迷宮映画館

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こころの湯

2001年09月10日 | か行 外国映画
都会の下町にある銭湯、「清水池」。古びて、雨漏りもするような風呂屋だが、常連たちがいかにも居心地よさそうにその場所にいる。大将と彼の知恵遅れの息子が切り盛りしている。そこに突然帰ってきた長男。彼は父の仕事を嫌って、シンセンで働いていた。長いこと帰ってなかったであろう里帰りだった。すぐに帰るつもりでいたのだが、いろいろな出来事があって、ついつい帰りそびれてしまう。

古びた町は再開発に対象となっており、そろそろ取り壊される運命にあった。みんな住み慣れたこの場所を離れなければならない。こんなに居心地のいい場所もなくなってしまうのだ。そんな日まで、彼らは風呂屋に通い、だべり、笑い、くつろいでいた。

いい映画です。一つ一つのエピソードがひろーいお風呂に足を伸ばしてゆっくり入ったみたいなほんわか、あったかい、やさしい気持ちにしてくれます。そういう気持ちにさせてくれる最大の魅力は主演の朱旭のすばらしさ。説教がましいことをいうわけでもないのに、にこっと笑って、肩たたかれると、それだけで気持ちが伝わってしまうのです。

こんなお風呂屋さんは昔はそこかしこにあったのですが。古びているのだけど、こぎれいで、番台にちょこんと座ってるおばあちゃん。(番台にはおばあさんで決まりです。)大きな鏡があって、壁には絵。あがったときには腰に手を当てて、ビンの牛乳を飲む。スーパー銭湯のあの妙に明るい風呂とは違うセピア色の世界です。でもこういったものは消えていかなければならないのです。「山の郵便配達」やこういう映画を見ると、中国も近代化の嵐の中で、こんなに切り捨てていっていいのかと自問している気持ちが見え隠れします。

でも、この映画から感じられたのは、消え去るものの潔さだったような気もします。ぜひ、見てください。

「こころの湯」

原題「洗澡 Shower」 
監督 チャン・ヤン 
出演 チョウ・シュイ(朱旭) ジャン・ウー 1999年 中国作品

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