拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

魔界遊戯―Go to D.M.C!!!

2007-03-23 15:50:54 | 漫画
巷で話題の漫画『デトロイト・メタル・シティ』を読んだ。90年代前期~中期にかけて「渋谷系」と呼ばれて盛り上がっていたオシャレな音楽を好み、スウェディッシュポップを歌うシンガーソングライターとしてプロデビューを目指していたものの、何を間違ってかバリバリのハードコアヘヴィメタルバンドに加入してしまい、あっという間にアンダーグラウンドメタル界のカリスマに上り詰めてしまった男の混沌とした日々を描いたギャグ漫画。噂どおり、なかなか、いやかなり面白かった。メタルの世界はとんと疎い私だが、暑苦しいまでに詰め込まれたデスメタルをネタにしたギャグはいちいち笑える。多分、メタルに詳しくないからこそ楽しめるのだろう。青年誌っぽい絵とグロテスクかつ下品な描写が多々あるので決して万人には勧められない漫画なのがもどかしいな。これは手塚治虫の『奇子』以上に貸しにくい漫画だ。でもすっごい面白いのだ。うぅ~~!
主人公・根岸君は先述の通り、自分の意思に反して全く興味の無いデスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ」を組んでしまった小心者な青年。バンドでは「クラウザーⅡ世」と名乗り、ライブでは意味不明なMCや激しく狂ったパフォーマンスで狂信的なバンドの信者たちを煽りまくるものの、ステージを下りた途端楽屋で即効ド派手なメイクを落として家に帰り、カヒミ・カリィを聴いて安らぎの時間を得るという不安定な日々を送っている。ヘヴィメタルとは正反対なジャンルの音楽を好む根岸君。他にもフリッパーズ・ギターやコーネリアス、カジヒデキにフィッシュマンズなど、爽やかでポップな音楽を愛聴しており、休日は代官山のオシャレなカフェや下北沢の洋服屋にいそいそと出かける、なんとも生ぬるい、でも本人にとってはワクワクするようなときめきの時間を過ごしている。しかし怖すぎる事務所の女社長には逆らえず、ステージで無理矢理デスメタルキャラを作り上げて毎回ハードに大暴れ。大暴れするたびに「また伝説が生まれた!!!」と大ハシャギする信者たち(信者たちには「クラウザーさん」と呼ばれ、仰々しく崇め奉られている)。
私も平常時の根岸君と似たような音楽聴いていた時期があり、特にフリッパーズやコーネリアスは大好きなのだが、この漫画のようにデスメタルと対峙させるとヌルい印象に見えてくるから不思議だ。いや、漫画の中でも「デスメタル=一般人に拒絶されているグロテクスクなもの」「フリッパーズやカヒミ・カリィ=オシャレな音楽」という描かれ方がされていて、オシャレな人々からメタルがおもいっきりバカにされる、というギャグシーンも多々あるのだが…何故か読後は「ダサいぞ、渋谷系」って思ってしまう。渋谷系のオシャレな音楽の「軽やかすぎるメロディー」「よく考えたらかなり恥ずかしい歌詞」という要素を上手いことスポイルし、決してカッコいいとは言えない平凡な根岸君に愛好させることによって奇妙な笑いを生み出している。小沢健二や小山田圭吾が可愛らしい容姿の奥底に毒気やマニア気質、パンク魂などなどを持ち合わせていたのに対し、平常時はただのなよっとした青年である根岸君。平凡な彼が、オシャレ音楽を愛聴しているってことがダサいということを見事にギャグにしてる感じだ。渋谷系を思いっきり意識したと思われる根岸君の「甘い恋人」という曲のダサさ…「お前そんなの歌ってる場合じゃねぇよ!早くクラウザーさんに戻れよ!!」とか思っちゃったもんなー、信者でもないのに。ちょっと欲しいとか思っちゃったもんな、サタニックエンペラーのTシャツ。
デスメタルの過剰な様式美が笑いのネタになるのはよくわかるが、本来オシャレなものとされてきた音楽をネタにしてここまで笑いを生み出す瞬間も珍しい。オススメですよ…といいたいところだが本当にグロいからなぁ…カヒミ・カリィとかカジヒデキとかいう単語が飛び交っているのにも関わらず『ベルセルク』並みに血が滴ってる漫画だからなぁ…。ちなみにヤングアニマルに連載中でもうすぐ3巻が出る模様。ヤングアニマルはコンビニによっては成人雑誌コーナーに置いてあるから立ち読みしにくいなぁ。

追記
ラルクの新曲「SEAVENTH HEAVEN」がなぜかカラオケ&着うたで先行配信決定!