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第317回 英国暮らしの傾向と対策-英語弁講座23

2019-05-03 | エッセイ

 以前、「第211回 ニューヨークのイギリス人」という記事で、滞日経験もあるイギリス人ジャーナリストのコリン・ジョイス(Colin Joyce)の本をご紹介しました(文末に、記事へのリンクを貼っています)。

 アメリカでの社会、風俗、ルールなどに戸惑ったり、感心したり(こちらは少なかったですが)した体験を面白く綴ったものですが、今回は、彼の生まれ育ったイギリス本国についてのエッセイをご紹介します。
 「Let's England」(NHK出版)と題されたこちらの本です。


 英国での生活に憧れる日本人への忠告に1章が割かれています。英国で快適に暮らすための「傾向と対策」といった趣きです。英語弁講座ですので、少しだけ英語を交えながらですが、お楽しみください。(各項目の見出しと、「  」は本書からの引用で、日本語部分は拙訳です)

1.Don't jump any queues.(列に割り込まないこと)

 イギリス人は列(queue:キュー)に並ぶのが好き・・・ではないでしょうが、あまり苦にしないようですし、我慢強いです。その裏返しでもあるのでしょうが、列を乱す行為にも厳しい国柄だとは、かねがね聞いていました。まずは、それについての忠告です。
 「思わず知らずであれ、列に割り込む形になり、それを注意されたら、ひたすら恐縮して(be horrified)、謝りなさい(say sorry)」

 自分の責任を認めることになるので、アメリカ人は使いたがりませんが、イギリス人は、割合気軽に、(時に、excuse me の代わりに)"sorry"を使うのがよく分かります。

2.Don't complain that your beer is "warm".(ビールがぬるいと文句を言っちゃいけない)
 そうなんですね。私も、イギリスで経験しました。

 「ビールは、セラー(保管庫)の温度で供される。キンキンに冷えたビールよりは、ぬるいが、室温ほどぬるくはない」

 日本で普通に冷やしてあるビールに手を付けずに30分ほど放っておいた温度、というのが実感に近いでしょうか。そんな「ぬるい」ビールの1パイント(中ジョッキ程度)を、1時間くらいかけて飲むイギリス人が多いのにもちょっと驚きました。

3.We have a clear rule about goodbyes.(goodbyeにも明確なルールがある)
 皆んなが皆んな、ここまでやってるとは思いませんが、こんなルールです。

 「まず、そろそろ失礼する旨とお礼を述べる。そして、椅子から立ち上がりながら、goodbyeと言い、素敵な時間が過ごせたお礼を述べる、部屋を出ながら、同じ口上を繰り返す。玄関口でちょっと間(ま)を置いて、goodbye。表に出たら、振り返って、手を振りながら、最後のgoodbye」

 さあ、果たしてgoodbyeを何回言うのでしょう、って問題が作れるくらい連発するんですね。英国紳士、淑女もなかなか大変です。

4.You must buy a ticket all the way to your final determination.

 (最終目的地までの通しの切符を買うこと)

 日本みたいに乗り越し精算の仕組みはありません。
 「違反すれば、20ポンド(現レートで、3000円くらい)の罰金」

 ドイツでもそうでしたけど、ヨーロッパの鉄道は、総じて目的地までの正当な切符を持っているのが大前提で、抜き打ちの検札(言い訳は一切通用しません)があったり、罰金も高額というのが多いようです。鉄道利用の時は、ご注意ください。

5.If a passenger talks to you,you should be immediately suspicious.
  (見知らぬ乗客が話しかけて来たら、ただちに怪しむべし)

 アメリカ人のオープンさ、フレンドリーさの対極にあるのが、イギリス人と考えていいと思います。人と接するのに、慎重ですし、控えめ、距離感を大事にする、そんな国民性です。ですから、親しげに話しかけてくるイギリス人がいたら、
「酔っぱらいか、頭がオカしいか、なんらかのワナに嵌(は)めようと思ってる連中だと思え」
というのが、著者の忠告です。用心するに越したことはないですね。

6.Don't say anything that implies that England is IN Europe.
 (英国がヨーロッパの一員であるかのごとき言い方をしないこと)

 EUからの離脱問題が混迷を極めている要因のひとつがこれじゃないでしょうか。どうもイギリスの人たちは、自分たちをヨーロッパの国だと思ってないようなんですね。
「英国人にとって、ヨーロッパは、English Channel(日本的には、英仏海峡)の向こう側にあるところで、出かけるのはまあいいが、結局、信用できないところ」

 第二次世界大戦前に、英仏海峡に濃霧が発生し、フェリーも、飛行機も完全に止まってしまったことがあります。その時、英タイムズ紙は、「欧州大陸は孤立した」との大見出しを掲げた、というんですから。今でも、イギリス国内では、「ヨーロッパ行き格安航空券!」なんて広告が出てるくらいなので、骨の髄から、としか言いようがありません。

 冒頭でご紹介した「ニューヨークのイギリス人」へのリンクは<こちら>です。なお、当記事の続編をアップしています。リンクは<こちら>です。合わせてお読みいただければ幸いです。


 いかがでしたか?それでは、次回をお楽しみに。