つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ビースト・スピアーッ!

2005-08-11 21:09:00 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、潮ととらな第254回は、

タイトル:うしおととら(全33巻)
著者:藤田和日郎
文庫名:少年サンデーコミックス

であります。

扇:そろそろ相方の少年漫画のストックがないなと思ってるSENでーす。

鈴:高校で先輩に「ここはグリーンウッド」を読ませてもらってから少年マンガは立ち読み派のLINNで~す。

扇:てゆうか、「ここはグリーンウッド」で開眼かよ……。
読めよ、少年漫画! 相変わらず、ひたすら続くバトルと、オプションの女の子と、わけのわからん潜在能力は標準装備だぞっ!

鈴:読むなら古本屋で立ち読みだな(爆)
ワンピ○スとか、どっかの有名な渦とおなじ名前のマンガとか、いろいろあるんだが、なんかこー、食指を動かされるのが少なくてなぁ。

扇:じゃ、青年漫画読め!
ものによっちゃあ下手な××漫画も真っ青だぞ。

鈴:え? 下手な……ってことは、ふたり○ッチとか(笑)
まー、れでーすこみっくなるものはけっこうえぐいらしいし、青年マンガも少々えぐくてもよいのではないかえ?

扇:レディースコミックはものによっては……ってこれは言うまい。
キャラ紹介行きますか、まずは主人公の蒼月潮。
相手構わず自分の主張を押しつけまくるので大っ嫌いな奴、やたらと説教臭いのもマイナス。
対化物用最終兵器『獣の槍』の使い手で、戦闘時は髪が伸びてビジュアルが変化。

鈴:じゃぁ、次はとら。
獣の槍で封印されていた妖怪で、長飛丸、字伏などと呼ばれる雷を操るかなーり強い化け物。
しかし、もともとは獣の槍に飲み込まれて化け物になった人間のなれの果て。
本編では、潮との漫才がそれなりにくすっな感じ。

扇:中村麻子。
幼馴染み、潮に惚れてる、外は固いが中はやーらかい、いかにもなヒロイン。
少年漫画で言うところの王道であり、まったく面白味のない人物。

鈴:じゃぁ、井上真由子。
潮の幼馴染みで、潮のことが好きだったけれど、見込みがないのでとらに鞍替えしたしたたかな子。
天然っぽいけど、かなーりしたたかなところが好き(笑)
とらにはんばーがーなるものを与えて餌付けしようとするところなんか、ほほえましいと同時に、うむっ! って感じだねぇ。

扇:蒼月紫暮。
潮の親父にして光覇明宗最強の男。
普段はおとぼけな住職さんだが、戦闘能力と格好良さは潮を遥かに上回る。
物凄く美人な奥さんがいるが、訳あって別居中。(笑)
とらやイズナとの漫才は結構楽しかった。

鈴:そうだねぇ。この親父と美人の奥さんとの間に潮みたいなのが生まれるとは世界七不思議に匹敵するかもしれぬ(爆)
……さておき、白面の者。
ラスボス。……以上。
……じゃなくて、九尾の狐の妖怪で、中国、日本を股に掛けて傾国の美女として、世情を混乱に貶める知恵者でありながら、とらをも凌ぐ化け物。
いかにもな少年マンガでありながら、ラスボスはなかなか味のある悪役。

扇:白面格好良かったよねぇ、あの笑い方がなんとも。
メインはこんなとこかな、じゃ後は一人ずつ好きなキャラを言っとくか。
秋葉流。獣の槍の伝承候補者で、修行僧なのにバイクが似合う粋なお方。
天才故に法力僧の力の限界を知っており、常に虚無的な雰囲気を漂わせている。
最後にとらに戦いを挑むシーンは物凄く格好良かった。

