つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

紅白武士合戦

2005-08-29 16:15:21 | 時代劇・歴史物
さて、これまたブームに乗ったわけじゃないけど第272回は、

タイトル:源平争乱と平家物語
著者:上横手雅敬
文庫名:角川選書

であります。

全二十三編から成る歴史エッセー集。
四章構成で大まかに説明すると――
・平家物語では殆ど描かれていない清盛以前の平氏の台頭
・源平時代の武士の思想および現代人とのギャップ
・平家物語・義経伝・吾妻鏡等の比較考察
・表舞台ではなかなか取り上げられない地方勢力の話
となっています。

既にイメージが固定化してしまっている感のある清盛、義経、頼朝、その他諸々の源平スター達の実像に迫ろうとするところは面白かった、かな。

平家物語では悪役にされている人々、とにかく善人に描かれている人、目立たない人物にしても、それぞれの事情とドラマを持っているのは当然です。
しかし、書物は作者の趣味や政治的立場の影響をモロに受けるため、それによって伝えられた彼らの存在は実像からかけ離れていく。
それが面白いと言ったらそれまでですが。(笑)

もっとも、筆者は『平家物語』を作り話だと言って否定している訳ではありません、むしろその逆で、軍記物語は史書であると言い切っています。

例として、似仁王が挙兵したのは源頼政に誘われたからだとする通説を挙げ、史料を見る限り不自然なこの事実が平家物語に寄っているとした上で、都合のいい時だけ物語の記述を鵜呑みにする歴史学者を非難したりもしてます。

重要なのは、平家物語の記述をそのまま信じるのでも、すべて虚構と割り切るのでもなく、他書との比較を厳密に行った上で史料として活用すべきだ、とする筆者の考え方は一理あります。

清盛・頼朝・重盛・義経、一番強いのは誰? とか、源氏の分家に山本義経(ますらおにも出た方)という人がいたなんて面白い話もありますが、基本的に固い内容なので、飽くまで資料として読むべきかも。

一応オススメ、と言いたいところですが本書には凄い問題があります。
二十三編のエッセーの執筆年代がバラバラなので、同じ説明が何度も出てくるのです、しかも殆ど同じ文章で。
好きなとこだけ飛ばし飛ばし読むにはいいかも知れませんが、通して読む場合苦痛以外の何物でもありません。

というか正直に、「二度と読みたくない」って言った方がいいかな?