うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

いちねんかん

2020年10月24日 | 畠中恵
2020年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第19弾。

いちねんかん
ほうこうにん
おにきたる
ともをえる
帰宅 計5編の短編連作

いちねんかん
 父・長崎屋藤兵衛と母・おたえが、連れ立ち一年ほど、別府温泉に湯治に行くと言う。その間、長崎屋の身代を任されたのは一太郎。この間に、何か新たな商品を売り出そうと考えるのだった。
 だが、先走った番頭・久郎兵衛が、とんでもない失態にて五十両を盗み取られてしまった。一太郎は、これをどう裁くか…。

ほうこうにん
 長崎屋の主人・藤兵衛不在の間、一太郎が寝付かないように側に仕えることを目的に、屏風のぞきと貧乏神の金次がそれぞれ、薬種問屋と廻船問屋の手代として奉公することになった。そんな折、取引のある京の十ノ川屋の手代を名乗る熊助なる男が、高直な紅餅を仕入れにやって来たのだ。だが、金の匂いがしないと、金次が熊助の偽りを見抜き、事は片付いたかに思われたのだが、熊助の方が一枚上手で、長崎屋は翻弄されることとなる。
 
おにきたる
 西国から疫病が流行り出し、江戸の町も脅かされるようになった。その疫病を流行らせていると自称するのは、疫病神と疫鬼。疫病封じの「香蘇散」を売り出す長崎屋にて、疫病を流行らせたのは我なり。勝敗は、一太郎をどちらが殺めるかで決着を付けると言い出した。神を束ねる大黒主命と、災いの神・大禍津日神の力を借りて、疫病神と疫鬼を懲らしめようと。

ともをえる
 「香蘇散」の効果から、大坂の本家薬種屋・椿紀屋の娘婿選びに、江戸・椿紀屋の大元締・吉右衛門から指名されてしまった一太郎。仁吉・佐助抜きで、江戸椿紀屋の別邸に泊り込んでの人選選別となった。候補は、大坂両替・椿紀屋の次男・達蔵、京・紅椿紀屋の次男・次助、同じく京・薬種・椿紀屋の四男・幸四郎である。だが、それぞれに思いもあり、また、事情もあった。
 江戸・椿紀屋に奉公中の京・紅椿紀屋の三男・昌三は、婿がねではないものの、中々の人物であり…。

帰宅
 一年の湯治に出掛けていた藤兵衛とおたえの帰宅も間も無くとなった。店の収支が若干足りなくはあったが、妖たちが小銭で遊ぶこともあるので、気にも留めていなかった一太郎の元に、大店の旦那衆の集まりの話が、日限の親分からもたらされた。
 このところ、大店では小僧や手代が店の銭をくすめ、それを湯屋で知り合った者から伝授されたのだと言う。どうも彼らを手引きに仕立て大店を襲う強盗ではないかと、皆懸念しているのだ。
 その懸念が現実なり、長崎屋に現れた盗賊たち。妖たちはここぞとばかりに力を発揮する。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 おたえ...一太郎の母親 
 長崎屋藤兵衛...一太郎の父親、長崎屋の主
 久郎兵衛…薬種問屋長崎屋の番頭
 忠七…廻船問屋長崎屋の番頭
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 寛朝...上野広徳寺の高僧
 秋英...上野広徳寺の僧侶、寛朝の弟子
 本島亭場久...貘の妖、噺家
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きたきた捕物帖

2020年10月03日 | 宮部みゆき
2020年5月発行

 江戸深川で、下っ端の岡っ引きの見習いだった北一だが、千吉親分の急逝により、岡っ引き見習いを廃業し、千吉親分の本業だった文庫売り(本や小間物を入れる箱を売る商売)で生計を立てているのだが、何故か事件に巻き込まれてしまう、痛快時代ミステリー。

第一話 ふぐと福笑い

第二話 双六神隠し

第三話 だんまり用心棒

第四話 冥土の花嫁 計4本の中編連作

第一話 ふぐと福笑い
 富勘が持ち込んだ、ある商家の「呪いの福笑い」の一件は、出して遊べば必ず祟る。その祟りを治めるためには、誰かがこの福笑いで遊んで、一発で正しい場所に目鼻口を置かねばならないというのだ。


第二話 双六神隠し
 手習所に通う仲良しの3人の男の子が、奇妙な双六を拾って遊んだ後、神隠しに遭う。その神隠しの真相とは。


第三話 だんまり用心棒
 北一は、地主の屋敷の床下で発見された、白骨の掘り出し作業を頼まれた。次第にその発行へと同情を寄せた北一。遺族探しをする折に、湯屋の釜焚きをしている喜多次という不思議な若者と知り合う。

第四話 冥土の花嫁
 目出度い祝言の日際、前世では、新郎の前妻だったと言う自称生まれ変わりの娘が現れ、大混乱。果ては、殺人事件にまで発展する。

 北一が暮らす富勘長屋は「桜ほうさら」で、主人公の笙之介が住んでいた長屋であり、富勘を始め、長屋の住人たちが登場。「初ものがたり」と登場人物が重なり、「謎の稲荷寿司屋」の正体が本書にて解き明かされる。