鈴:えー、じゃぁ、そっちが人間なら、こっちは妖怪で。
かまいたちの妖怪の末の妹のかがり。
次男のかまいたちの裏切りの関係で出てきたかまいたち兄弟の話で出てきたキャラだが、なかなかかわいい女性キャラになっている。
結局、とらにご執心で、いろいろ迫ってはみるものの、結局話の都合でうやむやにされたかわいそうなひと。
これととらなら、なかなかいいカップルになったような気はしないでもないのに。

扇:つか、この作者の描く黒髪っていいよね。(身体については敢えて言うまい)

鈴:あえて言うまい、ってはっきり絵が下手だって言えばいいじゃねぇか。
だいたい、下手でも顔の見た目さえよけりゃ通用するんだから、まぁ、いい世界だよな、少年マンガって。

扇:違う、見た目の良い女性キャラが一人いればそれが客引きになるだけだっ!
この漫画の客引きは真由子だったのだろうが……。

鈴:ふつー、真由子だよな。
麻子より、見た目女の子女の子してるし、天然だし、ビジュアルはかわいく描いてるほうだしねぇ。
でも、客引きってほど、このひとの絵って萌えるもんかねぇ。

扇:そこらへんはその筋の方ではないのでよく解らん。
しかし、この漫画って妖怪連中の方がいい味出してるよなあ。
いかにもかませ犬な感じで出てきた西の頭領とか好きだったぞ。

鈴:よくわからんどころか、お互い萌え系ではないのだから想像でしかないのだがね。
まぁ、人間のほうはべたべたなお約束キャラ満載だからな。毛色の変わった妖怪連中のほうがおもしろいのは仕方あるまいて。

扇:てなわけで、フツーの人間と不思議な妖怪がわんさか出てくるバトル漫画です。
実は私は、三巻で買うのやめて、そっから飛び飛びでしか読んでません。(オイ)
浪花節が苦手でない人にはオススメかなぁ。
では、さよーなら、さよな~ら~。

鈴:飛び飛びかいっ!
私なんか、買わずに古本屋の立ち読みで全部読み終えたぞ!!
でもまぁ、少年マンガ的にはいかにもだし、各エピソードはぼちぼち楽しめるものもあるので、一度読んでみるのはいいかも、ね。
ただし、2回目を読む気になるのはかなーりしばらく後になりそうなので、立ち読みが吉。
と言うわけで、今回はこの辺で。
さよなら、さよなら、……さよならっ

(扇:つーか、買えよっ! 作家が食いっぱぐれるだろうがっ!)

戦っとく?

2005-08-10 13:23:00 | 時代劇・歴史物
さて、軍師ならば読んどくべき第253回は、

タイトル:覇者の戦術
著者:中里融司
出版社:新紀元社

であります。

古代の戦争というと、どんなイメージがありますか?
騎馬武者同士の華麗なる一騎討ち?
槍を持った兵士が一列に並んで突進?
それとも、無限に降り注ぐ矢の雨?
しかし……事はそれだけで済むほど単純ではありません。

本書は古今東西の決戦を分析し、その戦術的意義について述べる好著です。
古くは紀元前、ヒッタイトとエジプトが激突したカディッシュの戦いから。
新しくは、ナポレオンの命運を決したワーテルローの会戦まで。
西はアメリカ南北戦争から東は長篠の合戦までと、実に幅広い。

一つの章の基本的な流れは――。

・その章で紹介する戦闘タイプ(戦車戦、攻城戦等)の簡単な紹介。
・戦例。決戦に至るまでの背景や、戦闘時の陣形、編成、戦法の解説。
・戦例を踏まえた、各指揮官の戦術の違いと注意点。

となっており、状況によって戦術がどう変わるのかがよく解ります。
戦例は図表付きで非常に解りやすく、いかにして勝敗が決したかも納得のいく説明がされています。
古今東西で装備は違っても、同じ状況の戦闘では戦術的には殆ど変化がないことが解ったりして、なかなか面白いです。

