10月14日 はれ 32℃
バクニン省(ハノイの北東約30k)のバクニン博物館で展示されている、日越国交樹立40周年の式典で鳴らされた鐘のことを、平和の鐘とよんでいる。
この鐘は、1977年、銀座の古美術店で見つかったもので、高さ1メートルほどのおおきさ。
この鐘は、1828年にバクニン省の五戸寺でつくられた。
山賊によって寺から奪われた鐘の代のかわりに、住民約300人が青銅銭をもちよって作ったのがこの鐘と鐘に記されている。
なぜその鐘が日本で見つかったかというと、進駐していた日本軍が持ち帰っていたから。
「それならば返さねば」ということで、日本で返還運動がおこり、1978年に返還されたが、五戸寺はフランスとの戦争で焼失していたので、近くのお寺に運ばれた。
その後、鐘の行方が再びわからなくなり探しまわった結果、2002年バクニン省の博物館の倉庫で見つけることができた。
返還(1978年)直後のベトナムは、中国やカンボジアとの紛争が続いていた時代で、国が混乱していたので、盗難をさけて保管されていたということ。
返還からおよそ30年たって、やっと博物館に展示されることになったという歴史をもっている。
今回の日越国交樹立40周年の式典には、日本から返還運動にかかわったお寺の住職さんのお孫さんの住職もお見えになり、
五戸寺の住職(尼さん)と一緒にお経を読んだ。
この尼さん、鐘を見たとき涙ぐんでいたが、読経中でも携帯が鳴ると話だすし、日本のお坊さんの読経の最中には携帯で写真を撮っているという、日本の常識では考えられないお坊さんでいろいろ忙しく、みているほうは面白かった。
式典が終わって、五戸寺も訪問したが このお寺には鐘の写真が飾られているだけで寂しい。
ベトナム語がわかる人によると、式典の最中にも鐘を返してほしいとずっといっていたので、博物館の館長は逃げ出してしまったそうだ。
お寺と博物館、お互い立場の違いはあるが、
およそ200年もの間に続いた何度もの大きな戦争を潜り抜けて、なお存在しているということへの思いは一緒。
こんどこそ、この地でずっと鐘を鳴らしてほしいと願っている。