拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

忍者ハットリ君

2008-09-08 00:05:52 | 映画
映画『20世紀少年』を観た。原作は浦沢直樹、累計2000万部超えの大ヒット作。以下、感想。


1997年、世界各地で不気味なテロ事件が続発する。それらは全て、主人公ケンヂが小学生時代、仲間と共に考えて書いた「よげんの書」通りに起きていた。故に、テロの首謀者はケンヂの仲間内に居る…?そんな中、「ともだち」と呼ばれる謎の人物が開く新興宗教団体がジワジワと信者を増やしていた。その宗教がシンボルマークとして使っているのは、これまたケンヂ達が子供の頃に考えたイラスト。「ともだち」の正体は?そして、テロ事件との関係は?……映画『20世紀少年』は三部作らしく、今回の第一章は物語前半のヤマ場、「血のおおみそか事件」あたりまでを映像化。謎が謎を呼ぶ展開に誰もが夢中になる、最もエンターテイメント性の高い部分の映像化である。さて、どーなったか。
まぁ、「…必死で原作のイメージを守ろうとしたんだろうな…」という感じだろうか。監督が堤幸彦だと聞いて、彼の代表作『トリック』シリーズのような微妙なギャグ満載の『20世紀少年』になってたらどうしよう、と不安だったけど、堤カラーは極力抑えられていた(モンちゃんのドイツ語ぐらいか?)。でもねぇ…やっぱ微妙な映画だったね。まず、原作のストーリー本筋を必死に追う事に徹したせいで、本筋とは直接関係無いけど味わい深い、各キャラの魅力を引き立てる些細なシーンが軒並み削られていた。
例えばオッチョのタイでの活躍エピソード。オッチョがいかにして武闘派になったかを示す部分。トヨエツ演じるオッチョの佇まいが超カッケーだけに省略は勿体ない!あと、オッチョが十数年振りに少年サンデーを手に取って爆笑するシーンがあれば今回の映画のクライマックスが更に味わい深くなるのに…。また、ケンヂが「お茶の水工科大学」のソフトボール大会に飛び入り参加して、裸足でダッシュするシーンも無かった。少年時代いつも裸足&俊足だったドンキーにあやかって靴脱いでホームインしようとするも、脚力不足であっさりアウトになるケンヂの哀愁が漂う良い場面なのに。ドンキーと言えば鼻水タオルが繋いだ友情の話も無かったな。それから、マルオ&マルオの息子とケンヂがラーメン食べるシーン、酔っ払ったフクベエを家に送り届けるシーン…テロ阻止を決意したケンヂが仲間達に協力を求めようとするも、彼らには家庭があるため「彼らを大事件に巻き込んで良いのか」とケンヂは葛藤が、映画ではそういうの殆ど無し。あ、刑事チョーさんの捜査!あれで2章に繋がるのかな。
挙げたらキリが無いな。そりゃ、全部詰め込んでたら2時間半の上映時間に入りきらないだろう。でも、そんな些細なシーンが無いと各キャラクターの存在が超薄っぺらく感じられる。せっかく実力派俳優を集めてるのに勿体ない…。映画を見終わって「あぁ、あのシーンもこのシーンも無かったなぁ」と振り返ってみて改めて浦沢漫画の魅力は本筋を彩る枝葉のシーンにある、と再確認した。つーか『20世紀少年』は作者が「ミステリー物ではない」と公言してあのラストだから、本筋より枝葉エピソードの方が大事な漫画でしょ。それらを切り捨ててまで映画化したのは無謀だった。
や、でも良い所もあったぜ!キャラのルックス、多くは原作から抜け出て来たみたいでさ。以下、印象深かったキャラについてまとめてみた。

【激似!!】
・少年時代のオッチョ
びっくりした。漫画なのか実写なのかわかんないぐらい似てた。よくあんな子みつけてきたな。

・コンビニの支部長みたいな人
コンビニの雇われ店長であるケンヂに説教する支部長も激似。なんつーか…「浦沢顔」なのかね、あの俳優さん。

【とりあえずインパクト大】
・ピエール一文字
竹中直人が指パッチンを武器(?)に開いた変な宗教団体の教祖役で出演。一瞬だけだが予想通りの名演、ナイスな死に顔を披露。しかし彼が殺された理由は見事に切り捨てられてた。それで良いのかな。

・バンドのボーカル
「ともだち」主催のコンサートに出演するヴィジュアル系バンドのボーカル役で及川ミッチーが登場。しかも、ネオV系を代表するバンド・ナイトメアを率いて…。金髪・フルメイクで熱唱するミッチー、ハマり過ぎ(笑)。狂乱のステージを見て「こんなのロックじゃない!」とツッコむケンヂ…。

・政治コメンテーター
これは映画オリジナルキャラかな?「ともだち」が牛耳る政党「友民党」の躍進について語るコメンテーターとして宮崎哲弥が一瞬登場。正直ここが一番面白かった。