迷宮映画館

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長江哀歌

2008年02月02日 | た行 外国映画
三峡ダム。古くは孫文が建設を計画し、幾度も頓挫を繰り返し、21世紀に入って、ようやく完成するという、大規模なダム。

世界3位の規模を誇る長江は、その悠久の流れが、幽玄の趣の美しさを醸し出してきた。しかし、その一方で洪水を起こし、甚大な被害ももたらしてきた。

大規模な川に、大規模なダムを作ることはいつの世でも賛否両論を巻き起こし、多くの悲劇や、別れを生み出してきた。世界最大のダムが完成するのだ。そこに、どれくらいの物語が生み出されたことか・・・。

その三峡にやってきた二人の人物。一人は16年前に別れた妻子を探しに山西省からきた炭鉱夫。どうして今頃、と思うのだが、人が何かの行動を起こすのに、理由などない。

出ていく前に妻が書いた住所は、すでに水の中。バイクで、男を連れていた気のいい茶髪のあんちゃんも、自分の家はあそこにあったという。

ここで妻を探そうと、木賃宿に腰を落ち着ける。そこで出会ったこっちも気のいいあんちゃん。チョウ・ユンファにかぶれてる。そこが妙に気に入りました。引っ越して人の住まなくなった空の建物を壊す仕事は、いくらでもある。

その壊す建物に、なにか薬剤を撒きに来る、完全防備のマスクマンが、気になる。

片や、2年も音信不通の夫を探しにやってきた妻。なかなか夫は見つからないが、すでに夫にはこっちの生活があることを知る。

妻に再会した夫も、気のいい仲間たちと別れて、故郷に帰ることに。帰る故郷で待っているのは、無認可の危険な炭鉱の仕事。だが、彼には帰るところがある。

舞台は悠久の大河。水墨画のような幽玄の中に、無粋に建ってるビルの数々。その辺に住んでいる人は、お世辞にもいい暮らしをしている人々には見えない。周りの人間は、「美しい自然を守るべきだ。環境破壊だあ」と簡単に言えるが、そこに実際住んでいる人のことを100%わかって言っているのではない。

次々と映し出されるのはごく普通のその辺の、本当にその辺の人たちばかりだ。どの人もちょっと汚く、ちょっと金にうるさく、みんな小市民のいい人ばかり。家を水没させられようと、危険な仕事をしてようと、それでもやっぱり生きていかなけれならない。そんな姿を、淡々と映し出す・・・・。

とまあ、結構格好よく書いたが、かなり睡魔との勝負がきつかった。淡々と描かれすぎて、体調万全のはずの身でも、意識が遠のく。しかし、意識がどっかに飛んでいくような悠久の風景ということにしておこう。

中国人にとって、ごく身近なたばこ、酒、茶、あめの四つをキーワードに、人と人のつながりが描かれるのだが、主人公となった二人が、よそから来た人となっている。どんなに思い入れがあろうとも、ここ三峡は彼らの拠り所ではない。ダム建設の結果、ここを離れなければならない無情とは、結局のところ無縁のはずだ。映画を通して、えぐられるような気持になれなかったのは、その辺の、一歩突き放した感じが付いて回ったのかも。

ということで、結構期待してもので、ちょっと肩透かし。うわさ通り、眠気に一瞬負けてしまった・・・。

◎◎○

『長江哀歌』

監督・脚本 ジャ・ジャンクー
出演 チャオ・タオ ハン・サンミン ワン・ホンウェイ リー・チュウビン マー・リーチェン チョウ・リン ホァン・ヨン


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2 コメント

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コメントありがとうございました (YOSHIYU機)
2008-08-19 08:14:39
男の物語の方は、けっこう面白いと思いましたが
女の物語の方は、眠気が襲ってきましたね(笑)

破壊して川に沈む建物に、薬を撒くってのは
どういう意味があるんでしょうね?
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>YOSHIYU機さま (sakurai)
2008-08-19 10:51:58
なんか、それらしいこと書いてますが、かなり睡魔との戦いでした。
クスリ撒くっていうのもあんまり覚えてないのですが、アスベスト対策?
中和剤?アヘンじゃないか。
何にしろ、これからの中国はどんな道を進むのか、見逃せません。
オリンピックで、妙な自信付けてますからね。
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