で特に個人的に深く印象付けられたのは「チンパンジーと人の違い」そして「言語に関するFOXP2遺伝子」の部分です。


(TBSで「生命38億年スペシャル 最新遺伝子ミステリー“人間とは何だ…!?”」から)

 チンパンジーのもつ瞬間記憶力は、犬山城近くにある京都大学霊長類研究所所長の松沢哲郎博士から紹介されました。この話はNHKスペシャルの取材班が書いた『Human』(2012・角川書店)に詳しく紹介されています。※同書p44~p57「進化の隣人が教える人間らしさの本質」に詳しい。

 実際の研究所の実験の様子は初めてで、パソコン画面に、1~9のうちから幾つかの数字をランダムに表示する。1秒ほど見せたあとで、その数字を白い視覚で覆い隠してしまう。そのうえで、小さな順位その四角をタッチしていくという課題。安住紳一郎(TBSアナウンサー)は苦労していました。しかし天才チンパンジーのアユムは瞬時に分かってしまう。

この理由は自然界に生きて行く場合に必要な能力を示すもので、敵味方の識別、発見の能力です。番組では瞬時の色分け能力も紹介され、人間とは異なり瞬時に識別できる、これは微妙な色の識別にも関わる能力で、熟している果実の発見能力、早期に発見することが生きるために必要な能力ということです。

 サルは一対一の子育てですが、人間は集団の中で子育てをします。集団で生きるためにはどうしてもコミュニケーションが必要になってきます。

「NHKスペシャル ヒューマン なぜ人間になれたのか」
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/5f4a788ab77288cbe3e79529b2bfe7f6

で細かく紹介しました。今朝はこの件についてはこれ以上紹介しませんが、TBS「最新遺伝子ミステリー」で次に遺伝子スイッチの一つとして「言語に関するFOXP2遺伝子」についての研究成果が紹介されていました。「失語症」とも関係する話で個人的に大変興味のある話でした。フランスの哲学者ベルグソンは「精神と肉体」の関係上「失語症の研究」に情熱を燃やしました。

University.College.London(ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン)のUCL発達認知心理学科教授ファラネ・ヴァーガーデム博士が説明されていました。


(TBSで「生命38億年スペシャル 最新遺伝子ミステリー“人間とは何だ…!?”」から)

「FOXP2遺伝子は、人間の言語コミュニケーションをつかさどり、一連の会話を可能にする働きをもつ重要なスイッチ、これはヒトとチンパンジーとの共通先祖が枝分かれした後、人間特有に進化したものなんです。」


(TBSで「生命38億年スペシャル 最新遺伝子ミステリー“人間とは何だ…!?”」から)

 記憶は確かにあるが表現として表出できない障害、脳にあるのではなく遺伝子レベルであるということを語るものです。脳髄の器官の損傷ではなく記憶能力には全く関係のない遺伝子の話です。個人的には哲学的な話も絡んできます。感動でした。

 昨日小林秀雄先生の話を紹介しましたが、偶然でしょうか、人生の不思議を感じました。

 今朝は取り急ぎメモとして書きました。


エコロジストの幻想・信仰対象としての「自然」・第三者の審級

2011年08月05日 | 科学

 地球上の生命誕生の研究で、科学の目は海底深く眠る微生物の発見の探索を進めています。高熱、高圧力という生命が生きられない環境の中で、微生物を発見するというものです。

 そもそも地球誕生から始まる歴史の中で、生命が棲めるような状態になっ他のは何時頃かとなると、多分地球の歴史からいえば最近の話だろうと思います。そして星の一生からみると遠いはるか未来には消滅する運命にあるのは確かのようです。

 今のような知的生命体として人間が地球上に存在し、大いなる地球を生命体が安全に存続する努力をする行為はいったい何なのかと考えたくなります。

 そもそも地球は我々人間が生命体として存在するために作られているのかというと、地球という天体からすればある一過性の偶然の織り成す刹那の現象のように思います。

 地球上にあって自然というものの一構成の中で「エコロジー」という思想の持つ意味は何なのか。今では当たり前に思うその感情の原点を考えたくなります。

 社会学者大澤真幸先生は『社会は絶えず夢を見ている』(朝日出版)中で「エコロジストの幻想」について書かれています。

<『社会は絶えず夢を見ている』(朝日出版)から>

2 エコロジストの幻想 - 信仰対象としての「自然」

 ・・・・・・・私たちは、「自然」を自分たちが選んだものでもないし、創ったものでもなく、ただ私たちに与えられたものである、と見なしています。そして、その「自然」の破壊、たとえばオゾンホールや温暖化による生態系の破壊こそ、リスク社会に待ちうけている最大のリスクであると考えられています。

