うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

嵐山殺景 ~足引き寺閻魔帳~

2013年01月09日 | 澤田ふじ子
 2003年9月発行

 正義を全うし、強気を挫き弱気を助ける闇の仕事師たち。訳あり僧侶の宗徳率いる足引き寺一派の爽快時代小説第4弾。

第一話 白い牙
第二話 嵐山殺景
第三話 仲蔵の絵
第四話 色がらみ銭の匂い
第五話 盗みの穴
第六話 世間の河 計6編の短編連作

第一話 白い牙
 養女とその連れ合いに店を乗っ取られ、その日の暮らしにも事欠くやきもの問屋・大木屋の隠居・お吉の窮状に、豪が牙を剥く。

第二話 嵐山殺景
 姉小路通りのお堂にひたすら祈る娘・お雪を放っておけなくなったお琳。訳を訊ねると両の親に先立たれ、宛もないと言う。更に、昨今他界した父親・勘助(大工)の死因に疑念を抱く。

第三話 仲蔵の絵
 寺町錦小路の河村座に錦蛇が投げ込まれるなど嫌がらせが続いた。また、そこで下働きをする仲蔵の絵の才能を見出したお琳は、彼を世に出したいと支援するも、嫌がらせの狙いは仲蔵への妬みであることが判明する。

第四話 色がらみ銭の匂い
 ならず者たちに命を狙われた男・蔵人足の仁吉に加勢した豪だったが、自身も瀕死の重傷を負う。看病のかいなく仁吉は命を落とすが、彼の妹が入水自殺していたことが分かり、宗徳たちが深い遺恨を探る中、豪は復讐に走る。

第五話 盗みの穴
 墓所の供え物を漁り、寺社の縁の下で暮らす幼い姉弟・おふさと市松を枡屋に連れ帰ったお貴和。聞けば両の親を殺され、賊から逃れる為に身を隠していると言う。子どもたちの命を救う為、そして親を殺した悪党を退治するため、足引き寺一派は立ち上がる。

第六話 世間の河
 仇討ちの旅に出たが路銀が尽き、大道芸で日銭を稼ごうとしていた中間の弥七と出会った蓮根左仲は、弥七の清々しい心根に惹かれる。そして、仇討ちの空しさを感じる弥七と僅か12歳の幼き主・新十郎に、新たな生き方を進言するのだった。

 善と悪をテーマに正義感を貫く作品が多い筆者の中でも、典型的な正義の作品と言えるだろう。
 設定は「公事宿事件書留帳」シリーズと似通ってもあいるが、扱う事件で違いを現している。そして何よりも、闇を裁くテーマながら爽快感が全編を通じて感じられる。話の中には、悲しい場面も含まれるが。
 特徴的なのは、紀州犬の豪にも人格(犬格)を持たせているところ。
 ひと言で言うなら、ドラマ「必殺」シリーズの殺し屋たちが、損得なしに本来の正義心から動くといった話である。
 「仲蔵の絵」は切ない話であったが、「盗みの穴」、「世間の河」などは明るい締め括りに仕上がっており、わたしは好きです。このシリーズ。
 そして澤田氏の作品を何冊か読ませていただいたが、彼女の博識、そして時代考証には頭が下がる思いである。

主要登場人物
 宗徳(黒田小十郎)...東山知恩院末寺・綾小路地蔵寺住持、元西町奉行所与力・黒田長兵衛の二男、(足引き寺一派)
 蓮根左仲...西町奉行所定町廻り同心、(足引き寺一派)
 豪...宗徳の愛犬(紀州犬)、(足引き寺一派)
 お琳...扇絵師、大垣藩浪人の娘、(足引き寺一派)
 与惣次...羅宇屋、左仲の小者、(足引き寺一派) 
 黒田大十郎...西町奉行所与力、宗徳の実兄
 枡屋喜左衛門...四条旅籠の主
 お貴和...枡屋の養女
 伊兵衛...枡屋の番頭


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