うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

怪談岩渕屋敷~天保妖盗伝~

2012年11月09日 | ほか作家、アンソロジーなど
鳥羽亮

 2006年7月発行

 見世物小屋を隠れ蓑に、見世物の幽霊仕掛けを駆使し、盗人稼業を働く幽霊党の、汚名返上と誇りを掛けた大一番。

第一章 百鬼座
第二章 人斬り佐門
第三章 怨霊屋敷
第四章 陰謀
第五章 拷問
第六章 終演 長編

 天保2年、両国広小路に見世物小屋「百鬼座」の「お岩屋敷」と演じ物名を染めた幟が上がった。呼び込みは威勢が良いが、この一座、てんから見世物で稼ごうなどとは考えてもいない。実は、盗人集団の世をはばかる仮の姿なのである。
 見世物小屋を隠れ蓑に、盗人を生業とする幽霊党。ただし、苦しい台所や身代根こそぎ頂く盗みは行わず、ましてや人を殺傷したりしないのが盗人の意地。
 だが、忍び込んだ旗本・岩淵屋敷では、預かり知らない殺しと五百両上乗せの盗みの容疑を掛けられ、火付け盗賊改めや南北奉行所の探索が厳しくなっていく。
 汚名晴らすべく彦斎たちは行動を起こすが、思いも掛けない結末が待ち構えていた。
 「爽快奇怪」と帯に銘打ってあるだけに、幽霊や盗人といった題材ながらも、爽快感が残る作品である。
 下手人の落ちは、薄らと見えてはいるのだが、それでも、百鬼屋彦斎、磯貝伸三郎、それぞれの探索には真意に迫るものがある。
 百鬼屋彦斎が、果たしてどのように決着を付けるのかが、見所となる。
 また、百鬼屋彦斎、磯貝伸三郎に接点はないながらも、互いに認め合っているなど、細部まで丁寧に描かれている。
 この作品では百鬼屋彦斎の人となりが中心であるが、中々に骨太の魅力的なキャラであり、ほかの手下たちをクローズアップさせても面白いかと思われ、シリーズとして読みたい作品である。続編が描かれていないのが残念。

主要登場人物
 百鬼屋彦斎...両国広小路・見世物小屋・百鬼座座頭 幽霊党・頭目
 河童の嘉助...百鬼座・幽霊党彦斎手下
 柳谷与右衛門(死神)...百鬼座・幽霊党彦斎手下、牢人
 軽身の藤六...百鬼座・幽霊党彦斎手下
 包丁の左吉...百鬼座・幽霊党彦斎手下
 強力安兵衛...百鬼座・幽霊党彦斎手下
 女形達之助...百鬼座・幽霊党彦斎手下
 磯貝伸三郎...北町奉行所隠密廻り同心
 万次(亀万)...岡っ引き(磯貝の手下)
 片倉佐門(人斬り佐門)...無頼牢人



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