拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

命懸けの怪演

2008-09-05 17:30:18 | 映画
バットマンシリーズ最新作『ダークナイト』観た。以下、感想。


評判通り、ヒース・レジャー演じるバットマンの敵・ジョーカー、かっこよすぎた。まさに悪の化身。「あ、役に魂を吹き込むってこういうことか…」みたいな名演技。ジョーカーが出てるシーンは、もう全て名場面。やること派手だし、言う事全て深いし面白いし、顔怖いし…でも悪事を成し遂げた直後に見せる笑顔は何故か可愛いし…ヤバイよ。もう夢中だ。バットマン映画なのにバットマンの存在感薄かったよ。
ジョーカーは中途半端な事を許さない。曲がったことが大嫌い。街を守るバットマンや警察に対し「おまえらの守ってるものってさ、本当に大事?心の底から守りたいって思ってないだろ?ならやめちまえよ~」と揺さぶりをかけたり、人々が当たり前のように信頼してる人間関係に水をさし、右往左往する様子を見て楽しみまくる。狂ってるけど、「嘘くさい大義名分・ヌルい信頼関係を許せない!」という信念だけは強すぎる。こんな敵に、「あぁ、ヒーローを辞めるべきか、続けるべきか」とかウジウジ悩んでるバットマンが勝てるわけないんだ、常識的に考えて。
ジョーカー役のヒース・レジャーは今年の冬、薬物大量摂取で28歳の若さで無くなった。『ダークナイト』での怪演が遺作になってしまって非常に残念。アメリカでは『スターウォーズ』の興行収入を抜き、『タイタニック』に次ぐ記録的大ヒットらしいけど、ヒース・レジャーの死という話題性も手伝ってのことだろう(勿論、空前絶後の宣伝費も)。あぁぁ…勿体無い。続編ではもう観れないんだね。つーか28歳って…あの存在感で?嘘でしょ?
ヒース・レジャーの突然の死の真相は『ダークナイト』出演がきっかけという説が、アメリカでは有力らしい。要はジョーカーというクレイジー過ぎるキャラに入り込みすぎて精神の安定が保てず、精神安定剤に頼る日々が続いた、と。で、プライベートでのゴタゴタも重なり、薬物過剰摂取に至った、と。これが本当なら、彼は映画に…ジョーカーに命を捧げたってことになる。『ブロークバックマウンテン』で「ブロークバック」される(する?)彼を見た時もその役者魂に関心したけど、本当、壮絶な人だ。
とにかくヒース・レジャーのかっこよさだけで満足だが、不満があるとすれば残酷描写のヌルさ。確かに暗い映画だけどこれはPG-13、条件によっては子供でも見られる映画。おかげでジョーカーのキャラは凶悪なのに残虐描写が少ないという、ねじれ現象が起きている…。ジョーカーが酷いことしてるのは確かなんだけど、それをハッキリ映像で見せてくれない。血が全然流れない。もしかして「残虐なシーンを敢えて見せないのがクール」とでも思ってんのかね、監督。クールというより薄味になってしまったような気がするよ。『20世紀少年』の方が血が沢山出てたぞ?人間以外のモノを破壊する描写とかは過激だったんだけどな。
「香港のシーン長いよ」とか「モーガン・フリーマンやジョーカーの計画無理ありすぎだよ」とかツッコミたくなるけど、それでも多分今年のベスト1クラスの映画『ダークナイト』。でも、R15ぐらいにして、ジョーカーによる殺戮をガンガン見せてたらもっと良い映画になってただろうね。だってこれ、いくら指定付いてなくて残酷描写も少なめからって実際に子供に見せたらちょっとマズいよ。最初から指定付けてガンガンやっちゃえばよかったんだ…。