 しかし、よく考え直してみましょう。「自然」、とりわけエコロジストや環境主義者によって称揚される「自然」こそ、人間の幻想、無意識の非措定的(ひそていてき)な構成の産物---つまり無意識のうちに、自覚的に対象化されることなく創られたもの---としての幻想ではないでしょうか。

それ自体として(即自的に、本質的に)均衡のとれた、調和的な再生産の領域とされる「自然」、人間の介入だけがその調和を乱すとされている「自然」というものは、客観的に存在しているわけではなく、すでに、無意識的に作り上げられている幻想であり、主観的構成の産物にほかなりません。

 今日、この惑星の進化や自然史について知られている事実からすると、地球の環境は、有機的な調和のとれた「自然」どころではなかった。そこには、現在恐れられている程度の温暖化とは比較にならないほどの環境の激変がありました。私たちが眼前にしているものとは比べものにならないほどの徹底的な生物の消滅(大量絶滅)もあったのです。それらはしかも、いずれも、偶発的な要因---惑星の衝突や進化の暴走---によって惹き起こされているものです。

それは、私たちが無意識のうちに「自然 に投影している、調和的な再生産の場どころではないのです。人間がその野生の姿の中で、まどろんでいられるような場所でもない。とするならば、エコロジストたちが称揚している「自然」とは、それ自体、幻想なのです。

 この幻想であるような「自然」を、私たちは、生の自然として、つまり客体として実在する与件として受け入れています。ということは、「自然」の存在それ自体が、一種の信仰の対象になっているということです。

今述べたように、選択したということについての自覚や反省的意識なしにただ受け入れるということは、信仰の対象になっているということだからです。そのことは、与件のように見えている「自然」を肯定的に承認する第三者の審級を受け入れているのと同じことです。

調和的な「自然」を、自然の本来の姿として受け入れるということは、そのような「自然」を創造したり、与えたりした「神」を信じているのと同じことです。信仰しているという自覚とは関係なしに、「自然」を無条件に受け入れれは、それば、特定の内容をもった第三者の審級を受け入れ、信じているということなのです。

<以上同書p228~p230から>

こういう視点の考え方もある。

※ 第三者の審級は下記のサイトを参照

第三者の審級・雨ニモマケズ
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/1509c7b69cd6db8123aca03978518eeb

いずれにしても自分の責任においてしっかり考えたいものです。


ある少女の選択~18歳「いのち」のメール~

2011年07月31日 | 科学

 今朝は「いのち」ということについてアップしようと思います。私たちは身体を持ちいのちがあって生きています。

 生かされている一方でそのいのちはあるとき自分の手元にあることに気がつきます。

 そして動揺の中で自分のいのちを絶つ人、行きたいのだけれど生きられない人、そんな「いのち」の話です。

 昨年の暮にNHKクローズアップ現代で、

 ある少女の選択 ~“延命”生と死のはざまで~

という番組が放送され、本年7月22日に

 ヒューマンドキュメンタリーある少女の選択~18歳“いのち”のメール~

という番組が放送されました。

NHKクローズアップ現代の番組解説には次のように書かれています。

「腎臓の「人工透析」30万人。口ではなくチューブで胃から栄養をとる「胃ろう(経管栄養)」40万人。そして、人工呼吸器の使用者3万人。「延命治療」の発達で、重い病気や障害があっても、生きられる命が増えている。しかしその一方、「延命治療」は必ずしも患者の「生」を豊かなものにしていないのではないかという疑問や葛藤が、患者や家族・医師たちの間に広がりつつある。田嶋華子さん(享年18)は、8歳で心臓移植。さらに15歳で人工呼吸器を装着し、声も失った。『これ以上の「延命治療」は受けたくない』と家族と葛藤を繰り返した華子さん。自宅療養を選び、「人工透析」を拒否して、9月、肺炎をこじらせて亡くなった。華子さんの闘病を1年にわたって記録。「延命」とは何か。「生きる」こととは何か。問いを繰り返しながら亡くなった華子さんと、その葛藤を見つめた家族・医師たちを通じて、医療の進歩が投げかける問いと向き合いたい。」

NHKクローズアップ現代ある少女の選択
 ~“延命”生と死のはざまで~
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2977


