君たちの成長が早いってことは
大体予想はついてたんだけどね
全然発芽せず散々焦らした先に
急激に立ち上がりよってからに
なんだ?その佇まいは
象の耳か?
ゴーヤの新芽は綺麗な濃い黄緑だったから
凄く光合成をした白菜の緑色の部分みたいで
春なのに水炊き鍋なんかを連想したけど
昼顔くん
君たちは白菜じゃないな
敢えて
象の耳でもないとしたら君たちは
キャベツだろ?
な?
そうだろ
反論の余地もないな
完全にキャベツだ
キャベツ太郎だ
そら
一枚めくれかかってるとこなんてまさに
キャベツ太郎だ
千切りにしてトンカツに添えたらさぞ美味しいんじゃないかい?
こっちは何だ?
モヤシ
か
ら
の
キャベツ太郎か?
キミを見てると長崎チャンポン食いたくなるよ…
とかね...
まぁ
植物に勝手に心を揺さぶられる人間
という独り遊びをしながらベランダ観察をしてゆくわけ
そうそう...
「独り遊び」といえば
「独楽」と書いて「こま」と読ませる
なら僕は独楽男だ
エルメスたんに翻弄される電車男ならぬ
植物たんに翻弄される独楽男だ
そして
独楽男の観察は続いてゆく
ミニキュウの蔓は
新しいのが出る度にネットに掴まれず迷走してるから
また支柱を立ててやったのだ
そっちに伸ばしても何も無いんだからさ
支柱を立てるとものの数分で蔓は左巻きに回転し出す
このままネットに掴まれよ
進化の過程がちょっと違っただけで
別の生物になったけど
この蔓って昆虫の触角と元は同じなんじゃないかな
じゃ
太古の時代には
人間にも当然この触覚か蔓があったんじゃないかな
それは退化したんだろうが
その根っこは人間の中に残ってるはずでしょ?
だってこの先の環境の変化によっては
また触覚か蔓が必要になるかもしれないからね
完全に無くなることなんて絶対無いから
身体の中に埋まっちゃったんだろうけど
根っこは必ず残っている
と
独楽男は言い張る
そして
妄想は進む
自分の身体の額の辺りに
この蔓のような触覚が在り
初対面の相手と対峙したり
新しい環境に足を踏み入れた時など
この触覚蔓を伸ばして
頻りにピクピクと相手に触れているのだ
危険の臭いがしたら離れ
しなければ更に距離を縮める
その目に見えない触覚蔓のことを我々は
第6感とか勘とか呼ぶ
人間は5感以外に必ずこの触覚蔓を持ってる
だって
演奏はそれを全開にして使っているもの
危険じゃないと判断した時の演奏は必ず良いもの
生物が防衛本能のガードを解いた時に
その場に生じた「気」「波動」でしか
我々は感動出来ないんだもの
と
独楽男はミニキュウの蔓と音楽を
一緒に並べて偉そうに語ってますぜ旦那
お〜
相変わらずやってんなぁ
頭に乗っけて
乗ってんのはパックマンか?
(昭和に青春を過ごした者にしかわからないだろう)
そして本葉も育ってるじゃん
念のため一応言っとくけど
キミは確かにキャベツではないよ
(当たり前だろパクチーだもの、ってな)
最初に蔓を出したゴーヤも
蔓は伸びるがまだどこにも掴まれてない
蔓の近くに支柱を立ててやりたくなっちゃうけどなぁ
そこを堪えて自力に任せるのだ
他のゴーヤも蔓を伸ばしてるけど
残念ながらこれもネットとは反対側
そんな中
ダークホース的存在がこの子
何番手かで蔓を出したが周りを追い抜き
今や支柱までの距離はあと1センチも無いくらい
朝顔の本葉もだいぶ葉の様相を呈して来た
ゴーヤが皆、ネットに掴まる頃
次の蔓合戦は朝顔が主役だね