つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

三人組

2006-03-24 21:02:13 | 小説全般
さて、別にズッコケはしないの第479回は、

タイトル:夏の庭-The Friends
著者:湯本香樹実
出版社:新潮文庫

であります。

主人公の「ぼく」こと木山と、塾やサッカークラブが一緒の友達河辺と山下の三人組。
そんな三人の中で山下はある日、祖母の葬式のために学校を休んだ。

戻ってきた山下の語る「死んだ人」
それをきっかけに三人は、ひとり暮らしでいまにも死にそうだと噂されていた老人の死ぬ瞬間を見るために、「観察」を始める。
最初は観察するだけだった老人と、ひょんなことから交流が始まり、洗濯物を干したり、草むしりをしたり、スイカを食べたり、戦争の話を聞いたり……。

いつの間にか、三人は夏休みの間、足繁く老人のもとへ通うようになっていく。

途中まではこんな感じかなぁ。
まぁ、平たく言えば小学六年生の三人組が、老人との交流、そして死を通して成長していくものだろうか。
奇を衒うところもなく、とてもわかりやすいストーリー展開で読みやすい。

肝心なことがいつも言えない、もしくはタイミングを逃してしまう木山や、貧乏揺すりがクセで独特の言動や行動をする河辺、でぶのあだ名そのままに太っていて臆病な山下。
それぞれの性格の違いもわかりやすく描かれている。
また、老人との交流だけではなく、それぞれの家族……いつもご飯を食べるときにじっと見つめている木山の母、親が離婚して母子家庭の河辺、とりあえず円満そうな魚屋の山下のストーリーも平行して描かれている。
ラストのほうではこの木山の家族の話のオチもあって、これもまぁ予想通りの展開で、わかりやすい。

……と、とにかくわかりやすい小説で、安心して読めるし、いいところだとは思うのだが、ただそれだけで作品の雰囲気も乏しく、おもしろみというものがほとんど感じられない。
三人組の各キャラも、わかりやすいのだがステロタイプでしかないからわかりやすい、と言う面もある。
老人の語る戦争の話や境遇、家族の話など、いろいろと思うところはあるが、いかんせんストーリーのおもしろみがほとんどないので、深く入っていけない。

映画化や舞台化されたり、10カ国以上で刊行されたりと人気がある話なんだろうがねぇ。
まぁ、200ページあまりの比較的薄い小説なので気軽に手に取れるほうではあるし、読みやすいのであまり本を読まないひとにはいいかもしれない。