さて、スリーセブンも近くなった第770回は、
タイトル:飾られた記号―The Last Object
著者:佐竹彬
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H17)
であります。
お初の作家さんです。
近未来の学校で起こった殺人事件を扱うサイバーミステリ。
タイトルが非常に秀逸で、この作品そのものを表しています。(皮肉)
*
約半世紀前に発表された説により、世界は激変した。
あらゆる物質は情報を持ち、情報は場として存在するという――情報場理論。
それが、情報を確認するだけでなく、操作することも可能な概念だと判明した時、人は一斉に過去の遺物の排斥を始めた。
多くの国が情報学教育に制限を加えたのに対して、極東の島国はそれを広く開放する選択をした。
現在、国立情報学専門学校『パスカル』では、数千人もの生徒達が情報学を学んでいる。
煩わしさからの解放……人はどこまで己の欲を満たそうとするのか?
姉の影響で情報学に興味を持った朝倉渚が、パスカルに入学して二ヶ月が過ぎた。
学んでいることは他の学校と大きく異なるものの、学生生活そのものに大きな違いはない。
しかし、あるディスクショップでクラスメイトの日阪道理――通称『ファイ(空集合)』を見かけた時から、何かが大きく崩れ始めた……。
*
いわゆる、探偵役の計算型少年と狂言回しの感覚型少女が謎を解くミステリです。
この手の話のヒロインは元気系が定番ですが、本作の渚は内向的で静かなタイプなのが毛色が違うと言えば違う。
最初からシリーズ物として書かれており、最後に堂々と次回への引きが用意されています。
以上。
え? これだけじゃ紹介になってない?
ここで終わっとく方がファンに喧嘩売らずに済むんですが……。
仕方ないので、もうちょっとだけ続けてみます。
この世界を支配している『情報場理論』の設定は割と面白いと思います。
理論の説明が上手いとは言えませんが、利用の仕方は、らしい、のではないかと。
これがないと事件そのものが成立しないことからも、作品に必要なものにはなっています。
では事件はどうか? 一言で言えば――やっつけ仕事です。
図書館で死体が見つかり、容疑者が浮かび、推理も糞もなく事件が終わります、それだけ。
読者に与えられる情報は、容疑者達の入館・退館時間、そして、渚が遭遇した謎の現象のみ。
この謎の現象を解く鍵は事件解決直前の章まで明かされず、しかも、それが解った時点で謎があっさり解けてしまうという下手くそな見せ方をしています。(駄目だこりゃ)
では、キャラはどうか?
一人称の語り手だけあって、渚のキャラは他に比べてはっきりしています。
常に何かに追われているような、不安定な心理は上手く描けていると言えるでしょう。
ただし……彼女は物語の案内役としてはちと問題があります。危機感を覚えた時、地の文を感覚一色に変えてしまうのです。
これは、渚のキャラクターが悪いと言うより、作者の『こういう格好いい文章を書きたい』という願望のせいだと思うのですが、唐突に地の文が一段落一単語の白紙に変わるのです。
いちいち区切って効果出してるつもりなんだろうけど、単にウザイだけという、あれですね……しかも長い時は4ページぐらい続く。デジタルノベルと勘違いしてないか、作者?
これで言葉の選び方が上手ければまだマシなのですが、単に情報と感想を羅列しているだけなので、情緒もへったくれもありません――つーか、下手。
おかげで渚の印象まで悪くなってしまいました、まったくもう……。
他のキャラは――味も素っ気もナシ。
探偵役の道理君は、ふざけた名前の通り、記号にデコレーションしただけの存在です。
作者は渚の心理描写を使って、『道理は怖い存在なんだ!』とか『実は結構可愛いところもあるんだ!』とか、色々煽ってきますが、読んでるこっちは何も感じません。強いて言うなら、『思わせぶりなカッコ付け野郎』かな。ああ、これは作者のことか。(笑)
オマケのように出てくる三人の容疑者達に至っては、記号と言うか、単なる『点』です。キャラとすら呼べません。
キャラ物としても、ミステリとしても粗悪品です。
さて、どう処分してやろうか……。
――【つれづれナビ!】――
◆ 『ライトノベル一覧表(その1)』へ
◇ 『つれづれ総合案内所』へ
タイトル:飾られた記号―The Last Object
著者:佐竹彬
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H17)
であります。
お初の作家さんです。
近未来の学校で起こった殺人事件を扱うサイバーミステリ。
タイトルが非常に秀逸で、この作品そのものを表しています。(皮肉)
*
約半世紀前に発表された説により、世界は激変した。
あらゆる物質は情報を持ち、情報は場として存在するという――情報場理論。
それが、情報を確認するだけでなく、操作することも可能な概念だと判明した時、人は一斉に過去の遺物の排斥を始めた。
多くの国が情報学教育に制限を加えたのに対して、極東の島国はそれを広く開放する選択をした。
現在、国立情報学専門学校『パスカル』では、数千人もの生徒達が情報学を学んでいる。
煩わしさからの解放……人はどこまで己の欲を満たそうとするのか?
