さて、伏せ字部分には好きな言葉を入れて下さい、な第274回は、
タイトル:江戸川乱歩傑作選
著者:江戸川乱歩
文庫名:新潮文庫
であります。
乱歩の短編集です。
怪人二十面相な乱歩です。
ルパンならぬ黄金仮面な乱歩です。
顔に爪立てたら、下から探偵の素顔が出てくる乱歩です。
ベイカー・ストリート・イレギュラーズならぬ……。(しつこい)
短編集なので、例によって一つずつ感想を書いていきます。
『二銭銅貨』……紳士盗賊と呼ばれる男の手になる賃金窃盗事件。犯人は逮捕されたものの、彼は金の隠し場所を決して明かそうとはしなかった。そんな折、〈私〉の同居人が奇妙な行動を取り始めた――。記念すべきデビュー作。暗号解読ものですが、ラストがどんでん返しになっているのがいかにも乱歩らしい。紳士盗賊ってネーミングもなんかそのままで微笑ましいです。
『二撥人』……何とはなく親しくなった戦争帰りの男。どこかで見たような気がしながらも、主人公は自分の過去の体験を彼に話し始める。ミステリ仕立ての回想話。オチは読みやすいが、主人公の心情は上手く描けている。
『D坂の殺人事件』……とある古本屋で起きた殺人事件。明智小五郎なる妙な書生と共に、〈私〉はこの事件に巻き込まれるのだが――。密閉性の低い日本家屋での密室殺人事件を扱った実験作。誰もが知ってるあの男が登場し、得意げに推理を展開してくれる。ただし、この時の彼はまだ探偵マニアの青年といった感じだけど。
『心理試験』……ある老婆が溜め込んでいる金に目を付け、完全犯罪を実行しようとする学生。事件直後に召喚された容疑者の有罪を疑う判事。探偵明智小五郎は一つの罠を仕掛ける――。理詰めで犯罪を犯した男と理詰めで犯人を追い詰める男の心理戦。心理試験の薀蓄も興味深いが、やはり会話での戦いが見物。あらゆる手を打ったつもりの犯人が、その心理を逆手に取られて破れる展開は秀逸。お気に入り。
『赤い部屋』……奇怪な話を求めて、〈赤い部屋〉に集う七人の男達。今宵もまた、奇妙な人物による奇妙な物語が幕を開ける――。自らを狂人と呼び、懺悔を続けるT氏のキャラが秀逸。真紅の垂れ絹、緋色のテーブル、明かりはロウソクだけという〈赤い部屋〉の演出も素敵である、ちょっと占いの館っぽいけど(笑)。乱歩らしいどんでんどんでん返しなラストも見事な逸品。
『屋根裏の散歩者』……何をやっても満たされない男がたどり着いた一つの趣味。それは屋根裏から他人の生活を覗くことだった――。屋根裏の散歩、さらにそこから犯罪へと手を染めていく男の心理が上手く描かれています。もっとも明智先生出た瞬間、彼の末路は決定されますが(笑)。しかし、小五郎君て結構意地悪ですね。
『人間椅子』……美しい女流作家に送られてきた手紙。奥様、の出だしで始まるその手紙には恐るべき事実が記されていた――。過程といい、オチといい、思わず笑ってしまうユーモア・ホラー(?)。色々突っ込み所はあるが、敢えて一つ挙げるとすればやっぱりオチか。「わざとやってるだろ、お前」(笑)
『鏡地獄』……病的なまでに鏡を愛する男。彼は様々な鏡を作っては、それが映し出す不可思議な世界に没頭していく――。友人の話、という前フリで語られる赤い部屋の姉妹編? 一応ホラーになるのだろうが、ミラーハウスとかがある現代ではあまり恐怖を感じないような気も。
『芋虫』……戦争で四肢を失い、口もきけず、耳も聞こえなくなった夫の世話をする妻。周囲の人間は彼女の献身的な行為を褒め称えるが――。何とも言えない作品。妻の感情の移り変わりは納得いくし、最後の薄ら寒い感想も解る気がするが、面白い、とは言い難い。
ちょっと性格悪い明智先生の話が一番楽しいです。
むかーし二時間ドラマでやってた乱歩シリーズが好きだった人なら間違いなくオススメ。(微妙な言い方!)
