
糸桜里の湯、しおりの湯と読みます。私たちの町の町営の温泉です。私たちの町の杉の集落のお薬師さまには糸桜の古木があります。会津五桜の一つです。その糸桜の咲く里とゆうことで糸桜里の湯と呼んでいるんです。
ばばちゃんは前日にじじいに命じて買っておいたせんべいやら果物(ばばちゃんは足が痛くて歩行困難で買い物は全部じじいです)それに渡辺淳一の小説1冊に着替え、自分の撮った写真などを大きな袋に詰めて車の後ろに乗ります。
せんべいと果物は仲間と話しながら食べるために、写真はじじいから見ればくだらないものばかりなのに仲間には好評でみんなに 配ったり、話のたねにしたりするんだそうです。
そして帰りは農家のばあちゃんから貰ったたくさんの野菜、茄子やキュウリやトウキビ、時には笹団子などずっしりと重い荷物をじじいに持たせます。
一日おきに行く温泉にはたくさんのお仲間がいるみたいです。町の人だけでなく、喜多方・東山・郡山など誰とでもすぐ仲良しになるのがばばちゃんの特技のようです。
夕方迎えにいってじじいも温泉につかってロービーで休んでいると、私の知らないおばあちゃんやおじいさんに挨拶されるので、じじいも笑顔で「お世話になってます」と返さなければなりません。面倒だし、恥ずかしいし、煩わしいけどばあちゃんのメンツのためにヤムを得ません。
中にはほれぼれするような美しい笑顔で挨拶される方もいらっしゃって、そのときばかりはじじいもほんのりと楽しくなります。まぁいってみればその方にお会いするのもひそかな楽しみのひとつなのかもしれません。
ばばちゃんはじじいにそっと、「あの人たちはそれぞれに連れ合いをなくされた方で仲良しになったお二人だよ」と教えてくれたりします。
お幸せそうなお二人さんの笑顔の美しいこと、ちょっとうらやましくなったりするじじいです。
私たちの町はとても老人を大事にしてくれます。70歳以上の老人は一日温泉を楽しんで料金は200円です。備え付けのシャンプーも、ボディーシャンプーも使い放題、サウナも、薬草の湯も、露天風呂も自由に楽しめます。
仲間とポットのお茶を飲みながら、お昼には手打ちの生そばも食べて(食堂で食券を買って)一日を楽しめるのです。ばばちゃんたちには天国なんだと思います。
ばばちゃんの友達は90歳になって町から5万円のお祝い金をもらったので孫たちに分けようとしたら笑って誰も受け取ってくれなかったとこぼしていたそうです。あたりまえですよね、孫たちは現役ばりばりで活躍してる社会人なんですから。私もそれを聞いて笑ってしまいました。
ばばちゃんと違って独りが楽しいじじいですけど、ばばちゃんの話を聞いて、ふとじじいにも明るい笑顔をみせてくれる人はいないものかなどと思ったりする85歳のじじいです。
きょうはくだらないことをだべりすぎました。