迷宮映画館

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The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛

2012年11月06日 | あ行 外国映画
ビルマ独立の父、現代では、アウンサンスーチーの父、といった方が通りがよくなったきらいもある人物、アウンサン将軍。太平洋戦争中は、それまでの宗主国だったイギリスからの独立運動の旗手であり、日本とともに戦った。日本が統治を始めると、反日闘争を指揮し、そしてつくりげられた国ビルマ!まさにこれから、本当の意味で今から始まる!!という時に暗殺されてしまった。1947年。

時代は過ぎ去り、1988年。イギリス・オックスフォードで教鞭をとる夫マイケル・アリスと二人の息子と暮らしていたスーチーは、ビルマにいる母の病気を伝えられる。ビルマに向かった彼女は、そこで起きている民主化運動と激しい抵抗を続けている学生運動を目の当たりにする。

今まで、祖国の伝え聞く惨状は知ってはいた。悲惨なことが起きているのも知っていた。でも、聞くと見るでは大違い。本当にとんでもない状態であることをまざまざと知る。母を家に連れ帰り、家族もイギリスからやってきた。さらに、彼女のもとに多くのビルマの活動家たちが集まってきた。あの将軍の娘。彼女のもとでなら、国民は結集する。選挙に出て、今の軍事政権に対抗するには、ぜひともスーチーに活動してもらうように要求する。

今まで外国にいて、経験もない身だが、皆の熱意に押され、民主化運動のリーダーとなることを決意する。国民の熱い思いは、自分たちの勝利を確信させ、着実に前に進んでいるこの時の様子からは、まさかこの後、あれだけの長きにわたる弾圧と自由を奪われる膨大な年月を過ごす羽目になるとは、夢にも思えない。

ここから軍政権の明らかな妨害が始まる。スーチーの家族は帰国、彼女へも帰るように強い圧力をかける。しかし、断固拒否するスーチー。各地で行われる集会は、国民の切なる思いがあふれていて、どこも満員。とうとう軍は、集会にも圧力をかける。集会の解散を命じ、銃を国民に向ける。そしてスーチーの眉間に向けられる。毅然と立ち向かうスーチー。

殉教者にしないために、銃はおろされるが、スーチーの人気はますます上がる。そして軍の行動はエスカレートしていく。国外でなんとか妻の力になろうと、マイケルは行動を起こす。ビルマの状況を世界に訴え、スーチーをノーベル平和賞の候補にする。世界の注目をビルマに向けさせ、妻の安全が確保できるのではないか。世界の状況と真逆の方向に行くビルマは、スーチーを軟禁し、活動家たちを捕える。

91年、ノーベル平和賞の受賞が決定する。そして、受賞の会場に、授与されるべき人はいない。

95年にアジアの国々の働き掛けが実り、いったん解放されるスーチー。久しぶりに家族と再会する。イギリスの家族のもとに帰れないスーチーは、妻として、母としての自分の戻るべきではないかと夫にいう。しかし、夫の深い理解と、愛情が妻をしっかりと包み込む。

マイケルは病魔に侵されてしまう。癌だ。余命はわずかだ。妻に会うために入国を申請するが、通らない。何度も何度も挑戦するが報われない。病身の夫にどうしても会いたい。スーチーは出国して、帰るべきではないかと葛藤する。しかし、マイケルは彼女に最後まで戦えと励ます。もし出国してしまったら、二度と祖国に帰ることはできないだろう。そして、スーチーは遠いビルマで夫の死の報を受け取る。

その後も何度かの軟禁状態に置かれ、国の状況は一向に良くならない。07年にまた大規模な民主化運動が起きる。仏教徒による大規模なデモだ。彼らはまっすぐスーチーの閉ざされて家の前に行く。そこには、民主化を願う人々の象徴、美しい花が咲いている。。。

というようなことで、アウンサン将軍の悲劇的な暗殺から、その娘・スーチーが、一介の妻であり、母である身から、活動家として生きている半生を約二時間で、すっきりわかる非常に有意義な作品であった。リュック・ベッソンが、こんな映画を作るんだ!ということにまずびっくりだったが、強靭な精神職と、美しさを兼ね備えた女性を描くこと長けている彼としては、絶好の題材かもしれない。これだけすさまじい人生を生きている女性は、今の世の中にいないだろう。

母の病気で祖国に帰るまで、民主化について頭を悩ましていたとはいえ、民主化のリーダーとなり、先頭を切って活動をするとは思ってもいなかったようだ。しかし、祖国に帰り、現状を見、自分の立場を有効に生かし、どう生きていくべきかをしっかと自分の身に刻み込んだ。それは妻として、母としての自分を殺さざるを得ないものであったが、マイケルのそこまでの愛ってのが、素晴らしすぎる。人をそこまで愛せるんだあ~と、若干うらやましくもあった。すごい夫婦だ。

何度も、何度もニュースで流され、どんな苦境に追い込まれても、絶対にめげない様子がよく写された。どんだけ強い人なんだろう・・・と思っていたが、そのバックにあったのは、夫への信頼と愛だったのかもなあ。もちろん祖国への大いなる気持ちはあったと思うが、マイケルが何とも素敵だった。

デビッド・シューリスをして、私はねっちょり男と昔から呼んでいるが、ねっちょり具合は健在。それが強い愛となっていたのがよい。はい、好きですよ、ねっちょり。(何と言ってもデビッドの傑作は「シャンドライの恋」!!!このねっちょりと愛の深さは、最高です!!!!)ミシェル・ヨーにはいつも脱帽。また素晴らしいものを見せてもらった。この人は本当に素晴らしい女優さんですわ。

現在、スーチーは、軟禁を解かれ、政治家としての活動も行えるようになっている。ほんのちょっと前まで、世界で最悪の地、治安の超悪い、軍政権下のとんでもない地として名を馳せていたビルマ。ランボーが最後の戦場として戦ったのもこの地であり、いかにとんでもないか、世界で最悪の地として描かれていたのも記憶に新しい。

今、ビルマは着実に前に進んでいるようだ。スーチーの理念はガンディーが貫いた非暴力、非抵抗主義。かの国が二度と軍政権の圧政下の道を行かないことを切に祈る。

ビルマのお土産。お手製ボールペン。



あえて、ミャンマーといわずに、ビルマと表現した。スーチーさんの理念にしたがって。

◎◎◎◎

「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」

監督 リュック・ベッソン
出演 ミシェル・ヨー デビッド・シューリス


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2 コメント

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こんばんは (はらやん)
2012-11-20 21:33:05
sakuraiさん、こんばんは!

>強靭な精神力と、美しさを兼ね備えた女性を描くこと長けている彼
僕も同じように思いました。
観る前はリュック・ベッソンっぽい話ではないかなと思いましたが、やはり強い女性を描くという点で彼らしいかなと感じました。
アウンサンスーチーの人生はよく知らなかったのですが、とても過酷なものだったのですね。
その中で強く生きてきた彼女に感銘を受けました。
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>はらやんさま (sakurai)
2012-11-22 15:45:20
思い返してみれば、SFやスパイや、全然畑は違っても、彼が求めてきたのは、強い女性像ですもんね。
ありかもです。
いろいろと勉強になりました。
知ってたつもりでいててはいけないと痛感しました。
学ばせてくれる映画に感謝です。
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