つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

古くささ満載

2007-01-12 20:11:29 | ホラー
さて、ラノベの持禁が実は持禁でないのがわかったの第773回は、

タイトル:おさわがせ幽霊ゴースト
著者:竹河聖
出版社:朝日ソノラマ ソノラマ文庫(初版:H1)

であります。

竹河聖と言えば「風の大陸」シリーズ……と言いたいところでもないんだけど、いちおう昔読んでいたこともあり、懐かしさにかまけて借りてみると……古っ!(笑)
とは言え、確か竹河聖、元々の畑であるホラーと言うことで、それなりに期待しつつ……。

では、本書のことから。
オムニバス形式の短編連作で、主人公である高校生、佐藤一太郎とそのはとこ海棠華藻、玉緒の美人姉妹の3人のホラーコメディであります。
短編なので例の如く各話から。

「第一話 首なし美女でございます」
外面がよく美人な海棠姉妹に幼いころからいじられてきた一太郎は、姉妹の我が儘とその付き添いで親戚の旅館を訪れていた。
いつもながらに一太郎の前では傍若無人なふたりは、昼間に旅館の裏手で複数の話し声を聞く。

旅館の裏手が墓地であることを一太郎から聞いたふたりは、まさかと思いつつ、その日は眠りにつくが、まさかはまさかではなかった……。

「第二話 幽霊屋敷でございます」
一太郎とおなじ高校に通う海棠姉妹は、何かとお転婆な本性を語る一太郎に報復すべく、一太郎たち一家が仮住まいしているマンションを訪れ、一太郎を人気のない神社に連れ出す。
そこで首だけの幽霊に襲われるが、そのときは怪我もなく帰ることが出来た。

後日、小さな仔猫をもらった海棠姉妹は、いつものように一太郎を付き合わせ、かわいらしい仔猫にご満悦だったが、ふとしたことでバスケットの中から逃げてしまった仔猫を追って廃屋に入り……。

「第三話 学園七不思議でございます」
一太郎が通う高校で最近、男子更衣室で幽霊が出ると言う噂があった。
幽霊に、妙な縁がある一太郎は真っ昼間から出る幽霊の話を聞きながら、よくある学校の怪談話だと思っていたし、関わり合いになりたくもないとも思っていた。

だが、海棠姉妹の姉、華藻が過去のお転婆なときの写真を入れた定期入れを学校に忘れたことから玉緒も含めた3人は夜の学校に忍び込み……。

「第四話 背後霊でございます」
このところ頻繁に起きる幽霊との遭遇に嫌気が差していた3人は、またもや現れた満員電車並の幽霊たちに辟易し、第二話で少し世話になった神社の神主に助けを求める。

神主の見立てで3人に背後霊がついていることがわかり、お祓いをすることになったが背後霊はしぶとく抵抗し、それを目当てに神社に住む幽霊たちまで現れる始末。
果たして背後霊は無事、3人のもとから去ってくれるのか……。


良くも悪くも昔らしいホラーコメディ、と言えるだろう。
一太郎に海棠姉妹は、いまどきのラノベみたいに潜在的にすごい力があるとか、そういうこともなく、単に遭遇する幽霊……しかも一太郎たちで「遊んでいる」幽霊たちに振り回されたりする姿をコミカルに描いているだけ。
第四話で出てくる神主も、お祓いと言いながらも、らしいことはしているだけでラノベらしい「戦う」ということとは程遠い。
そうしたのを期待すると拍子抜けするだろうし、おもしろみも少ないだろう。

またコメディであるため、怖さと言った面からも縁遠いので、怖さを求めるにも向かない。
コメディだから笑えるかと言えば、まぁ、そこまで笑えるほどでもないが……。

っていいとこなしじゃん、これじゃ……(笑)

まぁ、いまから読むと、この時代よりもやや古めの海棠姉妹のキャラやいじられながらも美人ゆえにまんざらでもない一太郎のキャラなど、古くさい形のキャラ設定が何とも微妙な味になっているところはおもしろい。
話そのものも定番で、安心して読めるところはいいところだろう。
文章も重すぎず軽すぎず、多すぎず少なすぎずでバランスはいい。

読むものがなくなって、手軽に何かないかなぁ、と言ったくらいのときに「借りる」のはいいかもしれない。