透析治療を受ければさらに何年間は父母のもとで生きられたでしょうが彼女はそうしませんでした。

 父の透析治療を受けたらという言葉に、耳を傾けることなく自分の生きる道を選択・・・・今、安易に「耳を傾けなかった」という言葉をつけましたが、これは耳を傾けたからこそ、その選択も彼女の生きるという選択の内だったように思えます。

 語りつくせないことを語ろうとするから・・・・。

考えさせられる番組というよりも番組を離れて、これほど「生きる」ということについて考えさせられる番組はありません。

 「延命」という言葉にこの番組をおくと少々、視点がずれるように思います。延命とは「ためを思う」医療行為には違いはないのですが、

 享受されるべき主人公は誰なのか、

 そこにある命の延長は主人公にとってどういうものなのか、

家族のために生きなさい、他人がそのようにとやかく言える次元にない、というのが一番の思考結果のように思います。

 生まれ変わりの輪廻転生もあるし、神や天使の住む天国もあるし、極楽浄土もある。

 この世にあっては花になり、風になりその存在を伝えることもある。

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死は怖くありませんか? こころがあるからこわくないのです。

命は長さではないと思うのよ。どう生きて行くかが問題だと思う。

 大学で心理学を教えてきた野口明子さんとの間で交わされたメールの言葉、野口さんは7歳の子を亡くしています。命について心理学で語ろうという内容ではありません。

「生きる」ということについて多くを教えられ・・・そこには学問も宗教もありません。

 野口さんは娘さんが育てていた朝顔から種を取り、32年間絶やさず花を咲かせているそうです。



 娘さんお命日頃に必ず咲く朝顔、そこには微笑む朝顔の花がありました。

 こころはつながっている。

野口さんと野口さんと7歳で死んだ娘さんとの関係に、華子さんはこの言葉を残しています。

 父親の田嶋喜八郎は華子さんに透析を希望します。華子さんと一日も長く一緒にいたいから・・・・。

 主治医の前田浩利先生を介して、華子さんは、

 これからも私らしく生きたいの・・・・

と答え、前田先生が、

 生きたいんだね
 でも華ちゃんらしく生きたいんだね?

と尋ねると小さくうなずきました。

 番組では、野口さんが最後に華子さんから教えられたことについて次のように語り、華子さんメールでの言葉が紹介されました。

【野口明子】
 華子さんあなたを見ていると、こんなにも体と精神が別々に働くことがあるのだなあ~と驚いています。

 だってあなたの精神活動は健康な肉体をもっている人よりもはるかに活発に毅然として凛として働いているのですもの。

 頑張るとか頑張らない、諦めたとか諦めないを超えたないもの。ただ華子さんらしく生きるということが、ピッタリなのですね。

 大きな自然の流れの中に、身をまけせるということなのでしょうね。

【田嶋華子】

 野口先生、神様が私にいろいろのな病気を与えたことは、恨んだりしてないよ。

 与えてくれたから、たくさんのいい人たちと出逢えたもの。

 先生は私に「頑張れ」とは言わなかった。

 「フワッと乗りこえましょうね~」、と言ってくれました。

 こころがつながっているから、大丈夫なのですよね。

 きょうも、あしたも最後まで、フワッと楽しくね。

<以上>

こころのつながり、生きるということ、身体と精神・・・

生と死の間にある深淵なる命の営み。

漂うようにフワッと生きる。

大きく深呼吸する。これは誰にでも当りまえにできる。それが今あることの悦びなのかも知れません。

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 今朝のEテレ「こころの時代」は、昨年お5月2日に放送された、

こころの時代・「いのちとの出遇い」・藤田徹文[2010年05月02日 | 仏教]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/43957bce622f31b7541e6029bb685a35

でした。今朝は上記の田嶋華子さん18歳の「いのち」のとらえ方と浄土真宗の藤田徹文住職の話される「いのち」に出会うことができました。


LL型遺伝子・自由・偶然・必然

2011年07月14日 | 科学

 精神疾患が追加され、最近5大疾病と言われるようになり、現代社会においては大きな問題となっています。

 その真意は不明ですが、「ため息を1000回繰り返すとうつ病になる」という話を仲間から聞きました。根拠はわかりませんが考えてみればそうなのかも知れないと、納得できる話のように思われます。

 かつては交通事故で年間1万人死亡するという時代もありましたが今は減少の道をたどる一方で年間3万人もの人が自殺をする時代になっています。

昨夜の日テレ「ザ!世界仰天ニュース」というテレビ番組を見ていると、

>DNAスペシャル!前向き遺伝子のナゾ▽ママが顔面大やけど…秘密の遺伝子で笑顔復活<

という、精神的なプレッシャー・ストレスに強い遺伝子の話が放送されていました。

 23対ある染色体の17番目のセロトニントランスポーター遺伝子が重要な役割をするという内容で、ニュージーランド・オダゴ大学リッチ・ポールトン博士の研究結果が実際にあった話とともに紹介されていました。









