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ファン・ジニ 映画版

2009年04月14日 | は行 外国映画
李朝時代の朝鮮。厳格な身分制度があり、貴族階級である両班に生まれれば、権力使い放題だが、下層階級から這い上がることは、まず不可能。

身分の低い女性は、両班のめかけになるか、下女として生きるか、果ては妓生(娼妓)として生きるしかない。

チニは松都の両班、黄家の娘だ。才女で、美人。彼女を見て、恋わずらいに陥って、そのまま亡くなる男もいるほどの器量だが、実は身持ちの悪い黄家の主人が、下女に手を出して産ませた子供だったことがわかる。

両班の娘ではないことがわかったからには、ここにいることがはできない。身分の低い女性は、前述のどれかしか、生きる道はない。チニが選んだのは、最後の道、妓生。

これからは自分の体と裁量で生きていかなければならない。遊郭に身を沈める前に、幼い頃から黄家に仕えてきたノミに貞操をささげることにする。しかし、チニの出自を明らかにしたのはノミ。

手の届かないはずのお嬢様のチニ。でも彼女の出自をばらせば、自分とつりあう身分になる。彼女の人生を狂わしたのは自分だ。でも、彼女を愛し続け、守り続けることを誓う。

妓生に必要なのは、ボディガード兼内縁の夫のような世話人という男。ノミはチニの世話人になるが、チニが酔っ払った男どもに抱かれるのを見ていられない。チニを辱めた男を半殺しにして、ノミは姿を消してしまう。

それから5年後。両班出身の妓生としての嫌がらせも乗り越え、どうやら、知性を売り物にした妓生として、名を上げていた。地方に赴任してきた長官すらも、手玉に取るチニは、ミョンオルと名乗って、一世を風靡していた。

そのころ、窃盗団が現れる。金持ちのところから金品や食べ物を奪って、貧しいものに与えている。当然、庶民に人気沸騰だが、お役人たちは、面白くなくってしようがない。

実は窃盗団の首領はあのノミ。ノミは、チニのもとを去ったあと、家を失った貧し人々を助けて、共同体のようなものを作っていた。しかし、ノミはお尋ね者。このままでは仲間も役人に捕らえられてしまう。

焦った長官は、昔からノミの弟分で、チニのところにいたケトンをとらえ、彼を餌にして、おびき出そうとする。チニは!!??ノミは一体????

ということで、映画版の「ファン・ジニ」のお話なのだが、TV版は全編見た。TV版のダイジェストっぽい内容なのかな、と思っていたら話は全くの別もの。登場人物はかぶっているが、その人柄や、人間関係なんかも全く違っている。さしはさまれる逸話はかぶるのだが、その描き方もまったく違っている。

ということは、こういう人たちがチニの周りにいましたが、あとは適当に色付けし、全然違う二編の話になったのか。それはそれで面白いが、やはり20何話の、たっぷり重量感ある、韓流のねちっこいどろどろ話を見たあとでは、お茶漬け風味で、ずいぶんとあっさりに感じてしまった。

でも、いままで両班の子女と思っていたのに、突然その特権をはく奪されて、それも全く自分には罪がないのに、まるで真逆の地位に落とされる。このあまりの落差がすごいけど、面白い。

で、貫かれたのがノミとチニの愛。でかいわりにいつもホニョ~とした役が多くて、声はいいのになああ、と思ってきたユ・ジテ。今回はなかなかがっしりとした演技を見せている。アクションもなかなか。身を挺して女を守る!で、いざ女の前にでると、ちょっと情けない風・・・と言うのも良かった。

TV版のチニは、もともとが低い身分の出で、本人の才能とそれこそ身を削るような努力、でもって並はずれた根性で、生き抜いていくのだが、それをまたハ・ジォンがぴったりに演じる。たぶん、ノミの立場だったのが謎の男だったが、実は身分が高かった・・というどんでん返しがあった。

これでもかと、何度もどん底に落とされ、小指一本で這い上がってる大波小波が見所だったのだが、映画版の言わんとするのはとにかく愛。貫いた愛。魂の愛。それかな。

あとは、極彩色の華やかな色のチマ・チョゴリが多いのが普通だが、黒とか深緑とか、群青いろなど、ものすごくシックな色のオンパレード。それはそれで素敵だったが、色街のお話にしちゃ、少々地味かな。

もうちっと色気があっても良かった気もするが、TV版を見なければ結構な満足感が得られそう。でも、TV版見て「ファン・ジニ」を知って、そしてこっちも見たい!と思うだろうから、どう見ても損な立場の一本かも。


***女性が自分の身を売る商売と言うのは、太古の昔から存在した!と言われるが、買うほうがいるからだ・・・との異論もあるが、ニワトリが先か、卵が先か、の論理がなるので、言及しない。

大概、どこの国にも存在する商売だが、朝鮮半島のそれは半端ではない。身分の高い人の宴席にはべり、詩を吟じ、四書五経に通じ、音曲を奏で、歌を歌い、舞い、気の利いたことを次々と発しないと、到底お呼びがかからない。

妓生であることを誇りにも思い、生半可な気持ちで誰でも気軽にやれる仕事だと思ったら、大間違いだ・・・と言うのを前になんかで読んだ。

身分は低いが誇りは高い。それが妓生。

◎◎◎

『ファン・ジニ 映画版』

監督 チャン・ユニョン
出演 ソン・ヘギョ ユ・ジテ リュ・スンリョン ユン・ヨジョン オ・テギョン チョン・ユミ エ・スジョン チョ・スンヨン キム・ウンス キム・プソン ソン・ミンジ パク・チョルホ


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