迷宮映画館

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ブロウ

2001年09月17日 | は行 外国映画
もうアメリカでは4月ぐらいに公開されていて、アメリカの知人達はその話で盛り上がっていたのだが、ついていけなかった私。やっとついていけるころには、もう秋風が吹いています。
実在の麻薬王、ジョージ・ユングの数奇な半生をたどる、トゥルー・ストーリーもの。彼はいまだ刑務所に服役していて、今を生きている人物である。

ボストン・ジョージとあだ名されているようにマサチューセッツのいかにもアメリカ的な閑静な住宅街に両親と住んでいた。父親は暖房器具の取り付け工事の小さな会社をやっている。しかし、経営が行き詰まり、破産。貧乏はいやだ、と彼はカリフォルニアに一旗あげに行く。最初はマリファナを小さく売る程度のけちな商売をしていたが、だんだん規模が大きくなり、現地に飛行機で買い付けに行くようになる。才覚があったのか、彼の仕事はどんどん大きくなり、一大麻薬ディーラーになっていく。途中、恋人の喪失や収監、などいろいろなことが起きるが、切り抜けて、大きくなっていく。

その彼に転機をもたらしたのは娘の誕生。娘を愛し、娘のためにまっとうな人間に生まれ変わろうとする。しかし、一旦このような商売に手を染めてしまっては、やはり逃れられない。何度目かの逮捕、そして現在も服役している。

この中で描かれているのは、麻薬での商売のサクセス・ストーリー。「コカインって何?」などと、アメリカ人がコカインなど全然知らなかったあたりから、あっという間に世界中に広がっていく。その一翼を担っていたのがまさに彼なのだ。度重なる逮捕から、母はすっかり息子を見捨てているのだが、父親との絆だけはしっかりしていた。その父親との絆を自分もと娘に絆を求めていく。そのあたりの親子の絆は殺伐とした話の中で、大きな芯をしめている。

しかし、それに目が曇ってしまってはいけない。確かに同情の余地もあるのかもしれないが、彼の売ったドラッグでどのくらいの人間が死に追いやられたか、どのくらいの犯罪が起きたのか、どのくらいの人間が苦しんだか、今も苦しんでいるか。天文学的数値にあると思うのだ。この映像の中には麻薬によってぼろぼろになる人はほとんど出てこない。どんな犯罪者でも情愛はある、夢はある、反省があるとも描きたいのかもしれないが、その影に隠れた大きな罪を忘れてはいけないと思う。でもジョニー・ディップのあまりのうまさがこの犯罪者を、同情集める『根はいい人間なんだ』と思わせてしまったのかも。

「ブロウ」

原題「BLOW」 
監督 テッド・デミ 
出演 ジョニー・ディップ ペネロペ・クルス 2001年 アメリカ作品

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