プラダを着た悪魔

実際に【ヴォーグ】で働いた経験のある女性が、自分の体験を元にしたお話が映画に、ということらしい。ふんふん。
で、ブランドにも、おしゃれにも、お化粧にもなんも興味のない私は、多分しょっぱなのアンドレアよりも酷いカッコをしている。大事なのはＴＰＯで、自分に似合ってればどんな安もんでもいいし、他人に不快を感じさせないことが一番大事なことではなかろうかと。まあ、高い服を買えない負け惜しみなのだが、そんな金があったら映画に行く。

と言うことで、何に価値を見出すかは、人それぞれ。と思っていたら、どんな安物でもそれが生み出されるまでにはそれなりの歴史をたどり、どんな人でも服は着ねばならない、などということに気付かされた。そうだよな、そうそう。安物だけど、ジーパンとトレーナーという私の主張がこの私のカッコにはある。ファッションはアイデンディディーの象徴、といわれればそうかもしれません。少々考え直させられました。

ジャーナリスト志望のアンドレアは何を間違ったかファッション誌のカリスマ【ロンウェイ】に就職してしまう。世界中の女性のファッションの憧れ。１０００万人が働きたいと思っているここ。そして鬼の編集長ミランダが、この雑誌の象徴・『プラダを着た悪魔』なわけ。ここ、ここです。悪魔じゃないような気がするんだな。悪魔の方がゴロがいいかもしれませんが、やっぱここは鬼でしょう。

ちゃらちゃらしたお姉ちゃんたちを雇い、おしゃれ大好き！という子達は「頭が悪いのよ」ということで、頭良さそうなファッションセンスゼロのアンドレアを雇ってみることに。編集長の尋常でない要求に頭抱えながらも猛進していくアンドレア。何の仕事であれ、一生懸命やれ！と言う簡単なことでございます。

最初は冴えない女の子が華麗に大変身！に欠かせないアン・ハサウェイがここでもその真骨頂を大披露。なんだかんだ言ってもおしゃれが存分にできるならそれに越したことはないのですよ。余裕さえあればおしゃれしたいのよ。しかし、ここは外も磨いていくことによって自信がその内面にも輝きを与えていったという素敵な例。

メリル・ストリープしか考えられないような編集長・ミランダ、この迫力は流石でございます。これをグレン・クローズがやったら、救いがないほどこえーかななどとつい考えてにやにやしてしまいました。ただし映画的には完全にメリル・ストリープにおんぶに抱っこ感が拭えません。彼女無くしては考えられない、というよりも彼女に食われた感、の方が強い。

なぜミランダがここまで厳しく完璧に仕事をするのか、させるのか？映画の中ではっきし言ってましたが、女性だからです。女性がちょっとでも失敗すると、「それ見たことか」とぼろくそに言われる。成功して当たり前。評価されるためには男の何倍も頑張らねばならない、その格差を彼女は生き抜いてきたのです。さも前々から当たり前のように権利を享受してきたかのように振舞う若い女性たち。それはそれでとってもいいこと。差別感や格差感を持たずに生きていけることは無上の幸せです。でも、どんな状況においても努力を怠ってはいけない。

映画は全くちゃらちゃらしてません。ブランド品や有名どころのデザイナーも実名で出てきます。プラダの財布持ってる女子高校生なんかもきっと見に行きたいでしょう。何を見出すか、何を見るか・・・？「ああ、綺麗」、「あんな服着たい」、「あんなピンヒールでしゃきしゃき歩きたい」しか見えなかったら超寂しいなあ。

『プラダを着た悪魔』
監督　デヴィッド・フランケル
出演　メリル・ストリープ　アン・ハサウェイ　エミリー・ブラント　スタンリー・トゥッチ　エイドリアン・グレニアー　サイモン・ベイカー