迷宮映画館

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ミルコのひかり

2007年12月18日 | ま行 外国映画
イタリア・トスカーナ地方の目にも鮮やかに太陽が燦々と降り注ぐ地。子供たちはワイワイと遊び、思いっきり外を跳ねまわっている。その元気な一人が、映画が大好きなミルコ少年。

いつものように遊んでいたが、ちょっとした好奇心が大きな事故を招いてしまった。失明。突然光を奪われ、70年代のイタリアの法律に沿って、ミルコは盲学校に強制的に入れられてしまう。カトリック系の全寮制の学校。

ジェノヴァ近くのそこは、空気も何となく重い。空は冴えない色で、何となく重くるうしい雰囲気が漂っている。

昨日まで見えていたのに、劇的に変わってしまった自分の境遇をどうしても受け入れられないミルコ。点字の勉強も気乗りがせず、学友に突っかかることが多かった。

校長の方針は、あくまでも盲人は盲人として生きていかねばならない。盲人にできることは限られている。そのために生きるすべを教えていくのが学校で、可能性などを夢見てはいけないと教える。

そうだろうか。偉大な音楽家は、音楽を聴くときに目を閉じる。そこにあるのは無限の風景。盲人が可能性がないなどとは考えるべきではない。校長の方針に合点のいかないジュリオ神父は、ミルコにテープレコーダーを与える。これで自由に音を作っていい。音を探してごらん。音はミルコとともに、無限に広がるはずだ。

ミルコの表情も素晴らしいのだが、実際に盲人である人も演じている友達連中が素敵だ。夢に満ちて、耳を澄まし、前をどんどんと進んでいく彼らに希望がないはずがない。

表現する方法はなんでもいい。それがピアノだったり、チェロだったり、あるいは絵や、文章、そして音。自分が自分であるため、自分の能力を最大限に生かし、自分をあらわす方法を見つけられることができるということは何と素晴らしく、何と幸せなことだろうか。

ミルコは目の光を失ってしまい、ちょっとした障害を持ってしまった。しかし、それを不幸と思ってしまったとき、前に進むことはできない。不幸と不自由の違いだ(『鋼の錬金術師』より)。

自分の道を切り開けたとき幸せの色が見えた。彼らがいきいきと音を作り出して、うれしそうに音を鳴らしている姿は心の底から素晴らしいと思った。あの姿は、胸の奥から何かがにじみ出てきた。人間っていい。誰が何といってもやっぱりいい。そう素直に感じれた。

◎◎◎◎○

『ミルコのひかり』

監督 クリスティアーノ・ボルトーネ
出演 ルカ・カプリオッティ シモーネ・グッリー アンドレア・グッソーニ アレサンドロ・フィオーリ ミケレ・イオリオ フランチェスコ・カンポバッソ パオロ・サッサネッリ マルコ・コッチ


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
何故にハガレン? (GMN)
2007-12-19 20:37:26
クラスメイトの子とかも良かったですね。皆でわいわいやってる姿はなんか心から楽しそうでした。観てるこちらも心から可愛い子達だなって思えましたし。
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>GMNさま (sakurai)
2007-12-19 21:21:36
不幸と不自由ということを、この映画で強く感じたのですが、期せずしてアルフォンスがマンガの中で行ってるんですよ。
「不自由だけど、不幸じゃない!」って。
結構、いまはまってるマンガなのですが、いいセリフあるんですよね。メモりたいくらい。
でへ。

学芸会で、本当にうれしそうに音を作り出している姿を見て、涙が止まらなくなりました。感動して涙がこぼれてきたのは、なんだか久しぶりでしたわ。
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