 この17番目の遺伝子にはその染色体の組み合わせによってSS型・SL型・LL型の三種類があり、LL型の人はストレスに強く、自分い発生した精神的ストレスを楽観的にとらえ前向きな状態に導く作用があるということでした。

 実際、深夜車で走行中、何ものかに硫酸入りの瓶を投げつけられ、顔を含め全身を火傷した女性が、このLL型の人で、顔面の整形治療が終わらないのに、このままでと治療を断り、「顔よりも自分の内面が重要」という姿に驚きました。

番組とは直接関係ありませんが、この番組を受けて次のように思いました。

 物ごとは考え方により変わる。ニーチェは価値観の転換から悦びを持つことを語っていました。

 しかし、LL型の人はある面、偶然という生誕の中で偶然という染色体の組み合わせでLL型の遺伝子を持ち、さらにある面、その遺伝子を持つことでストレスを回避しているわけで、そしてまた本人からすれば素直な自由意志の発動でしかないわけです。

 自由・偶然・必然この三語が織りなす世界です。

 自由と思われるものが、必然でもあり、偶然でもある。そしてまた必然と思われるものが、自由選択でもあり、それは偶然の産物でもあった。

 世の中は、ある面、この三語が組み合わせを語っているのかも知れません。

 社会学者の大澤真幸先生の語るところを時々話題にしていますが、この先生の自由論のなかにはこの三語の組み合わせが出てきます。

 幸せを呼ぶある教義に偶然に出会う。その教義というものは、ある面必然的な幸せの道を開いてくれるものですが、よくよく考えると自己の自由意志は蚊帳の外に追いやられます。

 この三語をじっくり身の回りに起こる現象に当てはめ思考するとないかが見えてくるかもしれません。

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体をつくる不思議な波・世の中の単純模様を見る・チューリングの方程式

2011年07月09日 | 科学

(イギリスの天才数学者アラン・チューリングの言葉 EテレサイエンスZEROから)

 人間は60兆個の細胞でできているそうです。

 小さな細胞の振舞いを知ることはまだ見たことのない生命の神秘を知ることだ。

ということで、EテレサイエンスZEROで「シリーズ細胞の世界」が放送されていました。

 その第一回が多様な姿へと進化を遂げた生命の秘密を細胞にさぐるという内容でした。

 体はどう作られるのか、結論的には細胞が起こす波がもとで作りだされるということで「体をつくる不思議な波」だといいます。複雑怪奇の世の中も実は単純明快なものかもと思わせる内容で、示唆に富む興味深い番組でした。

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 動物や魚にある模様これはどのようにつくられているのか、という話です。

 模様とは異なる色素をもった細胞の集まりで、いろいろな色つきの細胞を集めたいわゆるモザイク画です。



このモザイク画がどのように描かれるのか、これまでは動物の体には決められた設計図がありそれにしたがって模様は描かれるということになっていました。

 一般的には、色素細胞が設計図に従って配置され模様ができるということです。

 その考えを覆し世界の注目を集めた研究者がおられます。大阪大学大学院生命機能研究科の近藤滋教授です。

 何かを発見する人は、疑問に特別なひらめきを感じるようです。模様のある魚を見て「どう見ても設計図に従って描かれているようには思えない。」単純明快な疑問ですが、凡人は「きれいな模様!」で通り過ぎてしまいます。でも近藤教授は違っていました。

