つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

毎週日曜はラノベの日

2007-01-21 21:12:11 | ファンタジー(現世界)
さて、出来るかぎりそういうことにしとこうかなの第782回は、

タイトル:護くんに女神の祝福を!
著者:岩田洋季
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H15)

であります。

カテゴリのファンタジーをゼッタイにトップから落としてなるものか!
と言うことで、ラノベ=(カテゴリ)ファンタジーと言う区分けをしていることもあって、なるべくラノベを週に1回は読むようにしよう、と思ってる。
まぁ、それだけではない理由もあったりはするんだけど。

さて、今回のラノベはAmazonによるとこの1月に10巻が刊行された人気シリーズの第1巻。
ストーリーは、


ビアトリス(平たく言えば、感応する能力があればこれを用いて超能力のような様々な現象が起こせるもの)によって、幼いころ、トンネルの崩落事故から救われた吉村護は、念願かなって日本におけるビアトリスを専門に教える学校、東京ビアトリス総合大学付属高校に、2学期から通うことになっていた。

転校初日、秋にもかかわらず季節はずれの桜が満開の昇降口、そこに佇む美貌の2年生の先輩に出会う。
意志の強そうな視線に戸惑いながら、言葉を交わした後、初日の授業を受ける護だったが、昼休憩になって朝出会った先輩の訪問を受ける。

その先輩……鷹栖絢子は、護に向かって突然、「私と付き合いなさい」と宣言した。
「魔女ベアトリーチェ」「ビアトリスの死天使」と呼ばれるほど有名人である絢子の告白は、その日のうちに学校に知れ渡り、絢子が所属する生徒会は、常ならぬ絢子の行動に、護を生徒会に抱き込もうとする。

生徒会が巻き起こすごたごたに、ビアトリス研究を狙った侵入未遂事件……様々な事件の中で、絢子の告白にお試し期間を願い出た護は……。


作品としては、ビアトリスというものを用いたアクション要素を除けば、極めて正統派のラブコメ小説、と言える。
元首相を祖父に持つお嬢さまで、世界的なビアトリス使いの天才、わがままで高飛車だが、根は極めて純情、と言う「乃木坂春香の秘密」に登場するヒロイン、乃木坂春香とは正反対だが、いわゆるお嬢さまキャラの典型の絢子。

もちろん、対する護はこうしたタイプのヒロインにお約束と言える柔和で気弱なタイプ。

まぁ、まずこうした主人公ふたりのキャラ設定を知るだけで、どういう話になるのか、と言うことはストーリー紹介を読めば、概ね想像が出来よう。
と言うか、ラストまでまったくお約束を外してくれない展開のラブコメなので、相棒のように、こうしたラブコメにさぶいぼ症候群を発症するひとには、まず読めない話であろう。

耐性のある私でさえ、ラストはややさぶいぼ気味なくらいだったんだから、ある意味、「乃木坂~」に匹敵する作品である。

さて、評価と言う面で言えば、さすがにシリーズとしてはふたつめで、冊数としては5冊目となるだけあって、目立って破綻しているところはない。
護がビアトリスに憧れる要因となった事故の救出劇、絢子の家庭事情など、今後に続く伏線もしっかりあるが、「絢子の告白に対する護の対応」という基本のストーリーの流れはきちんとまとめており、2巻以降のため、オチをつけない作品がある中、これは好印象。

また、文章もこれだけ書いていれば、ラノベにありがちな「…」(3点リーダ)や「―」(罫線)の多用もほとんど見られないし、文章量も適度にあり、流れを阻害するようなところもほぼない。
倒置法の多用がやや目につくが、この辺りは好みの問題もあり、微々たる点であろう。

ビアトリス、と言う超能力もどきの設定も、設定屋にありがちな、読むのに苦労する説明も少なめで、ストーリーのほうを重視している姿勢が窺えて、これも好印象。

かなりベタな学園ラブコメで、さぶいぼ症候群のひとには向かない、と言うところを除けば、作品としてはきちんと評価できるし、欠点も少ない。
人気が出る要素はきちんと押さえており、シリーズが10巻も続いているのもわかるだけの、比較的しっかりした作品で、点数の甘いラノベ点ということを考慮しても、評価は高め。

お約束好きで、ラブコメが好きなひとにはかなりオススメ出来る作品であろう。
ラノベとしては、だけど、総評、良品。



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