歴史好き、ウォーシミュレーション好きな方にオススメ。
ハンニバル、アレクサンドロスなど、過去の名将達が如何にして強敵を打ち破ったかを御覧下さい。

鳥に運ばれて……

2005-08-09 23:12:12 | ホラー
さて、つくづくホラーって難しいと思う第252回は、

タイトル:鳥葬の山
著者:夢枕獏
文庫名:文春文庫

であります。

かの『陰陽師』で知られる夢枕獏の短編集。
表題作を含む八編を収録。
例によって一つずつ感想を書きます。

柔らかい家……森で道に迷った末、ようやくたどり着いた農家風の家。一人の老人に案内されて中に歩いていくうちに、この森の恐るべき状態が次々と明かされていく――。理不尽型ホラーの典型。怖いと思える物を羅列しているだけに感じるのは私がホラーに慣れていないからだろうか? この森の世界は人からすれば異様だが、その実、秩序に満ちていると感じる。故に、あまり恐怖はない。

頭の上の湿った土……七年間もの間、土の中に埋められている『ぼく』。考えることしかできないので、遠い忘れられた記憶を思い返そうとするが――。序盤の展開は秀逸。自分がどこの誰なのかも思い出せない主人公が、少しずつ、断片的に記憶を取り戻していく過程は、次に何が来るのかを期待させるミステリ的面白さがある。ただ、記憶の輪郭がはっきりしだしてからは退屈。正直、謎のままの方が面白かった。

鳥葬の山……チベット旅行中に鳥葬の現場を見た男。彼は日本に帰って以降、恐ろしい夢に悩まされ続ける――。ホラー調だが、実はミステリ。主人公がなぜ悪夢を見るのか、その内容が決まっているのはなぜか。仕掛けはオカルティックだが、納得がいく答えは出せるようになっている。鳥葬のシーンは、スプラッタ好きにはオススメかも。

閑古鳥……ショートショート。ありがちすぎて語る気もなし。

あやかし……『ぼく』の家にいるみちこ叔母さんは、とても綺麗な人だが結婚しない。しかし、好きな人がいることを『ぼく』だけは知っている。でも、その人の姿を『ぼく』はまだ一度も見たことがない――。お気に入りの逸品。次第に判明していくみちこ叔母さんの過去と狂気。疑問を感じながら、それでも叔母に惹かれていく主人公。ラストがとにかく秀逸。

超高層ハンティング……新宿の高層ビルの最上階にあるバー。『おれ』はオン・ザ・ロックを飲みつつ、ヤツの気配を探っていた――。ハードボイルド調の伝奇物、特にこれといった特徴はない。

羊の宇宙……羊飼いの少年と某超有名物理学者(誰かはすぐに解る)の宇宙についての会話。知識はないが、有り余る知恵で独自の宇宙論を展開する少年のキャラクターがとにかく素晴らしい。物腰穏やかだが、鋭い視点で少年の言葉を分析する老物理学者のキャラクターも良い。学者なら誰でも、こういうお孫さんが欲しいだろうなぁ、と思わせてくれる素敵な短編。

渓流師……昨日までの自分を捨て、釣りに出かけた男。彼は魚を相手にしながら、過去を振り返る――。私が、釣りに全く興味がない人間なためか、かなりイマイチ。

夢枕獏の単行本読むの初めてだったんですが、段落の多さに閉口。
とにかく改行、改行、改行です、しつこいぐらい。
一列目がほとんど真っ白って……何だかなぁ。
これが軽くて読みやすいということなんでしょうか?
私の場合、いちいちストップかけられてるみたいで疲れます。

聞コエマスカ?

