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さんたろう日記

95歳、会津坂下町に住む「山太郎」さんたろうです。コンデジで楽しみながら残りの日々静かに生きようと思っています。

小さな駅の午後静かです

2017-03-12 | 日記
JR会津坂下駅の跨線橋の上からの眺めです



「古里の訛り懐かし停車場の・・・」
私たちの町の坂下駅は小さくて乗りおりする人の少ない静かな停車場なんですけども、跨線橋上に立つといつも啄木のこの歌が思い浮かぶんです。

わたしはもう充分の老体ですので車の遠乗りは控えなければなりません。ですから古里の奥会津只見を訪れるときはJR只見線の列車に乗ります。JR只見線は6年前の新潟福島豪雨による洪水で橋梁や線路が大きな被害を受けて川口駅から只見駅までの間はいまだに復旧せずその区間はJRの代行バスが運行しております。

3年ほど前の冬、私は豪雪地帯の奥会津の中でも最も豪雪と言われる只見町蒲生地区訪れました。はげしく吹雪くなかの豪雪はすごいものでした。



川口から先はJRの代行バスでした。猛烈な吹雪のためバスの乗客は少なくてバスの中は私とバスの運転手さんの二人だけでした。運転さんは笑顔の綺麗な女の方でした。

運転手さんに[蒲生で下ろして下さい、久方ぶりの訪問で地区の地理がよく分からないんです」と言うと運転手さんは「豪雪の探訪ですか、近ごろ皆さんよくお出でになります。どこからお出なんですか」とおしゃるんです。「坂下ですけど、只見は私の古里なんです。蒲生には久方ぶりの訪問なんです。」というと運転手さんの言葉がとたんに変わりました。

「そうがや~、よくきゃったなむ、しなたどこでやったや~、おら~深沢だぞや~」久方ぶりの只見言葉です。私は嬉しくなって私も只見言葉で応じて会話が弾み楽しいひとときをすごすことが出来ました。

「そうがや~、よくきゃったなむ、しなたどこでやったや~、おら深沢だぞや~」
これは只見ことばの丁寧語(敬語)なんですよ。
「そうですか、よくお出でになりました、あなたはどこの地区のご出身なんですか、私は深沢なんですよ]共通語に意訳するとこんなことになります。私にとってはこの只見言葉がすごく懐かしいんです。

地方の言葉、いわゆる方言はテレビや学校教育の影響などで消えて行くように思います。
福島県側から尾瀬の登山口の檜枝岐村が新日本紀行で放映されました。感動的なすばらしい放映でした。でも驚いたことに村の人たちの会話がすっかり綺麗な共通語になっていました。私が小学校の児童だった頃、70年ほどの昔ですけど私は檜枝岐村の隣の集落でくらしていました。その頃檜枝岐の人たちの言葉は「うぐいす言葉」と言われる美しい発音で独特の美しいイントネーションの言葉で奥会津の言葉とは全く違っていました。美しい澄んだ発音はそのままなんですけど「美しいうぐいすことばのイントネーション」が消えていました。かつて貧しかった檜枝岐村が今では豊かな観光地(一種の都会)になってしまったからなんでしょうね。私の住んでいた隣の集落のことも少し放映されました。そこの私と同じ年代の高齢の人たちの会話は私の子どもの頃と同じ奥会津言葉でした。嬉しかったんです。

坂下駅は懐かしい古里只見への玄関口なんです。跨線橋の上に立つと古里を出て坂下町民になってもう60年もたつ老体の爺いなのに思いは線路の先の遠い遠い古里只見へいってしまうんです。「あの人たち今頃なにしてやんべな」(なにしていっらしゃるだろうな)と懐かしい只見言葉が思い浮かぶんです。


春の雪の吹雪く日が三日ほど続いたんですけどすっかり晴れて坂下の町通りも陽光の明るい春になりました。それでしばらくぶりに坂下駅を含めた街中の散歩をすることにしました。



坂下駅の跨線橋の上から会津若松方面の眺めです。構内には上り列車を待つ数人の人がホームの椅子に腰掛けているのが見えるだけで静かでのどかでした。


 
構内だけが複線になっていてホームも二つあります。只見線は単線でほとんどの駅はホームが一つで駅員のいない無人駅です。坂下駅では上り列車が左側のホームに入ると、下り列車が右の線路のホームに入り、下り列車が発車して数分後に上り列車が発車するのです。

定刻通り上り列車が線路の遠くからライトを二つをつけて警笛をならしてやってきました。踏切のかねがカンカンと聞こえてきます。古里只見からの列車です。跨線橋の上でカメラを構えてシャッターを切る私の心は嬉しさにふるえます。この線路の遠くに古里只見がある、懐かしさに胸が震えるのです。



右側の線路のホームで下り列車を待つ人たちです。待合室の中にも人が見えましたから10人前後の人たちのようでした。あれ、機材の入ったリュックをしょって一眼デジで私の立っている跨線橋を撮っている方が見えました。撮り鉄さんですね。JR只見線には各地からたくさんの撮り鉄さんがお出でになります。



上り列車に乗車される人たちです。この日は土曜日でしたけど高校生が多いみたいです




下り列車が右側のホームに入ってきました。会津若松方面からの人たちがたくさんおりました。やっぱり高校生が多いみたいです。学校は休みだとおもうんですけど制服姿の人たちが多いようですので部活にでも行っているんでしょうね。



下り列車発車して数分後上り列車が駅長さんに見送られて発車して行きました。そして坂下駅の構内は人の姿の見えない静かな駅になりました。



跨線橋の上の20分ほどの短い時間でした。でも心温まるひとときでした。車の交通と違って小さな駅ですけど駅にはなんか物語り温かい心があるような気がします。いいひとときっでした。楽しかったんです。