蕾

エアコンを消して窓を開けたまま
まるで波音のような風にそよぐ葉音を聞きながら
夕方から寝入ってしまった

意識の何処かでずっと葉音を聞きながら
この夏の全ての疲れを洗い流すかのような
極楽的昼寝だった




寝る前に気付いた風景


セイヨウ朝顔と想像している朝顔は
今朝はまだ固い蕾だったのに


さっき夕方には花びら部分が顔を出してた



もうひとつ




よく街で見かけるようなセイヨウ朝顔なら
蕾はもっと大きくなってから開花すると想像してたので
ちょっと意外だった

どんな花なんだろう
この大きさだと小さな花だろう




花の色は赤ではないだろうな
青朝顔の蕾の色に似ている気がする

でもこの朝顔の葉はカエル型
青朝顔の葉はハート型




カエル葉で小振りな青い花の朝顔を
画像検索してみるとこんなのがあった









いずれにしても明日
寝坊しないようにしなければ

雲

台風のせいで
雲の流れが速い



さっきからしきりに雲間から太陽が出たり隠れたりする

そのたびに
グリーンカーテンが眩しい緑色を放ったり翳ったりしている





強い風にそよぐ葉音と
鳴き納めの蝉時雨を聞きながら


グリーンカーテンと天井の間の
細い隙間の遥か上空を雲が流れて行く








この夏
丸まる使って製作して来たアルバムが
残すところ最後の１曲となった

運指練習をみっちりして
あと数日で出来上がるだろう

終わりが見えてちょっと気が緩んでいる


ほとんど隠りっぱなしで過ごした夏だったが
植物の成長や自然が見せてくれる表情のおかげで
心を調整してもらい
夏の季節感もたっぷり感じられた気がする

台風15号

台風15号が来てるらしい

ベランダに出ると湿度の高い風が吹いていた


気温はそれほど高くないのに
水やりをするだけで汗が出て来る






コン　　コン　　コン
と
不規則に何か叩く音がする





手摺の外側に長い蔓を垂れ下がらせていたゴーヤの
蔓先に生っていた実が
強い風に煽られて手摺を打っていた

上階にご迷惑になるので蔓ごと手摺の中に手繰り入れた






台風の風は海の匂いなのだろうか
特有の匂いがする


そして嗅覚の記憶を呼び起こす







この匂いに反応して
僕の中で何かが疼いているが
痛みは感じない







きっと子供の頃
風の唸る音に怯えていた時に
この匂いを嗅いだのだろう

その時に
風の音だけではなく
台風に対し不安を抱く親の気配にも
怯えたのだろう

大人となった今
自分の生活している環境下で
それらの要素はもう何も恐ろしいことはないが
遠い記憶が微弱な信号で怖れを訴えて来る



過去の自分と今の自分を対話させながら
しばらくベランダで過ごす

こういう過去と現在を混合させる時間が
僕の音楽を形成し
音色に憂いや郷愁を練り込んで来たのだろう

ただ
この切なさに溺れているうちは
何か表現する力を手に入れる事は出来ない

人情を切り捨てた場所に立ち
情景を写し取らねばならないのだ


若い頃より多少はその辺が成長し
表現者としては強くなり
人の中に暮らす者としては非情になったのかもしれない
















































風が強まり焦点が合わなくなる