2005-08-08 01:04:32 | 小説全般
さて、ようやく目標の四分の一まで来た第251回は、

タイトル:きみにしか聞こえない――CALLING YOU
著者:乙一
文庫名:角川スニーカー文庫

であります。

ふいに、短編好きの血が騒ぎ出して手にとってみました。
『ZOO』は好き嫌い半々といったとこでしたが、さて今回は?
例によって一つずつ感想を書いていきます。

CALLING YOU……主人公は携帯を持っていない女子高生。表面上の言葉で折り合いを付けていくことができないため、友達を作ることができず、学校で孤立している。彼女は寂しさを紛らわせるため、想像の携帯電話を作り上げてそれを愛するが――ある日、頭の中のそれが着信を知らせた。『わたし』の心理描写と想像の携帯電話のアイディアは上手いと思うが、全体的なストーリーはイマイチ。序盤で、先の展開もオチも読めてしまった。綺麗な話だとは思うが、それ以上ではない。

傷―KIZ/KIZS……親に付けられた痣を持ち、デリカシーのない者達に怒りを燃やす少年。人の痛みを知り、自らを傷つけることをいとわない少年。二人は同じ秘密を共有し、心を通わせていくが――。主人公の怒りと葛藤が非常に丁寧に描かれている。無神経な人々に挑みつつ、少しずつそれを理解していく主人公と、すべてを受け入れ、一人で滅びていこうとする少年の対比も上手い。単に、聖人君子のようなキャラクターによる救済を描いているわけではないところに好感が持てる良作。

華歌……列車事故により、今の病院に入れられた『私』。悪夢に襲われた朝、それまでに訪れたことのなかった裏庭の森に入り、巨大な樹を発見する。その根元には奇妙な植物が生えていた――。
大当たり
展開、複線、ラスト、すべて素晴らしいパーフェクトな短編。少なくとも、私の知る乙一作品(と言っても、本書と『ZOO』しか読んでないけど)の中ではダントツでトップ。詳しく書きたいのは山々だが、敢えて詳しい内容には触れず、凄い、の一言で済ませておこう。

綺麗な話が揃った短編集です。
ハッピーエンドが好きな人にはかなりオススメ。
面白かったので、次も探してみよっと。



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絵ってのはやっぱいいよねぇ

2005-08-07 14:47:01 | マンガ(少女漫画)
さて、何となくきりがいいの第250回は、

タイトル:Wジュリエット(全14巻)
著者:絵夢羅
出版社:白泉社花とゆめコミックス

であります。

学園物で、演劇部に所属するふたりの主人公、三浦糸と天野真琴のかなーりべたべたなラブコメ。

ストーリーは、まず主人公のひとり、天野真琴が転校して、演劇部に入部するところから。
見た目は背の高い美人……なんだけど、ほんとうは男。
役者になると言う夢をかなえるために、父親の出した条件が転校した先で女として残りの高校生活を送ること。
卒業までばれなければ役者になることを認め、ダメなら実家の道場を継ぐことになっている。

……と言いつつも、第1話で早速糸にばれてしまい、そんな無茶苦茶な条件を出す真琴(本名:成田真)の父親に憤慨しつつも、秘密を守ることを約束する。

そこから、いろんな事件や真琴を連れ戻したい女の子や、その兄の妨害などをくぐり抜けつつ、ラブコメ街道まっしぐらに話は進んでいく。

ストーリーは、はっきり言って大して期待するほどのものではない。
ばれそうになる秘密を何とかして切り抜けるとことか、男家族の中で育ってがさつそうだったのがどんどん女性らしくなっていく糸とか、敵役とか、目新しいところとはないし、どこにでも転がってそうなネタ。

まぁ、お約束なので安心なのは安心なんだけど、きついのはべたべたっぷり。
……もとい、読んでるとさぶいぼ全開な真琴の甘いセリフ。

まー、こういうのが好きならまだしも、ふつーに読んだら、よくもまぁ、そこまで臆面もなくそんなセリフが吐けるもんだ、と逆に感心してしまうくらい、げろ甘。

少々のラブコメなら免疫はあるが、これは少々ではないくらいなので、その手のが苦手なひとはまず読めないだろうねぇ。

相棒もこのマンガ、嫌いだし、別段私もそこまで好きと言うわけではない。

でも、特徴的なのはこのマンガ、とてもテンポがいいこと。
また、糸は空手、真琴は拳法をやっていて、その関係で立ち回りのようなシーンが随所に出てくるんだけど、スピード感や躍動感があるのがいい。

