つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

悟っちゃいました?

2006-03-22 16:43:12 | 小説全般
さて、名前だけは知っていたシリーズな第477回は、

タイトル:かもめのジョナサン
著者:リチャード・バック
文庫名:新潮文庫

であります。

映画化されてたんですね……初めて知りました。
飛ぶことにしか興味を持てないカモメの人生(?)を描いた物語です。
百三十頁ちょっと、と手頃な長さなので手に取ってみました。

カモメのジョナサン・リヴィングストンは今日も飛ぶ練習に夢中になっていた。
普通のカモメにとって、飛ぶこととは餌をとるための手段に過ぎない。
だが、ジョナサンにとっては、生きることと同義だった。

修練の果てに、ジョナサンは時速三百キロを越える超高速飛行を実現する。
だが、その見返りに得たものは、群れからの永久追放処分だった。
彼は流刑地である『遥かなる崖』を越えて、さらに遠くへと飛んでいった――。

『遥かなる崖』って、まんま彼岸ですね。

というツッコミは置いといて……本書は三部構成になっています。
カモメ一族のアウトサイダー、ジョナサンが群れを離れるのが第一部、より高次の飛行技術を学ぶのが第二部、覚えた技術を弟子に伝えるのが第三部。
作者本人が飛行機乗りだけあって、訓練の話や、飛行の描写はかなりリアリティがあり、面白いです。

ただ問題は……この話、第二部から妙に宗教的な色彩を帯びてきます。
より高次のカモメ(笑)に導かれて、飛ぶために生きている群れの一員となった所から雲行きが怪しくなり、天国とは何かという問題が出て――轟沈。
第三部に至っては、妙に悟っちゃったジョナサンが愛まで語り出す始末で……思わず、「どこの教祖様ですか?」と、聞いてみたくなりました。

それと、訳者の五木寛之も指摘しているのですが、この話には女性が殆ど出ません。
そういえば、どっかの偉い人も悟りを開くために奥さんと子供ほっぽり出しましたね。
ここらへんの考え方は東西似てるかも知れません。

第一部だけはかなり面白いです、それ以降は萎えるだけ。
疲れた時に読むと救われるかも知れません、飽くまで錯覚ですが。