鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

笛吹川流域の道祖神祭り その7

2018-02-13 08:12:14 | Weblog

 

  徳和(とくわ)の次に目指したのは塩平(しおだいら)でした。

 室伏のおじいちゃんが教えてくれた2番目の場所。

 それにしてもあのおじいちゃんは、私の問いになぜ「徳和」「塩平」「塩山の赤尾」と即答できたのだろう。

 徳和も塩平も同じ室伏の近くではあるけれどもいずれもかなり山奥。

 同じ山梨市であるから市の広報紙か何かで近辺の道祖神祭の情報を得ているのでしょうか。

 徳和から国道140号に出て恵林寺方面へと戻り、窪平で右折。

 途中、道の右手斜面にいくつかの古そうな石造物と案内板を見掛けたので車を停めました。

 その案内板には「腹切地蔵尊」とあり、この地蔵は小田野山の南麓にあって大字(おおあざ)西保中に通ずる県道西保線にそって祀られている石仏であり、土地の人は「腹切地蔵さん」と呼んでいるという。

 甲斐源氏の一族で鎌倉時代初期にこの地を領した安田義定の生害の地と言われ、腹切地蔵尊のほか六地蔵尊が並び、安田義定一族を供養するために祀られたものであるとのこと。

 興味深かったのは、車で走っているこの県道西保線が「旧秩父裏街道」(案内板に記載あり)であったということ。

 甲州盆地から秩父地方へと山を越えて抜ける裏街道であったのです。

 国道140号は秩父街道の本街道に沿って延びているのですが、この裏街道はおそらく窪平より秩父本街道から分岐しているのでしょう。

 そこからしばらく走っていくと、左手やや入ったところに赤白青の大きな飾りが広がる「御山飾り」が見えたので、道を左折して川に架かる橋を渡りその「御山飾り」の近くへ車を停めました。

 車を停めたのは神明神社の社務所前。

 その神明神社の参道の右手の広場の隅に、その「御山飾り」は立っていました。

 その「御山飾り」の右隣には藁束で作られた大きな「道祖神御仮屋」がありました。

 近寄ってみると、その藁束で作られた御仮屋の真ん中正面からはやはり藁で作られ細縄で固く巻かれた太い「陽根」が突き出ており、その根元には藁と細縄で作られた丸い玉が二つぶら下がっています。

 「陽根」の先端にはオレンジ色のみかんが一個取り付けられていて、それが茶褐色の藁の中で鮮やかなアクセントになっています。

 「陽根」の根元に垂れる二つの玉の下には穴があるのですが、それには4枚の白い四手(しで)が垂れ下がっていて穴を覆っています。

 つまり穴の入口には結界としての「注連縄」(しめなわ)が垂れ下がっているのです。

 穴の中、すなわち藁束で作られた御仮屋の中には丸石道祖神が鎮座しているはず。

 この神明神社横の広場の道祖神御仮屋は、今まで見てきた御仮屋が杉葉で作られていたのとは違って藁束で作られています。

 また突き出た「陽根」も藁で作られており、その根元には2つの睾丸(こうがん=きんたま)までしっかりと取り付けられています。

 これも今までの御仮屋にはなかったもの。

 「陽根」の先端真ん中にみかんが付けられているのも私はここで初めて見ました。

 真横や斜め前から見るとかなり迫力があります。

 「御山飾り」を見上げると、金属の白い支柱の先に竹の柱が取り付けられていて、その竹竿に笹竹が密集して結わえ付けられており、その笹竹には多数の紙製の飾りが取り付けられています。

 その密集した笹竹の下には大きな輪があり、その下の受け台から7本ほどの柱(竹柱か)が丸い輪に向かって延びていて、その先端にもそれぞれ紙製の飾りが付けられています。

 特徴的なのはその受け台から輪を跨いで7本の枝(竹製の枝か)がまるで枝垂れ柳のように垂れ下がっていて、それが赤白青の紙飾りで覆われている(枝全体に紙飾りが結わえ付けられている)こと。

 よく見ると頂きの笹竹からも同様の枝が1本垂れ下がっています。

 これが冬の澄み切った青空を背景に風になびいている様はなかなか風情があるものでした。

 広場には竹の丸太などを焼いて黒くなったところがあり、その近くには木の枝が青いビニール紐でまとめられていることから、このあたりが「どんど焼き」が行われる場所であるようです。

 ここからは「御山飾り」や「御仮屋」の向こうに赤い欄干のある橋を通して、県道西保線(旧秩父裏街道)とその道沿いにある集落が見えました。

 「御仮屋」は四角くて大きく、まるで藁葺屋根の人家のように見えました。

 ただそこから突き出ている「陽根」があることによって、まるで大きな甲羅を持った大亀のようにも見え、華やかな「御山飾り」とともになかなか印象深いものでした。

 

 続く



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