……いい、と言うより、物書きとしてはけっこう羨ましい。

こういう派手なシーンやテンポ、スピード感ってぇのは、なかなか文字で表現するのは難しいからねぇ。

やっぱり絵ってのはいいなぁ、と思いつつも結局買っちまったので全巻買ってしまったなぁ。
いまごろ、どこの段ボールで冬眠してるんだろー……(爆)



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やっぱりおもしろいひとだ

2005-08-06 16:17:22 | その他
さて、小説ではないけれどの第249回は、

タイトル:気まずい二人
著者:三谷幸喜
出版社:角川文庫

であります。

月刊カドカワに連載されていた人気脚本家の三谷幸喜の対談集。
対談なんて、まったく読もうなんて思わないけど、この脚本家のキャラクターがけっこう好きで、おもしろいひとだと言う印象があったので、どんなもんかなぁ、と軽い気持ちでご購入。

基本的に人見知りで、話し下手で、地味な著者のためのリハビリ企画という意味合いもあって始まったらしく、タイトルどおり、ものの見事に「気まずい」ふたりになるシーンが随所にあって、笑えてしまう。

収録されている対談は、次の13人で14話。

「ナイスフォローの女」 ~八木亜希子 フジテレビアナウンサー
「淋し気な女」 ~十朱幸代 女優
「困惑する女」 ~西田ひかる 歌手
「手を観る女」 ~日笠雅水 手相観
「走る女」 ~桃井かおり 女優
「ボサノヴァ好きの女」 ~鈴木蘭々 タレント、歌手
「笑う女」 ~林家パー子 タレント
「潤んだ瞳の女」 ~緒川たまき 女優
「喋り続ける女」 ~平野レミ シャンソン歌手
「気を使う女」 ~森口博子 歌手
「モンロー似の女」 ~加藤紀子 歌手
「年下の女」 ~安達祐美 女優
「忘れがちな女」 ~石田ゆり子
「ナイスフォローの女、再び」 ~八木亜希子 フジテレビアナウンサー
(※肩書きなどはすべて対談当時の95年~97年のもの)

女性ばかりなのは、著者が女性だと余計に緊張するかららしい。

さすがに名の知れたひとばかりなので、読んでいてそのまま喋っているのを聞いているような感じがしてしまう。
構成する際に、生きた会話を活字で再現、とあとがきに書いてあるんだけど、これは十分に成功しているんじゃないかな、と思うくらい。

「笑う女」の林家パー子や「喋り続ける女」の平野レミなんか、そのまんまだし(笑)

また、著者自身の姿もおもしろい。
「年下の女」の安達祐美のところでは、年上って感じで最初は話していくのに、結局話題に困ってしまって、いつもどおりになってしまうところとか、話題を見つけて話をつなげようとするのに、すぐに終わってしまうところとか……。

著者のらしいところが随所に見られてとてもおもしろい。

お堅いテーマでの対談でもないし、気取ったところもないし、軽く手にとってみるのに最適。
ひとつひとつもそこまで長くないしね。

最初が10年前だから古いっちゃぁ古いけど、おもしろいからまったく問題なし(^^

少なくとも2冊は読もう

2005-08-05 18:55:31 | 小説全般
さて、この時期は何とかの百冊とかがあって助かるの第248回は、

タイトル:泳ぐのに、安全でも適切でもありません
著者:江國香織
出版社:集英社文庫

であります。

またもや、と言うより、このところ、読んだことがないひとばかりだからいまさらだけど、このひともこれが初めて読む作品。

題名が長くて、ちょっと変わってるけど、短編集と言うことでお買い上げ。

内容は10篇の短編……ほんとうに短い短編で、ほとんど通勤途中のバスの中、電車の中で読める範囲のもの。
いちばん長いのが9作目の「十日間の死」と言うものだけど、これでも40ページ足らずなので、気軽に手に取るにはもってこいかもしれない。

