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第553回 えらい、やんちゃー大阪弁講座56

2023-12-08 | エッセイ
 第56弾は、<えらい>と<やんちゃ>を取り上げます。どうぞお楽しみください。

<えらい>
 「偉い」という字を当てて、立派である、優れているという意味では、大阪でもごく普通に使います。
 例えば、「「えらい」さん」という言い方があります。「お「えら」がた」と同じ発想ですが、「さん」をつけて、カジュアルっぽいニュアンスです。ホントに「えらい」人には、ちょっと使い辛いかも。まぁ、ここまでいくと、ただ威張ってるだけのオヤジですけど・・・

「まあ、いつの間にやら、「えらいさん」になりはって(おなりになって)、それに引きかえ、ウチ(私のとこ)のバカ息子ときたら・・・」
 それなりの事を成し遂げた時なんかに、褒めてかけられるのが、「「えらい」やっちゃ(「ヤツや」の転)」です。ちょっと上から目線ですけど。

 大阪弁の場合、それ以上に幅広い使い方ができます。まずは、「すごく」「とても」と、英語だと"very"に当たる使い方です。
「「えらい」ええ服着てお出かけやけど、デート?」
「「えらい」人出(ひとで)やけど、お祭りでもやってんのかな?」
「「えらい」大きな声出してからに、何かあったんか」のように。
 その応用形で、ひどさ、悪さが甚だしい時にも使えます。「「えらい」こっちゃ」「「えらい」目に会(お)うてもた」といえば、客観的にはともかく、本人にとっては、とんでもないこと、悲惨な事態が起こった時に誰もが口にします。まあ、聞かされるほうは、そう深刻に受け取らないことが多いようですが・・・
 「偉い」の意味を引きずりながら、当然やってしかるべきことをやっているのを、やや上から目線的に褒める、という用法もあります。
 「ちゃんと学校の宿題やってんねんな。「えらい」やんか」
 カラダが疲れる、負担がかかる、というのも表わせます。
 「毎朝5時起きで仕事やて?そら、カラダが「えらい」はずやわ」
 さて、最後に上級クラスの用法をご紹介します。とても出来そうもないと思っていたことが、努力して出来るようになった自分を褒める、ちょっとひけらかす言い方です。
 「この歳になって、運動なんて無理やと思てましたけど、軽いジョギングを毎日続けてたら、「えらい」もんで、あまり苦にならんようになりましたわ」

<やんちゃ>
 子供から大人までのキャラ、言動を表現できます。ただし、ニュアンス、意味合いは、微妙に異なります。
 子供だと、元気で活発な感じ。時には子供同士でケンカしたり、親の言うことを聞かなかったりもしますが、それも含めてポジティブなイメージです。「うちの子ゆうたら、「やんちゃ」で困るわ。この前もガキ大将にケンカふっかけたのはええけど、泣かされて帰ってきてたわ」なんて、本当に困っているとは思えません。ちょっぴり自慢が入ってる気がします。
 高校生ぐらいで「やんちゃ」やってるとなると、ちょっとグレてる感じです。学校をサボる、隠れてタバコを喫う、不良と付き合う・・・そんな荒れた生活ぶりが想像できます。
 サラリーマンの場合はどうでしょうか?「おまえも「やんちゃ」やな」と言われれば、ちょっと喜んでいいんじゃないでしょうか。時に上司に楯(たて)突いたり、不満をぶつけたりはするものの、やるべき仕事はきっちりする、という評価(のよう)ですから。
 さて、「実は、オレ、若い頃「やんちゃ」してまして・・・」と告白されると、ちょっと緊張します。反社会的とされる稼業に関わっていた連中が、自分たちのことを冗談っぽく「やんちゃ」と称することがあるからです。まあ、私の経験からすると、ちょいワル程度のことを自虐的に言ってることが多いんですけどね。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。