 文句なしに面白い。その筆の達者さとストーリに、スルスルと読み進み、気が付けば、次回作が待たれるほどに。
 登場人物の個性も際立つ。
 
主要登場人物
 北一...亡くなった岡っ引き・千吉親分の本業だった文庫売り
 喜多次...長命湯の釜焚き
 松葉...千吉親分の女房
 青海新兵衛...椿山家別邸、通称「欅屋敷」の用人 
 勘右衛門...深川一帯の貸家や長屋の差配人で通称「富勘」
 千吉...岡っ引き。河豚中毒で亡くなる。北一の親分
 沢井蓮太郎...本所深川方上町周り同心
 沢井蓮十郎...蓮太郎の父。千吉に十手を預けた元同心
 万作...千吉の一の子分で本業の「文庫屋」を継ぐ
 おたま...万作の女房
 おみつ... 松葉付きの女中
 瀬戸殿...椿山家別邸の女中頭
 太一...父・寅蔵の仕事である魚の棒手振りを手伝う
 お秀...仕立ての内職をしながら、娘のおかよを育てている
 おしか...青物売りをしている鹿蔵の妻。漬物をつくって売る
 辰吉...天道干し。母・おたつと二人暮らし

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黒武御神火御殿~三島屋変調百物語六之続~

2020年08月12日 | 宮部みゆき
2019年12月発行

 江戸は神田の袋物屋・三島屋で続く、一風変わった百物語。
 これまで聞き手を務めてきた三島屋主人・伊兵衛の姪のおちかが、神田多町・貸本屋の瓢箪堂勘一に嫁ぎ、聞き手は伊兵衛の二男・富次郎へと受け継がれた。
 神田袋物屋三島屋の黒白の間で、明かされる不思議な話。「三島屋変調百物語事始」の第6弾。

第一話 泣きぼくろ
第二話 姑の墓
第三話 同行二人
第四話 黒武御神火御殿 計3編の短編・1編の長編連作

第一話 泣きぼくろ
 富次郎と再会した幼馴染が語り始める一家離散の恐ろしい運命。

第二話 姑の墓
 一家の女たちが決してに登ってはならぬ「絶景の丘」。その訳とは…。

第三話 同行二人
 流行病で妻子を失った、走り飛脚が道中巡り合った怪異。

第四話 黒武御神火御殿
 異形の屋敷に迷い込んだ、縁も所縁もない6名を待つ運命恐ろしい運命。

 兎に角面白い。読み応えあり。もう目が話せなくなり、一気に読み終えた。
 内容もさながら、聞き手が富次郎に変わったことで、返ってしっくりと馴染んだ気もする。宮部みゆきさんって天才だね。

主要登場人物
 三島屋富次郎...伊兵衛、お民の二男
 三島屋伊兵衛...神田三島町袋物屋の主
 お民...伊兵衛の女房
 伊一郎...伊兵衛、お民の長男(通油町小間物商・菱屋で修行中)
 おしま...三島屋の女中
 新太...三島屋の丁稚
 お勝...三島屋の女中
 おちか...川崎宿旅籠丸千の娘、伊兵衛の姪
 瓢箪堂勘一…神田多町・貸本屋の長男、おちかの夫


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猫君

2020年02月16日 | 畠中恵
2020年1月発行

猫君
猫宿の長(おさ)
猫宿始まる
あわれみの令
合戦の一
合戦の二 長編連作

 花のお江戸に隠された、猫又の陣地六つ。花陣・姫陣・祭陣・武陣・黄金陣・学陣。各陣の新米猫又は、将軍様の庇護のもと、江戸城内の学び舎「猫宿」で修業に励む。猫宿の長は、魔王と呼ばれたあの戦国武将。みかんたちの力を試そうと様々な試練が課せられて―。お江戸猫又ファンタジー。

主要登場人物
 みかん(明楽)…祭陣。新米猫又
 ぽん太…祭陣。新米猫又
 白花…花陣。新米猫又
 鞠姫…姫陣。新米猫又
 猫宿の長(織田信長)…六陣を御する猫又界のトップ
 和楽(明智光秀)…祭陣。猫術の師
 夢花…花陣。化け学の師
 吉也…黄金陣。猫又史の師
 加久楽…祭陣。みかんの兄者
 由利姫…姫陣。鞠姫の姉者
 我治楽…祭陣の占い師
 猫君…猫又界の英雄。謎の存在
 徳川家斉…第11代将軍

 これぞ、お江戸ファンタジーである。目の付け所も流石だ。実存した人物を絡め進行するポップな物語で、読み易い。
 ただ、畠中さんにしては、キャラの服飾や表情設定が希薄だったかなあ。相手が猫であるからか? 事件を織り込みすぎたのか? 「あわれみの令」、「合戦」と進むに連れ、個人差はあるので、あくまでも自分の意見であるが、面白味が薄れていった感が否めない。
 加えてこれはどうでも良いのだが、この新米猫たち、余り講義を受けていないようだが、実戦優先? 

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わが殿

2020年01月15日 | 畠中恵
2019年11月発行

 幕末の越前大野藩。土井家七代目藩主・利忠は、様々な藩政改革を断行し、多額の借金を抱える藩財政を立て直そうとする。その執行役として白羽の矢が立てられたのが、わずか八十石の内山家の長男・七郎右衛門。奇抜な作で大野藩の再生に奔走する。


序  殿十五歳  七郎右衛門十九歳
一章 殿二十七歳 七郎右衛門三十一歳
二章 殿二十八歳 七郎右衛門三十二歳
三章 殿三十二歳 七郎右衛門三十六歳
四章 殿三十三歳 七郎右衛門三十七歳
五章 殿三十六歳 七郎右衛門四十歳