各短編は、表題にもなっている「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」を始め、
「うんとお腹をすかせてきてね」
「サマーブランケット」
「りんご追分」
「うしなう」
「ジェーン」
「動物園」
「犬小屋」
「十日間の死」
「愛しいひとが、もうすぐここにやってくる」
の各物語。

文体は主人公の一人称ですべて女性。年齢も20代後半から40代までと幅広い。

で、読後感となると、「う~む……」な感じ。
短編集となると、ひとつふたつくらいは肌に合うものがあるものだけど、ここまで見事に全部合わない……と言うか、素通りしていった作品は逆にないかも。

強いて言うなら、「十日間の死」が少しは入っていけたかなぁ、くらい。

www.amazon.co.jpとかのレビューを見てると、「うんとお腹をすかせてきてね」「りんご追分」とかの話があったりして読んでみたけど、「あー、そう……」としか思わなかった。

まぁ、感性の違いと言えばそれだけだけど、ふと性別が違うからこその感じ方の相違ってのかなぁ、と思ったりもした。
主人公はすべて女性だし、一人称だし、そういうところで合う合わないも出てくるのかな、と……。

とは言うものの、この短編集だけで判断するのは何だし、比較的長い中編や長編だと、逆にいいかもしれないので、2冊目は買う。
長編と短編、これくらいでとりあえず、判断するとしよう。

いろんなひとが描いてる話

2005-08-04 00:12:29 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、いろはにほへとな第247回は、

タイトル:あさきゆめみし
著者:大和和紀
出版社:講談社

であります。

鈴:なんでこっちばっかりマンガ化されるのか理解できないLINNで~す。

扇:枕草子はギャグ漫画の王道そのまんまだろとツッコムSENで~す。

鈴:ぜんぜんっ!
ギャグなのは「中宮さまLOVE!」なところだけだからよいのじゃ!

扇:いや、それで充分だろ……。
ギャグな主人公におっとりとしたお姉さんって黄金パターンじゃん。

鈴:それがよいのではないかっ!
才女と言われ続けてきた清少納言も、中宮さまの前ではギャグ担当(笑)
それが延々と受け継がれてきたのだから、やはりこの黄金パターンってのはらしいのだろう。
……って、待てよ……。
「あさきゆめみし」って源氏物語のはずなのに、なんで「枕草子」の話になってんだ!?

扇:じゃあ話を戻すか。
えーと、最初が祇園精舎だっけか?

鈴:いや、それ民族違うぞ(爆)
……さて、とにかく、源氏物語のマンガ版であります。
もう説明するのがバカらしくなるくらいだけど、女ったらしの古典と言うべきお話です。

扇:民族? 血統だろ?
光源氏計画と、光GENJIというアイドルグループを生んだ偉大な作品です。
ようこそここへ、クック……♪

鈴:そういうのを生んだからと言って偉大だとはまったく思わないが……。
ん~、しかし、あまりにも有名すぎてなんか書きづらいなぁ……。
キャラ紹介っつってもいまいちだし……。
あー、でも、個人的に葵の上っていいなぁ。最後の最後までお嬢さまで、なんであたしがあんたなんかと!? みたいな感じがあって、いいキャラだったなぁ。

扇:大方の人間は、最後に愛が芽生えたって解釈してるんでは?
もっとも、危機的状況で生まれた愛は長続きしないがな。(笑)

鈴:芽生えたんかねぇ。結局、源氏の勝手な解釈じゃぁないのか、葵の上の話って。
私なら、意に添わない相手と無理矢理結婚させられて、挙げ句の果てに愛人の呪いで殺されたってぇのに、最後の最後でちょろっとだけの優しさでほだされるなんて、あり得ねぇ、って思うけどさ(笑)

扇:いや、それを言っちゃあ……まぁ、気位の高い人が最期の瞬間に落ちる(専門用語)のは受けるから、その解釈は仕方がないのでは?
私のイチオシは朧月夜、この人格好良いよねぇ~。
源氏との関係もかなりイーブンだったし。
出会いも去り際も良かったのはこの人だけだな。

