迷宮映画館

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シルミド

2004年06月09日 | さ行 外国映画
1960年代末、それは北朝鮮の特殊工作員による、大韓民国の大統領・朴正熙暗殺未遂事件から始まった。大統領府の青瓦台付近まで、工作員が侵入できた事にショックを受けた当局は、金日成主席の暗殺を計画する。しかし、あくまでも水面下での活動のため、正規の軍隊を使うわけにはいかない。死刑囚や、民間人を半ば脅して、シルミド(実尾島)に連行し、もう後戻りはできない彼らを秘密工作員に仕立て上げるための、熾烈な訓練が始まった。

怪我人、死人まで出るような過酷な訓練の中で、684部隊(1968年4月に創設されたから)は着実に訓練の成果を上げていった。反目していた第一班長のサンピルと、第三班長のインチャンは喧嘩をしながらも、信頼を深めていった。訓練兵と教官たちの間にも、それぞれ人間関係ができていく。そして、決行の日。殺人マシーンに仕上がった684部隊は北に向かった。しかし、嵐の海の中、作戦の中止が言い渡される。

70年代になると、北と融和を図るという方針転換により、金日成暗殺計画は暗礁に乗る。彼らをいまさら市井に戻すわけにも行かない。684部隊の存在すらも、知られてはいけない。抹殺するしかない。684部隊の過酷な死への道が始まった。

実際の事件をベースに作られた映画だそうだ。71年のこの「実尾島事件」はそれなりに大きく報道されたそうだが、知らなかった。ソウルに行くバスが乗っ取られ、市民を人質にして、立てこもり、果ては爆発。結局、逃亡兵の反乱として闇に葬られていた。30年以上経った今になって、だんだんと真実が明らかになっていき、今回の映画となった。

兵の遺族らから、事実と違うという訴えが出ているそうだが、やはりコレはあくまでも映画だろう。いくら事実を映画化しても、それなりの脚色や、誇張などは生まれる。要は、パク政権下で行われていた非人道的な政治や、なぜに北の工作員が南に侵入しなければならなかったのか。南の政府がキム・イルソンの暗殺を企てなければならなかったのか。そういう世界を生み出した根源は日本の植民地政策だったということだ。

映画は熱い男くささがぷんぷんしてくるようなどかーーんと来る力作。全編、みんな肩に超力入ってる。見てる方も、肩凝りそうだが、いい意味での凝り方。韓国映画特有の熱い血がたぎっているが、空回りしてない。ただ、終盤暗闇のシルミドから、青い空のもとに出た途端、ちょっとトーンが落ちた気がした。

映画がどうのというより、かつてあった(いや今も)一触即発の南北対立がもたらす悲しい現実を見るにつけ、私達日本人はもっと朝鮮半島のことを知るべきではないかと思う。日本人がやってきた事をしっかりと知るべきである。韓流といわれるブーム、ヨン様人気もいい。こういう映画で朝鮮半島に興味を持ってもらうのもいい。そうやって私達は隣の国をもっと知るべき、もっと理解すべきだと思う。そういうきっかけになってくれると嬉しい。やたら熱いだけが韓流ではない。そこに秘められたものを私達は見つけるべきだと思う。

『シルミド』

原題「実尾島」 
監督 カン・ウソク  
出演 ソル・ギョング アン・ソンギ ホ・ジュノ 2003年 韓国作品


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