六章 殿三十九歳 七郎右衛門四十三歳
七章 殿四十四歳 七郎右衛門四十八歳
八章 殿四十五歳 七郎右衛門四十九歳
九章 殿四十六歳 七郎右衛門五十歳
十章 殿五十歳  七郎右衛門五十四歳
終章 殿五十歳  七郎右衛門五十四歳 上下巻 長編

 幕末期、ほとんどの藩が財政赤字に喘ぐ中、莫大な借財を抱えた大野藩も例外ではなかった。
 時の藩主・土井利忠は、様々な藩政改革を断行し、藩財政を立て直そうとする。
 その執行役として白羽の矢が立てられたのが、若干八十石の内山家の長男である七郎右衛門良休。
 銅山の開拓や、特産品の強化などで、借財を返し終えた七郎右衛門は、更には、上方に藩の店を出店。果ては、船を買い取り、北方との取引で利益を上げることに成功すれど、実弟・隆佐と藩主・利忠による藩校創立やら、蝦夷開拓やらと次々と入り用な金子は増えるばかり。
 七郎右衛門は奔走するのだった。
 
 著者初の実存する人物をテーマに書き上げた、珠玉の一冊。
 これはかなり面白く、興味深い作品だった。文自体もこれまでの作品とは一線を画し、著者にとっての新境地とも言えるだろう。
 ラスト一文の素晴らしさは、著者作の「こころげそう」を彷彿とさせる。この方の物語の締め方は決まる! と、毎度ながら感嘆する。
 是非とも、読むべき作品である。


主要登場時運物
 土井利忠...土井家七代・大野藩主。藩の財政を立て直すべく、藩政改革を断行。
 内山七郎右衛門...大野藩士。利忠に登用され、奇抜なアイディアで財政改革の実務を担う。後の家老。
 内山隆佐...七郎右衛門の次弟。文武ともに優れ、若い頃から才能を評価され、登用されるが、金勘定は苦手。
 内山介輔...二十歳離れた七郎右衛門の末弟。武芸に優れたしっかり者。
 中村重助...利忠の覚えめでたい大野藩重臣(家老)。

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てんげんつう

2019年09月26日 | 畠中恵
2019年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第18弾。

てんぐさらい
たたりづき
恋の闇
てんげんつう
くりかえし 計5編の短編連作

てんぐさらい
 寝付いていた一太郎の元に、国中から良薬が届けられる中、西の天狗姫・花風が、神薬を3粒携えやって来た。
 なんでも、一太郎の祖母(ぎん)で大妖・皮衣と、江戸の始まり頃に神が落とした7粒の神薬を多く拾う賭けをしたらしい。
 既に3粒集めた天狗姫・花風は、己が勝ったら仁吉と所帯を持つことを条件にしていたと言う。すなわち押し掛け花嫁だった。
 一方、一太郎の許嫁である於りんが、中屋共々神隠しにあったかの如く消えていた。
 一太郎、仁吉、佐助は、この二つの謎解きに奔走する。

たたりづき
 一太郎の祖母(ぎん)で大妖・皮衣と大喧嘩をした仙狐の子の仙太が、ぎんへの逆恨みから、一太郎の縁故の者を祟ったと言うから、大騒ぎ。
 だが、祟った相手は、ぎんの孫である一太郎の許嫁の於りんの養父、深川材木問屋・中屋の主人の縁戚のその寺の住職の弟子といった、何とも遠い遠い相手。
 だが、放ってはおけない一太郎は、仁吉、佐助始め、妖たちと祟られた主を助けるべく動く出したのだ。
 相手は上野真正寺の東山という若い僧だが、住職の南山は、近頃おかしな風評を立てられ困っていると言う。
 その裏には、東山の生い立ちに秘密があった。東山こそが、火事で行く方知れずとなった上野の仏具屋・上川屋の跡取りであると、主張する、上川屋の暖簾を守り続けた番頭。だが、その財を我が物にしようとする親戚筋の企み…。

恋の闇
 許嫁の於りんの義父である中屋に後妻話があると言う。ただ、気になるのは、その相手が山姥ではあるまいか。と言うこと。
 一方、三春屋の栄吉に、札差の娘との縁組話が舞い込んでいると耳にした一太郎。良縁ではあるのだが、栄吉の身上に大分違いがあり、見目形だかりではなく、実家の三春屋も大店のような話になっていた。
 縁組話が重なり目出度いことではあるが、いずれも手放しには喜べないおかしな尾ひれが付いて回る。
 一太郎が、早々事情を探ると、どうも仲人が金銭欲しさに強引な話をあちこちに持ち込んでいるらしと分かり…。
 果ては、山姥、駆け落ちと、話が繋がって行くのだった。
 
てんげんつう
 「てんげんつう」から雨が降るとの知らせを受け取った一太郎。「てんげんつう」なる者に心当たりはないのだが、その予想は的中。すると、「てんげんつう」本人が長崎屋に現れ、可愛がっていた猫に、お礼にと千里眼を貰ったものの、その能力を持て余し、是が非でも普通の人間に戻れるように取り計らって欲しいとこうのだった。しかも、願いを聞き届けなければ、その力で嫌がらせをすると宣う。
 迷惑な一太郎は、上野広徳寺の僧侶・寛朝に託したのだが…。