姉の影響で情報学に興味を持った朝倉渚が、パスカルに入学して二ヶ月が過ぎた。
学んでいることは他の学校と大きく異なるものの、学生生活そのものに大きな違いはない。
しかし、あるディスクショップでクラスメイトの日阪道理――通称『ファイ(空集合)』を見かけた時から、何かが大きく崩れ始めた……。
*
いわゆる、探偵役の計算型少年と狂言回しの感覚型少女が謎を解くミステリです。
この手の話のヒロインは元気系が定番ですが、本作の渚は内向的で静かなタイプなのが毛色が違うと言えば違う。
最初からシリーズ物として書かれており、最後に堂々と次回への引きが用意されています。
以上。
え? これだけじゃ紹介になってない?
ここで終わっとく方がファンに喧嘩売らずに済むんですが……。
仕方ないので、もうちょっとだけ続けてみます。
この世界を支配している『情報場理論』の設定は割と面白いと思います。
理論の説明が上手いとは言えませんが、利用の仕方は、らしい、のではないかと。
これがないと事件そのものが成立しないことからも、作品に必要なものにはなっています。
では事件はどうか? 一言で言えば――やっつけ仕事です。
図書館で死体が見つかり、容疑者が浮かび、推理も糞もなく事件が終わります、それだけ。
読者に与えられる情報は、容疑者達の入館・退館時間、そして、渚が遭遇した謎の現象のみ。
この謎の現象を解く鍵は事件解決直前の章まで明かされず、しかも、それが解った時点で謎があっさり解けてしまうという下手くそな見せ方をしています。(駄目だこりゃ)
では、キャラはどうか?
一人称の語り手だけあって、渚のキャラは他に比べてはっきりしています。
常に何かに追われているような、不安定な心理は上手く描けていると言えるでしょう。
ただし……彼女は物語の案内役としてはちと問題があります。危機感を覚えた時、地の文を感覚一色に変えてしまうのです。
これは、渚のキャラクターが悪いと言うより、作者の『こういう格好いい文章を書きたい』という願望のせいだと思うのですが、唐突に地の文が一段落一単語の白紙に変わるのです。
いちいち区切って効果出してるつもりなんだろうけど、単にウザイだけという、あれですね……しかも長い時は4ページぐらい続く。デジタルノベルと勘違いしてないか、作者?
これで言葉の選び方が上手ければまだマシなのですが、単に情報と感想を羅列しているだけなので、情緒もへったくれもありません――つーか、下手。
おかげで渚の印象まで悪くなってしまいました、まったくもう……。
他のキャラは――味も素っ気もナシ。
探偵役の道理君は、ふざけた名前の通り、記号にデコレーションしただけの存在です。
作者は渚の心理描写を使って、『道理は怖い存在なんだ!』とか『実は結構可愛いところもあるんだ!』とか、色々煽ってきますが、読んでるこっちは何も感じません。強いて言うなら、『思わせぶりなカッコ付け野郎』かな。ああ、これは作者のことか。(笑)
オマケのように出てくる三人の容疑者達に至っては、記号と言うか、単なる『点』です。キャラとすら呼べません。
キャラ物としても、ミステリとしても粗悪品です。
さて、どう処分してやろうか……。
――【つれづれナビ!】――
◆ 『ライトノベル一覧表(その1)』へ
◇ 『つれづれ総合案内所』へ