タイトル:江戸川乱歩傑作選
著者:江戸川乱歩
文庫名:新潮文庫
であります。
乱歩の短編集です。
怪人二十面相な乱歩です。
ルパンならぬ黄金仮面な乱歩です。
顔に爪立てたら、下から探偵の素顔が出てくる乱歩です。
ベイカー・ストリート・イレギュラーズならぬ……。(しつこい)
短編集なので、例によって一つずつ感想を書いていきます。
『二銭銅貨』……紳士盗賊と呼ばれる男の手になる賃金窃盗事件。犯人は逮捕されたものの、彼は金の隠し場所を決して明かそうとはしなかった。そんな折、〈私〉の同居人が奇妙な行動を取り始めた――。記念すべきデビュー作。暗号解読ものですが、ラストがどんでん返しになっているのがいかにも乱歩らしい。紳士盗賊ってネーミングもなんかそのままで微笑ましいです。
『二撥人』……何とはなく親しくなった戦争帰りの男。どこかで見たような気がしながらも、主人公は自分の過去の体験を彼に話し始める。ミステリ仕立ての回想話。オチは読みやすいが、主人公の心情は上手く描けている。
『D坂の殺人事件』……とある古本屋で起きた殺人事件。明智小五郎なる妙な書生と共に、〈私〉はこの事件に巻き込まれるのだが――。密閉性の低い日本家屋での密室殺人事件を扱った実験作。誰もが知ってるあの男が登場し、得意げに推理を展開してくれる。ただし、この時の彼はまだ探偵マニアの青年といった感じだけど。
『心理試験』……ある老婆が溜め込んでいる金に目を付け、完全犯罪を実行しようとする学生。事件直後に召喚された容疑者の有罪を疑う判事。探偵明智小五郎は一つの罠を仕掛ける――。理詰めで犯罪を犯した男と理詰めで犯人を追い詰める男の心理戦。心理試験の薀蓄も興味深いが、やはり会話での戦いが見物。あらゆる手を打ったつもりの犯人が、その心理を逆手に取られて破れる展開は秀逸。お気に入り。
『赤い部屋』……奇怪な話を求めて、〈赤い部屋〉に集う七人の男達。今宵もまた、奇妙な人物による奇妙な物語が幕を開ける――。自らを狂人と呼び、懺悔を続けるT氏のキャラが秀逸。真紅の垂れ絹、緋色のテーブル、明かりはロウソクだけという〈赤い部屋〉の演出も素敵である、ちょっと占いの館っぽいけど(笑)。乱歩らしいどんでんどんでん返しなラストも見事な逸品。
『屋根裏の散歩者』……何をやっても満たされない男がたどり着いた一つの趣味。それは屋根裏から他人の生活を覗くことだった――。屋根裏の散歩、さらにそこから犯罪へと手を染めていく男の心理が上手く描かれています。もっとも明智先生出た瞬間、彼の末路は決定されますが(笑)。しかし、小五郎君て結構意地悪ですね。
『人間椅子』……美しい女流作家に送られてきた手紙。奥様、の出だしで始まるその手紙には恐るべき事実が記されていた――。過程といい、オチといい、思わず笑ってしまうユーモア・ホラー(?)。色々突っ込み所はあるが、敢えて一つ挙げるとすればやっぱりオチか。「わざとやってるだろ、お前」(笑)
『鏡地獄』……病的なまでに鏡を愛する男。彼は様々な鏡を作っては、それが映し出す不可思議な世界に没頭していく――。友人の話、という前フリで語られる赤い部屋の姉妹編? 一応ホラーになるのだろうが、ミラーハウスとかがある現代ではあまり恐怖を感じないような気も。
『芋虫』……戦争で四肢を失い、口もきけず、耳も聞こえなくなった夫の世話をする妻。周囲の人間は彼女の献身的な行為を褒め称えるが――。何とも言えない作品。妻の感情の移り変わりは納得いくし、最後の薄ら寒い感想も解る気がするが、面白い、とは言い難い。
ちょっと性格悪い明智先生の話が一番楽しいです。
むかーし二時間ドラマでやってた乱歩シリーズが好きだった人なら間違いなくオススメ。(微妙な言い方!)