くりかえし
 深川材木問屋・中屋の於りんからの誘いで、深川の桜見物に出掛けた一太郎と妖たちだが、当日、於りんが桜の毛虫を払おうとして、酷くかぶれた為に、桜見物は中止となってしまった。
 桜の木を覆うように毛虫が這っていると聞いた一太郎は、それを確かめに足を向ける。すると、職人風の男たちが、毛虫を「常世神」だ。と言い、一太郎に向かって、袋いっぱいの毛虫を投げ付けたからたまらない。一太郎はかぶれの為に寝つく羽目に陥った。
 屏風のぞきたちの働きで、男たちは、染井村の染花屋の植木職人であることが分かったのだが、なぜ毛虫を「常世神」などと崇めるのか気になり、貘の妖・場久の力を借り、夢のうちに男たちの動向を探ることに。
 
主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 皮衣(ぎん)...一太郎の祖母、妖
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 禰々子...関東河童の大親分
 美春屋栄吉...日本橋菓子屋の嫡男(安野屋で修行中)、一太郎の幼馴染み
 寛朝...上野広徳寺の高僧
 秋英...上野広徳寺の僧侶、寛朝の弟子
 南山...上野真正寺の住職
 東山…上野真正寺の僧侶
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 於りん 深川材木問屋・中屋の娘・一太郎の許嫁(いいなずけ)
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つくもがみ笑います

2019年08月11日 | 畠中恵
2019年1月10日発行

付喪神となり、話したり動き出したりする古道具たちと共に暮らす、古道具屋兼損料屋の出雲屋のちょっぴり不思議なファンタジー小説「つくもがみ貸します」の第3弾。

第一話 つくもがみ戦います
第二話 二百年前
第三話 悪の親玉
第四話 見つかった
第五話 つくもがみ笑います 計5編の短編連作

 見知らぬ男たちに拐かされた出雲屋のつくもがみたち。そこで、久徳屋のつくもがみと知り合いとなった。その主人は、十夜を「兄さん」と呼ぶ不思議な若者・春夜。
 出雲屋のつくもがみたちは、「大江戸屏風」に迷い込み、二百年前にタイムスリップした理、旗本屋敷の幽霊退治に駆り出されたりと、大忙し。

 新たなキャラクターを迎え、面白さ倍増。今後の展開に期待大の同シリーズ。早くも次回作に期待を寄せている。

主要登場人物
 十夜(とおや)...清次・お紅の養子
 出雲屋清次...深川・古道具屋兼損料屋の主
 お紅...清次の女房
 そう六...絵双六の付喪神
 羽子・無患子...羽子板の胡鬼
 野鉄...蝙蝠の根付けの付喪神
 月見夜...掛け軸の付喪神
 うさぎ...櫛の付喪神
 猫神...猫の根付けの付喪神
 利休鼠...鼠の根付けの付喪神
 五位...煙管の付喪神
 黄君...琥珀の帯留の付喪神
 お姫...姫様人形の付喪神
 唐草...金唐革の紙入れの付喪神
 青海波...守袋の付喪神
 悪徳屋(久徳屋阿喜夜)...両国・口入屋の主人
 春夜…悪徳屋の養子
 安真刀…脇差の付喪神
 加羅刀…大刀の付喪神
 文字茶…茶碗の付喪神
 青馬…陶器の付喪神
 蜂屋(篠崎)勝三郎…旗本
 山白伊勢守貞勝…四千石の旗本
 市助...小間物屋・すおう屋の三男、十夜の幼馴染み
 こゆり...鶴屋の長女、十夜の幼馴染み
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かわたれどき

2019年04月11日 | 畠中恵
2019年2月発行

 お気楽な、名主の跡取り麻之助と、家督を継いで名主となった清十郎。そして八丁堀見習同心の吉五郎。3人の悪友たちが繰り広げる人情物語「まんまこと」シリーズ第7弾。

きみならずして
まちがい探し
麻之助が捕まった
はたらきもの
娘四人
かわたれどき 計6編の短編連作

きみならずして
 麻之助の元に、神田の塗り物問屋・楓屋を名乗るおりょうという娘が訪ないを入れた。その用件は、この度の縁組の下見だと言う。
 寝耳に水の麻之助だったが、どうやら、お由有の実父・札差の大倉屋、吉五郎の養父・北町奉行所同心の相馬小十郎、神田の高利貸し・丸三らが、競って麻之助の縁組をまとめようとしているらしい。
 麻之助は、誰がおりょうとの話を進めているのかを調べるうちに、「おりょうと縁のあった相手は皆不幸に見舞われる」といった剣呑な噂を耳にするのだった。

まちがい探し
 地本問屋・喜楽屋から、金魚の絵を持ち込んだ男を捜し出すように頼まれた麻之助。町名主の仕事として引き受けるが、喜楽屋の手代・熊助は、自分こそがその絵師だと、見え見えの嘘を付き…。
 探索を始めた麻之助は、料理屋・花梅屋に辿り着き、そこで、遠縁に当たる呉服太物問屋・笹川屋の娘・お珠、そのお珠と何やら揉めていた貸本屋の竹五郎に出会う。
 そして、熊助と竹五郎に絞られた絵師探しは、思わぬ人物を炙り出していくのだった。

麻之助が捕まった
 神田で、地代賃料業を営む五国屋夫婦から、昔、泣く泣く手放した息子の為吉の行方を探して欲しいと、頼まれた麻之助。程なく品川の米屋・白川屋に奉公する為吉は見付かったのだが、その養父母は既にみまかり、実子か否か定かでないと、五国屋の腰は引けている。
 為吉が実子である証し探しに、花梅屋のお雪が一計を投じ、麻之助、吉五郎、清十郎らは動き出すが、そこに、為吉の義弟(養家の実子)の幸太郎が、とんだ災いを招いており、ことは為吉や五国屋にまで及び…。

