迷宮映画館

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ギャング・オブ・ニューヨーク

2002年12月14日 | か行 外国映画
1846年、移民の国アメリカの玄関口、ニューヨークでは二つのグループの抗争が激化していた。アメリカ独立後、アメリカで生まれたことを誇りにしている「ネィティブ・アメリカンズ」。一方、いまや移民の大多数を占めているアイルランド人勢力を率いる「デッド・ラビッツ」。この二つのグループを率いるおのおののリーダーが文字通りカリスマだった。隻眼のウィリアム・カッティング、肉屋をしている彼は肉裂き屋・・ブッチャーの異名でよばれていた。その迫力とスマートさは一級品。これを一時、引退といわれていたダニエル・デイ・ルイスが演じる。スコセッシが彼に出演を熱望し、また久々のルイスの凄みが感じられる。

アイルランド勢力を率いるカトリックの象徴のようなヴァロン神父。いかにも高潔そうで、頑と揺るがない人間性を演じているのがリーアム・ニーソン。この二人の壮絶な争いから話は始まる。勝ったのはブッチャー。そしてヴァロンの忘れ形見のアムステルダムは少年院に送られることになった。

16年後、少年院から出てきた彼をヴァロンの息子だとわかる人は誰もいなかった。唯1人を除いては。16年の間、アムステルダムを支えていたのは父を殺したブッチャーに対する復讐心だった。久々に戻ってきたNYは、ほとんどの勢力がブッチャーの配下にあり、NYはブッチャーのものといってもいいような状態にあった。何とかブッチャーのお膝元に入り、彼の下ですごすアムステルダム。そこでの活躍が認められて、徐々になくてはならない存在になっていった。

でも、忘れていないのは復讐。ヴァロン神父を殺した日をいまだに祝っていると聞いて憎悪を募らせるだが、実はヴァロン神父に対する尊敬とその名誉をたたえていたのだ。ブッチャーに対して抱く気持ちが揺れていたのも事実だ。しかし、復讐を成し遂げねば、自分に対して許せない。時を越えた、また二つの勢力の争いと、当時の背景にあった南北戦争の実体とあいまって、ニューヨークはいままで起こったこともない壮絶な抗争の場になっていく。

1年間待たせられた映画の公開だ。スコセッシが30年間暖めていた題材だという。まさにNYの歴史絵巻といえるだろう。常々、アメリカの面白さは―――系という、まぜこぜの民族が作り上げた人間関係、人間模様にあると繰り返し言ってきたが、これはもろにその起点ともいうべき話だ。アメリカを作り上げたという自負の塊のWASPの生き様。後発の移民のアイルランド人たちのたくましさ。どこにでもいる中国人(すいません)。このあと、イタリア人たちが渡っていって、マフィアを作り上げたりするわけだが、この時期のNYに力点を置いて、この時期を描きたかったというスコセッシの思いがわかるような気がする。みな、生々しく生きてた。生のにおいがぷんぷんする。チネチッタにNYを完全再現して、作り上げたエネルギーを確かに受け止めた。

当時の南北戦争がどのように受け止められていたのかも意外なものだった。日本人にはわかりにくい背景かもしれないが、それを抜きにしても秀作だ。音楽もまた素晴らしい。久しぶりのレオナルド・ディカプリオでも話題を呼んだが、とにかくダニエル・デイ・ルイスの比類なき演技は驚嘆に値する。すごい。すごすぎる。心の琴線に触れるという映画ではないが、下っ腹にずしっとくる映画だ。半端な気持ちで見てもらいたくない映画かもしれない。

「ギャング・オブ・ニューヨーク」

原題「Gangs of NEW YORK」 
監督 マーティン・スコセッシ 
出演 レオナルド・ディカプリオ ダニエル・デイ・ルイス キャメロン・ディアス 2002年 アメリカ作品


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