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第293回 中華的英語教授法-英語弁講座21

2018-11-09 | エッセイ

 英語の学習への「熱意」では、日本は指折りの国だと思いますが、中国も負けてはいないようです。「クレイジー・イングリッシュ」というDVD(1999年 中国製作)を観て、その感を一層強くしました。
 リー・ヤンという青年英語教師が、中国各地で、大群衆を相手に、クレージー(本人がそう称しています)に繰り広げる英語教育を追ったドキュメンタリーです。こんなパッケージです。

 



 舞台は、大学、紫禁城、解放軍キャンプ、万里の長城など、とにかく人が集まれるあらゆる所に及びます。群衆の数は、少ない場所でも数千人、多い時には、数万人にもなります。インタビューの中で、本人が、一番多い時には、1日3回の講演(公演?)で、合計10万人を動員したことがある、と語っています。

 彼の講演はとにかくハイテンションでパワフルな絶叫調。「生徒」を巻き込み、全身を使ったパフォーマンスが展開されます。

 まずは、英語を身につける必要性が熱く呼びかけられます。
 「今まで、中国はアメリカ、ヨーロッパ、日本などの国から、おいしい市場として散々利用されて来た~!! これからは、我々が、「英語」を勉強して。それらの国に進出する~!!目的は「金儲け」だ~!!」
 ここは、一体どの国だったっけ、と思わせますが、今の中国の人々をモチベートするには十分すぎるメッセージです。

 そして、彼が繰り返し強調するのは、英語をしゃべるための口腔筋肉を鍛える3原則。
 「(できるだけ)大きく、早く、明瞭に」というもの。講演の中では、ひとつのフレーズを、一定時間の中で、どれだけの回数言えるかを競わせたりしています。
 口腔筋肉が鍛えられるかどうかは別にして、英語に自信がないと、モゴモゴと、声も小さくなりがち。「大きく、明瞭に」は、万国共通の大事な心掛けに違いありません。

 さて、その「教育」ぶりですが・・・・

 スタッフとの朝のジョッギングでは、体育会系のノリで、こんな掛け声をかけています。
 "I enjoy losing face. I enjoy losing face.・・・・・"
 「恥をかくのをおそれないぞ〜」といったところでしょうか。知識はあるのに、恥をかくことをおそれて、英語を使いたがらないのは、日本人に限らないみたいで、有効なスローガンのようです。

 商売をやっているらしい集団での講演では、こんなフレーズを繰り返し練習しています。
 "I wish I could. I wish I could. ・・・・・・
 「ご希望には添えればいいのですが、あいにく・・・・」
 確かに、商売では必須の言い回しではありますが、いきなりかよっ、と笑ってしまいました。
 同じ会場では、
 "I've heard so much about you."(お名前はかねがね伺っております)
 のような如才ない例文を、短時間でいかに早く言えるかの競争をさせるなど、工夫も見えます。

 別の大きな会場では、現在完了進行形の勉強です。
 "I have been wanting to buy a car."(ずっーと、車を買いたかったんです。)
 いまから、20年近く前ですから、人々の多くの夢であり、切実な例文だったのでしょうか。

 万里の長城で、解放軍の兵士を相手に、教えています。
 ”Never let your country down."(祖国をダメにするな)
 "No pain,no gain"(苦労なくして、得るものなし)
 解放軍の皆さんの胸には響きそうな例文です。
 同じ会場では、観光客用に空けてあるスペースを、たまたま通りかかった欧米人をつかまえて、英語でちょっとした挨拶をお願いしたりのちゃっかりぶりも発揮しています。

。中学生相手の講演では、"Thank you."、"You are welcome."、"What's your name?"などの基本的なフレーズをいかに大きな声で言えるかを競わせているのが、微笑ましい風景でした。
 "I want to be somebody someday."(将来、成功者になるぞ!)なんて叫ばせて、煽(あお)ったりもしてます・・・・

 映画ですから、その教え方のクレージーぶりが中心にはなりますが、所々に挿入されるインタビューでのリー先生は、意外ともの静か。3億人の中国人が英語を話せるようにしたいとの夢と使命感に溢れた好感の持てる人物でした。

 さて、残念ながら、映画の予告編は見つかりませんでしたが、40代に入ったリー先生の活動ぶりを伝える映像は見つかりました。こちらです)

 いくぶん丸くなった気もしますが、熱意は相変わらずのようで、こりゃ、日本人も、うかうかしてられませんぞ。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。