はたらきもの
 天狗や怪異の噂が江戸を飛び交っていた。そんな折り、麻之助、清十郎、吉五郎、両国の顔役・貞吉の四人は、 両国橋近くの料理屋・南北屋へと呼び出されたのだった。彼らを呼び付けたのは、札差の跡取り息子三人(大倉屋冬太郎、中森屋秋太郎、虎白屋春太郎)。
 どうやら総領息子の己よりも、麻之助等の方が重く見られていること立腹の様子。
 そして彼らは、江戸を賑わす剣呑な噂の出所を調べろと、麻之助たちに威圧するのだった。

娘四人
 日本橋界隈を盗賊が荒し回っていた。奉行所は面目を掛け、盗賊を捕獲せねばならない。
 そんな折り、日本橋の両替屋・小加根屋は、長年に渡り、同心・和木坂剛一郎が受持っていたのだが、訳を明確にしないまま、新人の前川へと交代した。
 そのことにより、世間では小加根屋の非ぬ噂が流れ、長女の縁組にも差し障りが出る有様。
 ことを重く見た二女・緒りつが、与力・北山の娘であるお紀乃を通し、北町奉行所同心・相馬家に相談を持ち込んだことから、町屋の問題は町名主の跡取りの麻之助、町名主の清十郎がことの次第を突き止める運びとなり…。
 そこに絡む、男女の思い。果たして…。
 ここに詳しくは記さないが、畠中氏にしては珍しい結びで興味深い。

かわたれどき
 深川の出水に料理屋花梅屋の孫娘・お雪が飲み込まれ、一晩川に浸かりながらも、一命を取り止めた。お雪を救ったのは、両替商矢田屋の婿養子・八三郎。
 妻のお市を探すために船を出したところ、木にしがみついたお雪を救い出したのだった。健康を取り戻したお雪だったが、ポッカリと記憶が抜け落ち、それは何やら怖いものを見たかららしい。
 麻之助は事情を探る為に八三郎を訪うのだった。だが、矢田屋の奉公人と八三郎の関係に違和感を感じ得ない。お市と八三郎の関係にも剣呑な噂があった。

主要登場人物
 高橋麻之助...神田の古町名主宗右衛門の総領息子
 八木清十郎...隣町の町名主
 相馬吉五郎...北町奉行所見習同心
 故・野崎寿ず...麻之助の妻、吉五郎の遠縁
 頼町おこ乃...吉五郎の姪、寿ずの又従姉妹の娘
 貞吉(両国の貞)...両国の顔役、物売り
 大貞....両国の顔役、貞吉の父親 
 丸三...神田の高利貸し
 お虎....丸三の妾
 相馬小十郎...北町奉行所定町廻り同心、吉五郎の義父
 相馬一葉...小十郎の娘、吉五郎の許嫁
 みけ(八木家)、とら(相馬家)、ふに(高橋家)...兄弟猫
 大倉屋....札差、お由有の実父
 大倉屋冬太郎....大倉屋の総領息子
 お浜....料理屋花梅屋の隠居
 お雪....料理屋花梅屋の孫娘
 お紀乃....北町奉行所与力・北山の娘
 緒りつ....日本橋・両替屋小加根屋の二女
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むすびつき

2018年10月12日 | 畠中恵
 2018年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第17弾。

昔合った人
ひと月半
むすびつき
くわれる
こわいものなし 
終       計6編の短編連作

昔合った人
 上野広徳寺の高僧・寛朝からの依頼で、出掛けた一太郎一行は、そこで、蒼く丸い玉である蒼玉を見せられた。
 どうやら付喪神になり掛けているらしく、「若」とだけ呟くらしく、寛朝は、長崎屋の若旦那である一太郎に心当たりは無いかと問いたかったのだ。
 だが、一太郎は蒼玉を見るのも初めてで、皆目見当も付かない、そんな中、貧乏神の金次が、遠い昔の記憶の欠片に思い当たると、回想する。
 
ひと月半
 一太郎と、仁吉、佐助が箱根に湯治に出掛けてひと月半。留守居の妖たちが首を長くして一太郎の帰りを待っている折り、死神を名乗る3人の男が現れた。
 どうにも胡散臭い自称死神たちを選別するため、催された「化け合戦」。
 見物の野次馬たちの中に、新たに2人の死神を見極めた妖たちは、死神の目的を探り出そうとするのだった。

むすびつき
 一太郎の前世と己は、旧知であると信じたい鈴彦姫は、自身の鈴が納められている五社神社の神主・星ノ倉宮司、その人ではなかったかと言い出す。
 そして、その証しを探すべく、屏風のぞき、おしろ、鳴家と向かったのだった。
 そこで、今現在の五社神社が窮地に陥っていることと、星ノ倉宮司の不可思議な死。同時に消え失せた金の謎を知る。子細を把握した一太郎は謎解きに取りかかった。

くわれる
 長崎屋の離れに一太郎を訪ったのは、人を喰らうという悪鬼のもみじと青刃だった。鬼女のもみじ曰く、一太郎とは三百年前に将来を誓い合った仲だと。どうやらまた、一太郎の前世の知り合いらしい。その辺りの事情も納得出来ないちに、妖のもみじは、同時に訪っていた一太郎の許嫁・於りんと共に、攫われてしまう。
 二人の身柄との引き換えは、栄吉が考案した辛あられと、北国の雪屋が売り出している甘味噌饅頭を参考にした甘味噌団子のレシピと、栄吉が菓子職人を辞めることだった。
 この不可思議な取引に、一太郎は二人の身柄探しと同時に犯人がもみじに喰われないためにと、謎解きに掛る。