鈴:朧月夜はいい女だ、ってのは誰しもが認めるところではないかえ?
源氏物語の中で誰がいちばんいい女だ、って言われたら、速攻で朧月夜をあげるぞ(笑)
だが、いちおう、この話の中で重要な位置を占めると言えば、紫の上だな。
光源氏計画と言えば幼いうちから育てて……って言うのの代名詞とも言える女性だぞ。

扇:そう、いい女なんだよ~。
式部の理想型って、紫の上じゃなくて朧月夜だったんじゃないかと思ってみたり。
源氏にとっての紫の上って所詮――
マザコン身代わり人形
だろ?

鈴:それはまったく、否定しないな
そもそも源氏自体がマザコンで母親の影を追いかけてたんだからな。
……つか、いくらかっこよかろうと、とてつもなくマザコンの匂いがぷんぷんする男なのに、なんで源氏って人気があるんだろう……。
疑問じゃ……。

扇:まぁ、そこが母性本能という奴をダイレクトアタックなのかも知れん。
オヤジ心をクリティカルヒットというと、夕顔なんだろうけどな。(笑)

鈴:オヤジ心? 萌え心を痛恨の一撃ではないか?(笑)
だがまぁ、夕顔はなぁ……。
いわゆる薄幸の美少女、ってのが似合うキャラだから、某大学時代からの友人Zの趣味にダイレクトヒットするのは否めないが(爆)

扇:私じゃないことは確かだな。(笑)
まぁ、病弱、薄幸、意志薄弱という、守ってあげたい症候群の方々の脳天直撃セ○サ○ーンなキャラだから仕方ないっちゃ仕方ないが。
つか、いわゆる萌え系キャラの大半は源氏で既に描かれてる気がするなぁ。

鈴:まぁ、SENではないことは確かだな。
しかし、確かにいろいろいるが、源氏の女性キャラをそのまま「と○め○メ○リ○ル」にしてもぜんぜんOKだろうな。
そう言う意味では、紫式部ってぇのはキャラ造形がうまいひとだったんだなぁ。

扇:男って……千年以上前から見透かされてたのな。
伝聞で聞く限り、式部はかな~りヤな性格だったらしいけど。

鈴:そう言う意味では、あけっぴろげでからっとしてる感じの清少納言とは対照的ではあるよなぁ。
……って、ぜんぜんマンガのほうの話してないような気がするなぁ。
まぁ、結局源氏物語のマンガ版だから、しょうがねぇか。
……と言うわけで、長くなってきたのでこの辺で。
やっぱり、枕草子のほうが好きだなぁ、と思いつつ、さよなら、さよなら、さよなら

扇:『はいからさんが通る』ほどのパワーはないけど、面白いのは確かです。
あ、予告しないと――次回はケモノのアレです。(アレって何?)
では、さよ~なら~。

本の扉の向こうで何かが起こる

2005-08-03 19:54:22 | ファンタジー(異世界)
さて、実は女王様が一番怖い話な第246回は、

タイトル:はてしない物語
著者:ミヒャエル・エンデ
出版社:岩波書店

であります。

エンデの名を高からしめたファンタジーの傑作。
映画『ネバーエンディング・ストーリー』の原作でもあります。
本をこよなく愛する少年バスチャン・バルタザール・ブックス(凄い名前!)が、とある古書店から盗み出した『はてしない物語』をめぐるお話です。

作中の『はてしない物語』はバスチャンの言葉によってのみ語られるものではなく、独立した話としてきちんと書かれています。不思議な異世界ファンタージェンの荒廃と、それに立ち向かう勇者アトレーユの苦闘を描くもので、途中に挿入されているバスチャンの感想にうんうんとうなづいてしまうほど面白い。

アトレーユが立ち向かう敵は、魔王とか悪魔といった、確固たる悪の存在ではありません。広大なファンタージェンの各地に発生し、すべてを無に変えていく、『虚無』と呼ばれる不可思議な現象です。そして、誰もがそれに抗う術を持ちません。それでも彼は女王幼心の君のため、愛馬と共に探索の旅に出ます。

