うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

むすびつき

2018年10月12日 | 畠中恵
 2018年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第17弾。

昔合った人
ひと月半
むすびつき
くわれる
こわいものなし 
終       計6編の短編連作

昔合った人
 上野広徳寺の高僧・寛朝からの依頼で、出掛けた一太郎一行は、そこで、蒼く丸い玉である蒼玉を見せられた。
 どうやら付喪神になり掛けているらしく、「若」とだけ呟くらしく、寛朝は、長崎屋の若旦那である一太郎に心当たりは無いかと問いたかったのだ。
 だが、一太郎は蒼玉を見るのも初めてで、皆目見当も付かない、そんな中、貧乏神の金次が、遠い昔の記憶の欠片に思い当たると、回想する。
 
ひと月半
 一太郎と、仁吉、佐助が箱根に湯治に出掛けてひと月半。留守居の妖たちが首を長くして一太郎の帰りを待っている折り、死神を名乗る3人の男が現れた。
 どうにも胡散臭い自称死神たちを選別するため、催された「化け合戦」。
 見物の野次馬たちの中に、新たに2人の死神を見極めた妖たちは、死神の目的を探り出そうとするのだった。

むすびつき
 一太郎の前世と己は、旧知であると信じたい鈴彦姫は、自身の鈴が納められている五社神社の神主・星ノ倉宮司、その人ではなかったかと言い出す。
 そして、その証しを探すべく、屏風のぞき、おしろ、鳴家と向かったのだった。
 そこで、今現在の五社神社が窮地に陥っていることと、星ノ倉宮司の不可思議な死。同時に消え失せた金の謎を知る。子細を把握した一太郎は謎解きに取りかかった。

くわれる
 長崎屋の離れに一太郎を訪ったのは、人を喰らうという悪鬼のもみじと青刃だった。鬼女のもみじ曰く、一太郎とは三百年前に将来を誓い合った仲だと。どうやらまた、一太郎の前世の知り合いらしい。その辺りの事情も納得出来ないちに、妖のもみじは、同時に訪っていた一太郎の許嫁・於りんと共に、攫われてしまう。
 二人の身柄との引き換えは、栄吉が考案した辛あられと、北国の雪屋が売り出している甘味噌饅頭を参考にした甘味噌団子のレシピと、栄吉が菓子職人を辞めることだった。
 この不可思議な取引に、一太郎は二人の身柄探しと同時に犯人がもみじに喰われないためにと、謎解きに掛る。

こわいものなし
 猫又のおしろは、同じく猫又のだんごからの頼みで、病いに苦しむ、飼い主の笹女のため、長崎屋で薬を頂けないかといった申し出を受けた。
 その笹女の飼い猫・だんごが、猫又であると知った、長屋の隣に住う夕助までもが、長崎屋を訪い、輪廻転生を説明して欲しいと強請る。
 それは上野広徳寺の高僧・寛朝が適任だと一太郎と妖たちは広徳寺へと夕助を伴うが、折しも同寺は、神職・昭安と、その神宮寺の弘文が諍いの真っ最中。
 大物主の神までもがその揉め事に介入し、夕助は図らずも、望んでいた転生を繰り返すことに…。
 

 「若旦那がいなくなった」と、泣く小鬼。どうやら、このところ、昔話が続いたせいで、先のことを思うと、若旦那の居ない世の中を想像し、怖くなったらしい。

 あれっ、シリーズ終了か? 書き下ろしの「終」が、そんな締め方なのだ。気になる。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 美春屋栄吉...日本橋菓子屋の嫡男(安野屋で修行中)、一太郎の幼馴染み
 寛朝...上野広徳寺の僧侶
 秋英...上野広徳寺の僧侶、寛朝の弟子
 黒羽坊...元小田原の天狗、寿真の弟子
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 於りん 深川材木問屋・中屋の娘・一太郎の許嫁(いいなずけ)
 月岡宮司...五社神社の神主


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