こわいものなし
 猫又のおしろは、同じく猫又のだんごからの頼みで、病いに苦しむ、飼い主の笹女のため、長崎屋で薬を頂けないかといった申し出を受けた。
 その笹女の飼い猫・だんごが、猫又であると知った、長屋の隣に住う夕助までもが、長崎屋を訪い、輪廻転生を説明して欲しいと強請る。
 それは上野広徳寺の高僧・寛朝が適任だと一太郎と妖たちは広徳寺へと夕助を伴うが、折しも同寺は、神職・昭安と、その神宮寺の弘文が諍いの真っ最中。
 大物主の神までもがその揉め事に介入し、夕助は図らずも、望んでいた転生を繰り返すことに…。
 

 「若旦那がいなくなった」と、泣く小鬼。どうやら、このところ、昔話が続いたせいで、先のことを思うと、若旦那の居ない世の中を想像し、怖くなったらしい。

 あれっ、シリーズ終了か? 書き下ろしの「終」が、そんな締め方なのだ。気になる。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 美春屋栄吉...日本橋菓子屋の嫡男(安野屋で修行中)、一太郎の幼馴染み
 寛朝...上野広徳寺の僧侶
 秋英...上野広徳寺の僧侶、寛朝の弟子
 黒羽坊...元小田原の天狗、寿真の弟子
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 於りん 深川材木問屋・中屋の娘・一太郎の許嫁(いいなずけ)
 月岡宮司...五社神社の神主
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あやかし草紙〜三島屋変調百物語伍之続~

2018年09月28日 | 宮部みゆき
2018年4月発行

 不幸な出来事で傷心のおちかは、叔父の袋物屋の三島屋伊兵衛に引き取られ、悲しい過去や不思議な出来事を体験した人たちの話に耳を傾ける。
 神田袋物屋三島屋の黒白の間で、明かされる不思議な話。「三島屋変調百物語事始」の第5弾。

第一話 開けずの間
第二話 だんまり姫
第三話 面の家
第四話 あやかし草紙
第五話 金目の猫 計5編の短編連作

第一話 開けずの間
 塩断ちが元凶で、「行き逢い神」を呼び込み、家族が費えるといった身も凍る不幸を招いた三好屋の話。

第二話 だんまり姫
 不吉と言われる「もんも声」の老婆の波乱万丈な人生の語り。

第三話 面の家
 お家騒動から殺害されながら、その土地の災いを一身に集める「形代」となろうと城から離れられない、10歳の若殿・一国様の霊。

第四話 あやかし草紙
 複写することにより、己が寿命を知ってしまう曰く付きの草紙。白羽の矢を立てられた、浪人には言われぬ過去があり…。

第五話 金目の猫
 おちかが貸本屋・瓢箪堂勘に嫁ぎ、聞き手が三島屋の二男・富次郎へと引き継がれる。その最初の語り部は、三島屋の長男であり兄の伊一郎。
 兄弟二人が体験した、子供の頃飼っていた金眼の白猫の正体とは。

 五話全ての完成度が高く、シリーズ最高傑作と言っても過言ではない。また、今回で主人公がおちかから富次郎へと交代し、物語は新たなステージへと展開するようだ。
 この富次郎は、聞いた話を画に託し、厄落としをするといった手法を用い、この画が、今後、どのようなポジションを締めるかも興味深い。
 続編が待たれる。
 宮部みゆき氏の才能に、感服。

主要登場人物
 おちか...川崎宿旅籠丸千の娘
 三島屋伊兵衛...神田三島町袋物屋の主、おちかの叔父
 お民...伊兵衛の女房
 富次郎...伊兵衛、お民の二男
 伊一郎...伊兵衛、お民の長男(通油町小間物商・菱屋で修行中)
 おしま...三島屋の女中
 新太...三島屋の丁稚
 お勝...三島屋の女中
 瓢箪堂勘一…神田多町・貸本屋の長男
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新選組 永倉新八外伝

2018年02月07日 | ほか作家、アンソロジーなど
杉村悦郎


 2003年12月発行

 新選組の三番組隊長として、幕末を闘い抜いた永倉新八の曾孫(ひまご)・杉村氏による、維新後の永倉新八像。

序章
第一章 明治二年東京浅草
第二章 北海道松前
第三章 北海道小樽
第四章 東京浅草北清島
第五章 北海道樺戸
第六章 東京断章
第七章 晩年の小樽
終章

 新選組本体と袂を分ってからの永倉の半生を、曾孫である杉村氏が、伝来の資料と、親族からの証言でつづり、永倉の生き方や家族との繋がりを描いている。

 明治維新となり、佐幕派として闘い抜いた剣客たちは、明治の時代をどう生きたのか。新選組の生き残りである永倉新八のその後がしっかりと描かれており、大変興味深く読んだと同時に、何故、永倉は幕府側の人間として、謹慎しなかったのだろうか? といった大いなる疑問も解けた。待っていた一冊である。
 