 ゼブラフィッシュという東南アジアの河口域に生息する魚ですが、泥水の中で棲息し、模様のある必要性が感じられない。

 模様にはそれぞれ個体差があり、シマウマを見ると間違いなく個体差があります。人間の指紋と同じで一つとして同じものがありません。

 これ等のことから近藤教授は、動物の模様は設計図の基づくものではなくその場その場で模様をつくり上げるからではないかと推察したわけです。

 自然界には設計図がなくとも秩序立った模様が生まれる現象があります(風紋)。



そのような模様ができる原因を追究するために選んだ魚がタテジマキンチャクダイです。

 もともとは大学で免疫学を研究されていた方で、ボーナスをはたいて自宅に熱帯魚を飼う水槽を購入し研究を始めます。

 そして熱帯魚屋のおばさんに熱帯魚のタテジマキンチャクダイを勧められその縞模様に注目しました。

 タテジマキンチャクダイの模様を見ると一本の模様から日本の模様に枝分かれしている部分があります。ここに注目します。なぜか。

「何か起りそうな気がするではないですか」

という弁、閃きとはそういうものか・・・・。

 近藤教授は一つの予想を立てます。

  模様はファスナーが両方に開いていくように、
 等間隔を保って一本の模様が分かれていくのではないか。

というもので観察から51日に枝分かれした模様が少し右に移動しているように見えたそうです。

 そして161日目、縞は完全に二本に分かれていました。こうして五ヶ月の観察で予想した結果が得られました。



 ここからが重要です。なぜこのような変化が起きるのか?

細胞が風紋の様な等間隔の縞模様を作るのは、例えば

細胞が二種類の物質を出していると仮定します。

 ひとつは組織を活性化させて細胞を活発化させ色を付ける活性化因子。

 この活性化因子は自分自身を合成するよう細胞に働きかけます。そうすると細胞はどんどん活性化され活性化因子を放出します。さらに他の物質を放出するように細胞に働きかけます。

 この物質は活性化因子が作られるのを抑える抑制因子で、これが増えれば活性化因子は減少していきます。



 活性化因子が減少すれば抑制因子も自然に作られなくなり分解して減っていきます。

 その時ある条件が満たされると二つの因子の濃度がバランスがとれると教授は言います。

 ここで重要なのは、活性化因子が回りに広がっていく速度と抑制因子が広がっていく速度に差があるということです。



抑制因子の方が速いということが大事ということですが、これはどういうことかというと、先回りした抑制因子の場所では活性化因子は増えることができません。すると両方がバランスがとれた状態、このような状態が保たれます。

 活性化因子の高い場所で色の色素がつくられ色づくことになります。



 その現象が周辺でも行われ縞模様になるというわけです。

 活性化因子と抑制因子の量が作りだす波形、この波こそ細胞が自分で模様を作りだすメカニズム。

というわけです。

以上のことからタテジマキンチャクダイが成長すると縞模様が増えるのは

1 成長すると縞模様の間隔が広がる。



2 抑制因子の届かない空白の部分ができる。

3 等間隔を保つため活性化因子が入り込み新たな波ができる。

4 その結果、縞が増えていく。

ということで、ここに至るきっかけになったのには、ひとつの論文との出会いがありました。

それは今から60年前のイギリスの天才数学者アラン・チューリングの次の主張です。

【チューリングの言葉】

 二つの物質が、ある条件のもとで反応しながら広がるとき、そこに物質の濃淡の波ができその波が生物の形や模様を作りだす。

そして物質の反応の強さや広がる速さを変えるとどんな波ができるのか、チューリングは次の方程式を残しています。

 近藤教授はこの方程式を使って模様を作りだすソフトを作り、これにタテジマキンチャクダイのデーターを入力すると縞がファスナーを広げるように二本に分かれてたのです。

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 近藤教授のこの発見は科学雑誌『nature』にも紹介され、天才数学者チューリングの理論を半世紀たって実証したことになるわけです。



 シミュレーションと実際ということで実際にかけ合わせることができるイワナとヤマメを使い、かけ合わせた場合にどのような模様ができるかを両方の実験結果が紹介されました。





 中間の模様はどのような模様になるか。下の模様グラフは活性化因子と抑制因子の速度を少しずつ変化させたグラフです。

左に白い斑点、右に黒い斑点ができています。



そして中間はご覧のとおりの模様となっています。

 そして実際にかけ合わせたもの模様はどうなるかというと、次のように同じ模様になるわけです。

 実にすごいというか、不思議というか、単純というか・・・・波の不思議を知ることができました。

 番組ではさらに、この方程式による臓器の生成として肺の複雑な組織が同じように単純な出来事によることが紹介されたいました。

 疑問を持つ、問いを持つ生き方。

 活性化因子と抑制因子のバランスが作りだす自然現象の中にある波、単純な原理。

非情に示唆に富んだものがあります。

 形というものは活性と抑制のバランス、細胞にあるこのような原理的なもの、チューリングの言葉、

<二つの物質が、ある条件のもとで反応しながら広がるとき、そこに物質の濃淡の波ができその波が生物の形や模様を作りだす。>

 世の中は相似形の連続です。複雑に見える世の中、ひょっとすると単純明快なのかも知れません。想像力と発想。アンテナを建て、しっかりしたものに出会い、自分の力で考えてみることが大事に思います。

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