迷宮映画館

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天国の本屋~恋火

2004年06月01日 | た行 日本映画
ジコ中なわがままピアニストの健太は、ある日、天国の本屋のバイトにスカウトされる。アンサンブルの仕事も首になってしまったので、しようがなく天国で働くことにする。人間は100年の時間を与えられており、地上で25歳までだと、天国では75年暮らすらしい。

香夏子は和菓子屋さんの看板娘。10年以上も途絶えていた花火を復活させようと仲間と奮闘していた。絶対にあげたいのが「恋する花火」。これを見た恋人達は結ばれるそうな。しかし、恋する花火を作れる職人瀧本は、事故を起こしてからもう花火つくりをやめていた。

健太は小さいときからの憧れの人に出会う。ピアニストの桧山翔子。彼女は花火職人の恋人だった。花火の事故以来、耳が不自由になり、ピアノが弾けなくなっていた。瀧本の上げる花火を見ながら作っていた未完成の交響曲、一度は捨てた花火つくりの人生、人の音が聞けないピアニスト、花火大会を成功させたい頑張り娘。みんなの思いがつながるか。

人は死ぬ、絶対死ぬ、何があろうと死ぬ。世の中ひっくり返ってもこれだけは絶対だ。世の中に絶対はない、というが、これだけは絶対だ。だから命は尊いし、いつ訪れるかわからない人生の終わりに向かって私たちは生きている。人生をまっとうできる人などこの世にいるのだろうか。悔いだらけの人生だ。40数年生きてきた今でも悔いだらけだ。もし、遣り残してきたことをやりとおせたら、死んだあの人に謝ることができたら、生きてるあの人に伝えられたら・・。できないことをかなえることができるのが映画かもしれない。でも、これらのことは絶対にできないこと。できないんだ。

ああ、いい話だなと普通に思いながら、なんとも同時期に起こった佐世保の小学生の刺殺事件を思ってしまった。加害者の女の子は被害者の子に「会って謝りたい」と言ったという。そんなことができるか、できない。ほんとに会って謝れるのか・・。私たちは命の重さを人に伝えてきただろうか。この限りある命の重さを伝えてきただろうか。命を軽んじているというのではない。毎日のように流される殺人のニュース、戦争の被害者、痛ましい事実、病気、事故。一個一個に重要な命があって、家族があって、人生があったのだ。天国がこんなだってといわれたら、救いはあるかもしれないが、そうなんだろうか。そう思いたい気もするし、多分そうでないはず。軽い映画のつもりが、考えていたら、ドつぼにはまってしまった。収拾つかない・・。

一つだけ、花火を作るのにはものすごく時間がかかって、花火職人は冬から花火つくりに励んでいると聞いたことがある。火薬の調合から、割合、並べ方、玉のあわせ方、ものすごい几帳面な時間のかかる作業だそうな。夏のはじめ頃に「花火あげたいんですけど」といってすぐにできるものではない。ましてや何日か前に作ってといってできるものではない。そういう整合性のなさや、話の矛盾を映画に追及するもんじゃないと、映画製作者に言われたことがあるが、見る方としては、話に納得いかない点があると、どうしてもすっきりしない。こういうことを思って見てるのはだめなのかな。

『天国の本屋~恋火』

監督 篠原哲雄  
原作 松久淳+田中渉  
出演 竹内結子 玉山鉄二 香里奈  新井浩文 2004年 日本作品


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