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この世の春 上下刊

2017年12月18日 | 宮部みゆき
 2017年8月発行

 宮部氏の作家30周年に当たる、21世紀最強のサイコ&ミステリー大作。

上刊
第一章 押込(おしこめ)
第二章 囚人(めしゅうど)
第三章 亡霊
第四章 呪縛
第五章 暗雲
第六章 因果

下刊
第七章 闇と光
第八章 解明
第九章 愛憎
終章 この世の春

 押し込めに合った元藩主を蝕む病い。村を焼き討ちされた青年の復讐。勾引しで消えた子どもたち。正体不明の悪意が怪しい囁きと化して、人々を蝕み…。

 冒頭「孤宿の人」を彷彿とさせる蟄居騒動に巻き込まれる主人公。だが、それは単なる乱心・蟄居といった物語ではなく、それに至までの過去の出来事に込められた怨念や怒りが人々を蝕む様子や、根底に潜む問題の解決など、とにかく絡み合う過去の繋がりに圧倒される。
 完成度は完璧。宮部氏の洞察力や文章力に今更ながら感銘を覚える作品。読み応え有り。

主要登場人物
 各務多紀…元下野北見藩・作事方組頭・数右衛門の娘、嫁ぎ先を離別
 田島半十郎…下野北見藩・検見役・角兵衛の子息、無役、多紀の従兄弟
 北見重輿…下野北見藩・六代藩主、乱心のため隠居
 石野織部…元下野北見藩・江戸家老、五香苑館守
 白田登…重輿の主治医
 伊東成孝…元下野北見藩・御用人頭
 脇坂勝隆…下野北見藩・筆頭家老
 お鈴…五香苑の女中
 おごう…五香苑の女中
 寒吉…五香苑の男衆、元白田家の家人
 五郎助…五香苑の家守

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和菓子を愛した人たち

2017年09月23日 | ほか作家、アンソロジーなど
虎屋文庫著

 2017年6月発行

 誰にでも、思い出に残る和菓子がある。
 歴史上の人物100人と和菓子の繋がりを、現存する文献から解読。天下人、武将、文豪などから市井に生きる人々まで、時代に愛され続けた和菓子とその歴史を綴る。

第1章 文学の名脇役
第2章 あの人の逸話
第3章 心が通う贈り物
第4章 徳川将軍をめぐる人々
第5章 江戸の楽しみ
第6章 旅で出会う
第7章 我、菓子を愛す
第8章 茶人の口福
第9章 思い出は永遠に

 興味津々の和菓子に遭遇。あの人が食した和菓子を食べてみたい。食指も動く、一冊。
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とるとだす

2017年08月03日 | 畠中恵
 2017年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第16弾。

とるとだす
しんのいみ 
ばけねこつき
長崎屋の主が死んだ
ふろうふし 計5編の短編連作

とるとだす
 上野広徳寺にて行われた、薬種屋の集まりで、長崎屋の主・藤兵衛が昏睡状態に陥った。
 見ていた者の話では、何やら薬を飲んだと言う。一太郎と妖たちは、「長崎屋の一大事」に、立ち上がる。
 そこには藤兵衛の、果てしない親心があった。

しんのいみ
 病いに伏せる父・藤兵衛の枕を反転させた、枕返しを探す一太郎は、突如として江戸に現れた、蜃気楼に迷い込んでしまった。
 そこに長く居ると、次第に記憶が失せ、何もかも忘れてしまうと言う。
 一太郎も、鳴家の名を忘れるなどの記憶障害が起こり始めていた。一刻も早く、枕返しを見付けて江戸へと戻らなくては…。

ばけねこつき
 染物屋・小東屋の主が、娘のお糸を伴い、一太郎の元を訪なった。小東屋は唐突に、一太郎とお糸の縁組話を切り出す。何でもお糸には星降るが如く縁組があったが、二度立て続けに断られ、その理由が、「お糸に化け猫が付いている」からだと言う。
 お糸の嫁入り道具は、長崎屋藤兵衛の病いに効く薬だと、一太郎に取引を持ち掛ける始末。
 秘密裏に行われた話し合いにも関わらず、瞬く間に読売に書き立てられるなど、どうにも剣呑な話となっていくのだ。
 一太郎は、その真相を探るべく、動き出す。

長崎屋の主が死んだ
 長崎屋の離れに、妖・狂骨が現れた。噂に寄れば祟られて幾人かの死人も出ている。
 今度は、病いに付せる父・藤兵衛に災いをもたらすのではと考えた一太郎は、妖退治で名を馳せる、上野寛永寺の寿真を訪なうも、時を同じくして寛永寺、そして寛朝の居る上野広徳寺でも僧侶の女犯問題が起きていることを知る。
 狂骨の正体を突き止めるため、寛朝の下へと向かった一太郎たちは、安時という僧侶の悲恋話を知る。

ふろうふし
 病いに付せる父・藤兵衛のために、解毒薬を手に入れようと、常世の国に住う、少彦名を訪ねることにした一太郎。
 だが、かの地には、永久の命をもたらすとされる「非時香菓」も生っていることから、剣呑な侍たちに追われることになってしまう。
 果たして無事に常世の国に辿り着けるのか。少彦名に会うことはできるのか? 藤兵衛のための薬は…。一太郎の冒険と戦いが始まった。

 シリーズも16作ともなると、良く題材を考え付くものだと、作家の才に頭が下がる思いである。
 一時、蚊帳の外感のあった一太郎だが、やはり主役の座に座っていないと、「しゃばけ」シリーズとしては物足りず、今作では、その活躍が牽引している。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 おたえ...一太郎の母親 
 長崎屋藤兵衛...一太郎の父親、長崎屋の主
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 野寺坊...獺の妖
 寛朝...上野広徳寺の僧侶
 寿真...東叡山寛永寺の僧侶
 秋英...上野広徳寺の僧侶、寛朝の弟子
 黒羽坊...元小田原の天狗、寿真の弟子
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 喜見...蜃気楼・蛟竜
 坂左...枕返し
 大黒天...財福の神(七福神)
 小彦名...薬租神
 金時...(坂田金時/金太郎) 神仙
 島子...(浦 島子/浦島太郎) 神仙


