迷宮映画館

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血と骨

2004年11月08日 | た行 日本映画
大正12年、済州島から大坂に向かう船の甲板は、たくさんの人で埋め尽くされていた。皆、希望に満ちた目をしている。大きな夢を抱いて日本に、大坂にやってこようとする朝鮮半島の人たちだった。その中に一人の青年がいた。金俊平。並外れた体力と、才覚、執念、貪欲。彼の生き方は、否応なしに周りを引き込んでいく。

ほとんど手込め状態で妻にした英姫は、俊平に対する憎悪が生きるエネルギーになっているようだ。カマボコ工場を作り、猛然と働く俊平のところに、突然自分の子供だという男が転がり込んでくる。さもありなん。

妻の目の前で、公然と女を囲う。その生き方が、周りにどう思われようと、どんな迷惑をかけようとも、傷つけようとも構わない。凄まじい欲の塊のような生き方なのだが、落とし前だけはつけてる。

在日朝鮮人の生き様も、それぞれ描かれているのだが、それも色々である。住んでいるところが一つのコミュニティとなっているので、日本人と在日朝鮮人の対比、対立的なものはそれほど強く描かれていない。なので、金俊平という傑出した人物の生き様が、一層くっきりと、鮮明に見えてくる。あのエネルギーは一体どこからくるのか。怒りでもない、アイデンティティからでもないような気がする。もって生まれたものと言うしかない。壮絶である。壮絶に生きた。生々しい。こういう父親を持ってしまったことが、悲劇になったり、喜劇になったり。でも、彼を父親に持ってしまった人物がいる。それを否定も肯定もしていない。そのことを書かなくてはならないと思った梁石日の思いがこれを書かせたのだろう。そして、それを彼なりに描いた崔洋一監督。やっぱり、こういう映画を撮ってこその崔洋一。「クイール」もいいけど、やっぱ崔監督の仕事はこっちでしょう。

決して好きではない。楽しんでみる映画ではない。眉間にしわを寄せながら見続けなければならない。でも、目が離せない。そんな映画だ。オダギリジョー、でるたびにうまくなるなあ。クウガのときは原石だったのかしら・・。

『血と骨』

監督・脚本:崔洋一  
原作 梁石日  
出演 ビートたけし 鈴木京香 新井浩文 田畑智子 オダギリジョー 松重豊 2004年 日本作品


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