つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

頭はぶつけません

2007-01-30 23:49:30 | ゲームブック
さて、記憶が間違ってなければいいけど、な第791回は、

タイトル:カイの冒険
著者:健部伸明
出版社:東京創元社 創元推理文庫(初版:H2)

であります。

ナムコの『カイの冒険』のゲームブック。
原作はパズルアクションですが、こちらはちょっと不思議な冒険もの。
悪魔ドルアーガからブルークリスタルロッドを奪還するため、イシターの巫女カイがドルアーガの塔に挑みます。

『ドルアーガ三部作』と同じ会社から出ていますが、作者も内容も全く別物です。
もっとも、だから面白くないなどと言うつもりは毛頭ありません。
むしろ雰囲気だけならこちらの方が好みかも知れない。

主人公カイと彼女の目的はゲームと同じなのですが、舞台となるドルアーガ塔の内部構造は原作と全く異なります。

つーか、そもそも塔の中じゃないし。(笑)

ドルアーガの魔力により塔内は一種の異空間と化しており、各階が独立した世界として存在しています。
その世界ごとに設定された条件をクリアしない限り、次の階に進むことはできません。
次々と登場する箱庭世界はバラエティに富んでおり、非常に不思議な旅を楽しめます。

しかし、これで素直に最上階まで行けたら面白くない。

カイは各階をクリアするごとに、女神イシターから授かった神具を一つずつ失っていきます。
全部で七つある神具すべてを失った時、たどり着いた場所は何と冥界。(!)
そこで彼女は、女神イシターの姉で冥界の女神でもあるエレシュキガルから衝撃の事実を知らされます……バビロニア神話の『イシュタルの冥界行』を再現したこの展開は非常に上手い。

女神の力を借りたカイは、天界を経由して再びドルアーガの塔に戻るという荒技を敢行するのですが――それ以降は本編で。
個人的には、神様ごっこができる天界第一層のエピソードが好きでした。
「どうですか、神になってみた気分は?」という、ナムタル霊の皮肉っぽい台詞が良いです。(笑)

『ドルアーガの塔』以前の話のため、カイが悪魔に破れるのは確定なのですが、ストーリー的にかなり上手く処理していました。
何より、彼女の旅が全くの無駄ではなかった、ということになっているのがいい。(原作ゲームでは単に石にされるだけだったしね……)
戦闘システムもかなり簡単なものを使用しており、ややこしいゲームは嫌いだという方でも楽しめます。

紛れもない怪作ですが、オススメです。
ただし、現在ではかな~り入手困難……らしいけど。