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ひとめぼれ

2017年04月30日 | 畠中恵
 2017年4月発行

 お気楽な、名主の跡取り麻之助と、家督を継いで名主となった清十郎。そして八丁堀見習同心の吉五郎。3人の悪友たちが繰り広げる人情物語「まんまこと」シリーズ第6弾。

わかれみち
昔の約束あり
言祝(ことほ)ぎ
黒煙
心の底
ひとめぼれ 計6編の短編連作

わかれみち
 お由有にひどい仕打ちをした、幸太の父親である横平屋の達三郎が何喰わぬ顔で江戸に舞い戻ったと知り、お由有の実父・札差しの大倉屋は、横平屋の取り潰しを画策する。その鮮やかな手管を目の当たりにしたばかりの麻之助たちに、今度は定町廻り同心・山本家に養子に入った又八郎が、襲われる事件に関わってしまった。
 そもそも又八郎は町家の出であり、実家の酒屋・高須屋の出見世を任されていたが、甲斐性がなく潰してしまったのだった。その当時の奉公人たちの恨みからではあるが、麻之助は裏で糸を引く存在に気付き…。

昔の約束あり
 相馬吉五郎は、両国橋西詰にて衆人観衆の下、「千里眼の予言で相馬家と縁を結ぶ者である」と、仏具屋・東国屋の娘・お蝶に詰め寄られる。
 元より養子である吉五郎には、身に覚えがないばかりか、居合わせた麻之助もその内容も腑に落ちない。事情を義父・小十郎告げるも、一蹴するのだが、気になるのは、相馬家の娘で吉五郎の許嫁の一葉である。
 麻之助たちの制止を聞かずに、お安、お虎と共に東国屋を訪なうが、そのまま足取りが消えてしまった。
 麻之助たちは、三人の行方を追ううちに、お蝶には、小普請組世話役の多村との縁組の話があると知るのだった。
 
言祝ぎ
 吉五郎の姪・おこ乃に三つもの縁談が持ち込まれた。大名家の陪臣で、200石の頼町の娘の縁談とあっては、慎重にならざるを得ない。
 そしてどの縁も、どこかが引っ掛かる、吉五郎の養父・相馬小十郎は、麻之助に、3人の調べを依頼する。麻之助は金貸しの丸三、両国の顔役の貞吉と共に、おこ乃にとっての良縁を探り出した。

黒煙
 支配町で火事が起きた。たまたま居合わせた麻之助は。逃げ遅れた者がいないか見回る中、泣いている双子の子どもを無事保護した。それは、唐物屋・菊屋仙十郎の子どもであったが、何故に子どもだけが取り残されたのかと、訝しがる仙十郎。
 一方、八木家の支配町では、火事騒動の最中に、小間物屋・丸太屋から螺鈿細工の櫛が失せ、それが扇屋・紅屋の娘・おかやの仕業ではないかと、ひと悶着。
 双方の、腑に落ちない点を繋ぐと、ひとつの答えが…。

心の底
 定廻り同心・相馬小十郎の頼みで、麻之助は、商いの為、旅に出たきり行方知らずの、葉茶屋鳴海屋の二男・丈之助を探しに東海道を旅する運びとなっていた。
 同行は、丈之助の許嫁・料理屋花梅屋の隠居・お浜である。孫娘・お雪の縁組相手が行く方知らずとあって、我が目で確かめようとしていた。
 が、いつしか麻之助は、方々から土産を頼まれたり、許嫁のお雪までもが旅に同道すると言い出したり。
 そんな中、江戸で丈之助を見掛けたという話が伝わり…。

ひとめぼれ
 吉五郎の許嫁である養子先のひとり娘・一葉に、仏具屋の四男坊の春四郎が「同心になりたい。武士になりたい」と、近付いていた。
 春四郎の甘い顔立ちに、若い一葉は夢中になり、吉五郎は気が塞いでいた。
 だが、相馬家当主の小十郎は、跡取りは吉五郎とし、一葉は好いた相手に嫁がせると決断。一葉の思いと、春四郎の思惑が擦れ違う。

主要登場人物
 高橋麻之助...神田の古町名主宗右衛門の総領息子
 八木清十郎...隣町の町名主
 相馬吉五郎...北町奉行所見習同心
 高橋宗右衛門...神田の古名主、麻之助の父親
 故・野崎寿ず...麻之助の妻、吉五郎の遠縁
 お由有...清十郎の義母、故・源兵衛(清十郎の父親)の後妻
 幸太...お由有の実子、清十郎の義弟
 お安....清十郎の妻、町名主・甲村家の娘
 頼町おこ乃...吉五郎の姪、寿ずの又従姉妹の娘
 貞吉(両国の貞)...両国の顔役、物売り
 大貞....両国の顔役、貞吉の父親 
 丸三...神田の高利貸し
 お虎....丸三の妾
 相馬小十郎...北町奉行所定町廻り同心、吉五郎の義父
 相馬一葉...小十郎の娘、吉五郎の許嫁
 みけ(八木家)、とら(相馬家)、ふに(高橋家)...兄弟猫






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