同年代の少年アトレーユの冒険に一喜一憂しつつ、物語にのめり込んでいくバスチャン。いつしか夜も更け、周囲から人の気配が消えた頃……異変は起こりました。作中に、あたかもバスチャンの現実と『はてしない物語』の世界が連動しているかのような文章が無数に出てくるのです。

決定的な一文を目にしても、バスチャンは読み続けることをやめることができませんでした。恐怖より先を知りたいという欲求の方が勝ったのも確かですが、絶望とともに終わりを告げようとしていたアトレーユの旅から目を背けることは、彼を見捨てるのと同じだと考えたからでもありました。そして、物語は佳境に入り――。

というのが前半のあらすじ。映画の1はこの前半部分だけをぶった切って、最後にロクでもないオチを付けた作品です。それでも好きですけどね……とにかく画像が綺麗だったので。

後半については敢えて語りません。抽象的な言い方をすれば、前半が『不思議の国のアリス』、後半が『鏡の国のアリス』といったところでしょうか。前半ではナビゲーターに近かったバスチャンが、後半では目一杯主役になり、さらに作者エンデの哲学が全面に押し出されてきます。『鏡~』ほど説教臭くはないけど。

虚無に飲み込まれていくものの描写、バスチャンが物語に浸食されていく過程、シュールかつ少し不気味な挿絵などなど、そこかしこにホラーの手法が使われています。同作者の『鏡の中の鏡』ほどどぎつくはないけど、恐がりのお子様にちょっとしたトラウマを植え付けるには充分。(笑)

ファンタジー好きなら必読。
一応、児童文学のカテゴリーに入りますが、大人も読むべし。

最後に映画の話をもうちょっと。
1のアトレーユと女王幼心の君の美しさは絶品です。
できれば2、3も同じ方々でやって欲しかった……。
まー、あのラストではエンデが激怒するのも解りますが。

紳士……?

2005-08-02 22:57:35 | マンガ(少年漫画)
さて、血と臓物が好きな方に送る第245回は、

タイトル:夢幻紳士―怪奇編(全三巻)
著者:高橋葉介
出版社:徳間書店

であります。

ホラー漫画界の巨星、高橋葉介の傑作。
つい最近、最新作『幻想篇』が出ました、あれも良い。



黒い帽子に黒いスーツの二枚目。
酒と煙草を愛し、バーの片隅が指定席。
職業は探偵だが、類い希なる霊能者でもある。
彼の名は夢幻魔実也。

死者の宴を眺め。
記憶の闇に入り。
魔物の館を訪れ。
殺戮の夜に潜む。

ある者は彼を求め。
ある者は彼を憎み。
ある者は彼に滅ぼされる。
彼自身は何も変わらない。

今宵もまた、黒い天使がゆく。
待つのは恐怖と狂気ばかり。



知る人ぞ知る、女ったらしの霊能者――夢幻君の大活躍が楽しめる逸品。
もっとも、彼は夢幻紳士と銘打たれたシリーズ以外にも出張してますが。

夢幻君はいわゆる正義の味方ではありません。
霊的存在や妄執に捕らわれた方々とよく関わりますが、基本は無関心。
人助けをすることもありますが、気が向いた時だけといった感じ。
もちろん、助けられなかった場合も、まぁ仕方ないかで済ませます。

女性との関わりも多い、生者、死者問わず。
表面上は紳士のふりしてますがフェミニストでも何でもありません。
面倒な女は嫌い、なくせに、とりあえずやることだけはやります。
そこが魅力なのかも知れんが。(笑)

ホラー好きな方にオススメ。
サイコホラーのように、じわじわ恐怖が迫る話は少ないです。
割とスプラッタがメイン、絵のおかげでそれほど怖くはないけど。

余談。
――ホラー作家ってどうして明るい方が多いんでしょう?
いや……ヨウスケ先生、貴方もその部類だと思いますが。(笑)